Opinion : 防衛相・国防相に求められるものって何だろう (2012/2/20)
 

またぞろ、国会で「漢字を読めない」とか「読み間違えた」とかいってゴタゴタしているらしい。それを殊更に騒ぎ立てる側も含めて、まことに馬鹿馬鹿しい限り。もちろん田中防衛相をめぐる話である。そんなことに現を抜かしていられるほど暢気な状況だっけ ? 今の日本って。

もちろん、漢字を読めないより読める方がいいし、地名や地理的関係ぐらいちゃんと承知していて欲しいとは思う。そういう意味で田中防衛相に脇が甘い部分があるのは否定できなくて、それは本人にちゃんとしてもらわないといけない。特にコーヒーの一件なんか典型例で、わざわざ墓穴を掘ってどうするのかと。

ただし基本的に、防衛相をめぐる今の騒ぎは資質とか識見とかいう次元の話ではなくて、単にサンドバッグを見つけて叩いているだけ、という意味合いの方が強いように見える。防衛相を弁護するつもりはないけれども、それ以上に周囲の騒ぎっぷりは疑問。

といったところで、防衛相に限らず大臣に求められる資質って何だろう、ということを考えてしまった。思うがままを書いてみたけれど、まとまりの良い話になってないかも。


軍事作戦の指揮を執るのは制服組の仕事だから、戦術的な話に詳しくなければ大臣が務まらない、なんてことはなさそう。装備のスペックについて諳んじている必要もないのではないかと思う。

そりゃまあ、知らないより知っていた方がいいけれども、そこで口を出すべき局面と口を出さない方がいい局面を判断できないと、むしろマイクロマネージメントになってしまって良くない。極端な話、大臣が現場の中隊長や大隊長レベルで決めるべき話にまでいちいち口を出すのは、お節介もいいところ。

では、大臣や総理大臣といったトップマネジメントがしないといけないことって何だろう。それは、最初に部下に対してビジョンというか、目指すべき方向性や考え方を明確に示すことではないかと思う。

そして、文官や制服組がビジョンを実現するために必要な環境を整えたり、外部から余計な横槍が入ってきたら防波堤になったり、現場からリソースが足りないといわれたら対策を講じたり、あるいは手持ちのリソースだけで対処するための手を打ったり説得したり、といったところも、トップマネジメントでないとできない仕事。

そこで全部を部下任せにして良いわけではなくて、目指すべき方向から外れようとしている、あるいは外されようとしているときに介入する必要もある。現場だけで決められない、あるいは現場だけで決めてはいけないような話について、戦略的・政治的決断を下す必要もある。

政治的見地からだけ判断して軍事的な話を蔑ろにし過ぎると、軍事力で実現しようとしていた目的がパーになって、その結果として最終目標である政治的目標もパーになってしまう。だから、トップがあまりにも頓珍漢なことをいいださないようにする必要があって、そこでは専門家である制服組が必要。

逆に、制服組が軍事的見地ばかり重視して政治的見地をまるで無視するとか、余計な発言や行状によって話をぶち壊しにしそうになった (あるいはぶち壊しにした) 場合には、政治の側から軌道修正する必要もある。ときには首切りだって必要。

といった具合にあれこれ書いてみると、専門分野の基礎知識もさることながら、それ以上に経験・識見・知恵・胆力が大事なのかなあと。

なんだか当たり前なはずのことばかり書いているような気がしてきた。でも、過去の永田町での議論などを見ていると、そもそも「文民統制」という言葉の解釈からして、なんだかずれているようにも思える。そうなると、大臣の役割や求められる資質についての解釈もずれてしまいそうではある。


そういえば。しばらく前に買ったムックで「F1 チームのマネージメント」で一冊丸ごと埋めているものがあって、これがすごく面白かった。もちろん、レーシングチームと軍事組織を単純に同一視してはいけないけれど、組織の運営、あるいはマネージメントの手法とかいった部分で、各チームの代表やマネージャーが語っている話について「興味深い」と思ったのは事実。

そこで乱暴にこじつけるならば、大臣の仕事は現場監督じゃないだろ、という話に収斂するのではないかなと。組織を動かして仕事をさせて、必要なアウトプットを確保するのが大臣の仕事。さて、現防衛相はその点、どうなのだろう。

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