Opinion : イギリスを馬鹿にするなぁ (2012/3/5)
 

2012/3/3 付の産経新聞が「日英での武器共同開発」について報じていた。なんでも、155mm 自走榴弾砲の自動装填装置をお題にするとかいう話。まだ確定した話ではないものの、実際に共同開発に乗り出す機会ができるのであれば、それはそれで結構な話。

ただ、こういう話が出てくると往々にして「日本の優れた技術をイギリスに教えてやるんだ」的なノリで鼻をうごめかせる人が出てきそうだけれど、それについては「ちょっと待て」といいたい。


イギリスというと、「戦闘中にお茶の時間が来たといって砲撃を止めた」とか「変態兵器や駄作機ばかり作っている」とかいって物笑いの種にする向きが多い。そこに愛情があればまだしも、単におちょくるだけだとすれば失敬な話である。

軍事趣味人の世界では往々にして、話を面白おかしくネタ化してしまう傾向が見受けられるし、そうした中でイギリスという国の組織、産業、あるいは人が、不当に低く評価されている傾向があると思う。最近の定番だと「銃剣突撃」か。例外といえるのは SAS (Special Air Service) ぐらいではなかろうか。
(ロシアが絡んで何か起きると、すぐに「おそロシア」といって片付けるのも似たようなもんだと思うが)

確かに、イギリスが「なんじゃこりゃ」といいたくなるようなものを作ったり、「なんじゃこりゃ」といいたくなるようなことをやらしたりしているのは事実であるにしても、一方で、歴史に残る発明や成果をいろいろ残しているのも事実。

そして、(これ自体は決して幸福なこととはいいがたいにしても) 実戦経験が豊富で、武器輸出についても経験豊富。日本ではあまり知名度が高くないにしても、それぞれの分野で実績を上げているメーカーがいくつもある。そういう国に対して「教えてやる」なんて思っているのだとすれば、それは思い上がりも甚だしいというもの。

島国同士といっても、決して日本と同じではないイギリスだからこそ、そういう国の人やメーカーと付き合う機会を作り、さらに機会を広げていくことができれば、日本にとっても学べるものがいろいろあるのではないか。実のところ、共同開発の対象や成果がどうこうというよりも、共同開発を通じて他国の人間と付き合う機会が増えることにこそ、真のメリットがあると思う。

武器輸出三原則の緩和で、実際に外国に対して何かモノを売る場面が実際に発生した場合、過去にさまざまな国と商売をした経験を持つイギリスのメーカーと手を組むことができれば、それもまたメリットがある話ではないか。過去に Saab AB が JAS39 Gripen の輸出でそうやったように。

置かれている状況や過去の歴史・経験に違いがあるから、「日本にあってイギリスにないもの」があれば、「イギリスにあって日本にないもの」もある。そこのところはちゃんと認識するべきではないかと。

たとえば、PFI (Private Finance Initiative) の活用や民間委託なんていうのは、イギリスがいささかラジカルすぎるぐらい積極的に展開してきた分野だから、成功事例も失敗事例もいろいろある。PFI だの PBL (Performance Based Logistics) だのという掛け声が出てきている日本にとっては、先輩であるイギリスが持つ成功事例だけでなく、失敗事例だって重要な教訓になる。

何もイギリスに限らず、アメリカでもフランスでもドイツでもどこでも同じことだけれども、相対的に比較して日本が一方的に優れているということはなかろうし、逆もまた真なり。変に気負い立ったり思い上がったり卑屈になったりしないで、学べるところは学ぶ、出せるものは出す。それで give & take の関係を作ることこそが、長期的に互恵的な関係を作る役に立つのではないかと思うのだけれど。

無論、イギリスが過去に「腹黒紳士」ぶりを発揮して後世に紛争の種をばら撒いたことまで否定するつもりはない。ただ、だからといってお人好し過ぎるのもどうかと思うわけである。ことに外交の世界では。


ちなみに、航空宇宙・防衛分野の共同開発案件について見聞した場合、どこの国のどのメーカーが関わっているかという話だけでなく、どの分野を誰が担当しているか、に注目したい。

たとえば、軍民双方で国際共同開発の事例が多いジェット エンジンについていえば、ホット セクションを誰が握っているか。艦艇であれば、ドンガラよりもセンサーや指揮管制装置、そしてウェポン システムのインテグレーションを誰が担当して、どこの製品を使っているか。そういったところに目を向けると、本当の意味で主導権を握っているのが誰なのかが見えてくる (こともある)。

もちろん、個々の要素技術やコンポーネントがしっかりしていなければ、全体が優れた製品になることはないのだけれど、その中でもキーになる部分を誰がとるか。どちらかというと目立たないけれども、実は案外と重要な話であったりする。

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