Opinion : ファイター マフィアという名の宗教 (?) (2011/10/10)
 

今回はちょっぴり、喧嘩を売るようなことを書いてみる。内容的にはいくらか、先週に書いた話と被りそうだ。

Apple Computer が「宗教団体だ」といわれるのは毎度のことだし、それはその通りだといってよいと思う。普通のユーザーはともかく、熱狂的なユーザー (というより信者) とか、関連する媒体の挙動を見ていると。

それがいいとか悪いとかいうのではなく、単にそうだという話なので、お間違いのなきよう。宗教化して熱狂的信者を獲得しているのが、あの会社の強みでもあるし。(逆に、宗教化していないことが Microsoft の強みである)

ただ、宗教団体化しているのが Apple Computer だけかというと、そうでもないなあと思う今日この頃。たとえば、飛行機好きの間では「ファイター マフィア教」というのがあると思う。具体的にそういう名前で呼ばれたり、自称したりはしていないにしても。


なるほど確かに、1970 年代にファイター マフィアが主張したことは、少なくともあの時点では間違っていなかった。この時代に生み出された F-15 や F-16 が記録した戦歴・実績を見れば、それは自ずから明らか。

ただし問題は、その成功を引きずって、「ファイター マフィアの主張はみな正しい。それから外れた機体はすべてゴミ」みたいな論調に凝り固まってしまうこと。実際、F-X の候補機種をめぐる飛行機好きの論点って、程度の差はあれ、ファイター マフィア的価値観の影響を強く受けていると思う。

だから、推力重量比や加速力の話ばかりが、往々にして強調される。数少ない例外は超音速巡航だけれども、これは身も蓋もないことを書いてしまえば「F-22 が欲しい」という話に裏付けを与えるための、後付けの理由なのかもしれないし (なんて書くと「そんなことはない」とムキになって否定されそうだけど)。

「超音速巡航ができない戦闘機では日本の防空は成り立たない」ということであれば、手持ちの F-15J も失格になりそうだ。当然、F-15J をアップグレード改修して運用を継続するなんて「トンでもない」話になるはず。でも、そういうことはいわないんだよね :-(

これも以前にどこかで書いたような気がするけれど、ファイター マフィアが主張した内容だけでなく、どういうバックグラウンドから出てきた主張なのか、そのバックグラウンドは今でも同じなのか、といった問題もある。つまりは、大勝利を収めた「正解」あるいは「勝利の方程式」を延々と引っ張ってていいの ? という話。

これでは、その昔に帝国海軍がやった「艦隊決戦に対する執着」と似たようなものである。もっとも、この手の執着の中には、本気でそう信じ込んでいたケースと、国情からいって理想を実現したくてもできなかったために、現状を肯定する目的で過去の成功体験に執着せざるを得なかったケースがありそうだが。


「ファイター マフィア教」の場合、指標が目に見えやすく、スペックとして示しやすい形のものだったことが、今から見ると不幸の原因だったのかも知れない。

武器のスペックなんていうのは、ゲタを履かせているか、三味線をひいているかのいずれかだといっても、曲がりなりにも数字が示されていれば、計算や比較ができてしまう。なまじ目に見える形で定量的に示すことができるだけに、これまた結論だけが一人歩きする原因になるのかも知れない。

逆に、定量化が難しい指標は議論の対象から外されたり、精神論で押し切られたりする。これはこれで、いかがなものかと思う次第。定量化できなくても効果の有無を検討しなければならない項目というものも、あるんじゃないかと思うのだけれど。

もっとも、最後になって身も蓋もないことを書いてしまうと、個人的好みに対する裏付け・根拠を与えるために「ファイター マフィアという "成功した権威"」を利用しているだけなのかも知れないけれど。

なんにしても、J-20 でも PAK-FA でもいいけれど、組んずほぐれつの格闘戦をやるためには、まず相手がいるところまで行かないといけないんだけれど、そっちはどうするの ? と訊いてみたいところ。

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