Opinion : 徴兵制のことをちょっと考えてみた (2012/6/18)
 

今売りの「軍事研究」誌の記事を初めとして、なんだか最近、「徴兵制」について考えさせられる話がいくつか出てきたような。ということで、この件について少し考えてみた。

とはいうものの、「いまどきの若者はたるんでいるから、軍隊に入れて鍛え直せ」とかいう話になると、さすがにそれは違うだろうといいたい。それは、軍隊に入れることで鍛えられるかどうかという話より前に、家庭や社会でどうにかするべき話を軍隊という国の組織に押し付けて、官費で解決させるってどうなのよ、と思うから。

それはそれとして。


いわゆる「西側先進国」に分類される国の中で、今も徴兵制を維持しているところというと、パッと思いつくのは韓国、フィンランド、それと (すでに廃止を決めているけれども) ドイツといったところ。話の流れ上、ここでは今のドイツではなくて、昔の西ドイツのことだと考えると。

この三ヶ国、いずれも「膨大な頭数の陸軍を擁する地続きの隣国があって、その隣国を脅威とみなすような状況、あるいは歴史がある」という共通点がありそう。そして、地続きの隣国が攻め込んで来ることになれば、その主役は当然ながら陸軍で、それを迎え撃つ側の主役も陸軍。

そして、相手がむやみやたらに頭数が多いのであれば、(ことに陸戦においては) こちらもそれなりに頭数が必要。「量は質の代わりにならない」といっても程度問題である。そうなると、軍隊経験者を大量に確保しておいて、いざ有事の際に急速な戦力増強を可能にする土台ができるという意味で、徴兵制を敷くことの意味はあるかもしれないなあと。そんなことを考えた。

ただしこれには条件があって、義務兵役期間を終えた後も定期的にビルドアップ訓練をやる仕組みが整っている必要がある。制度としてだけでなく、社会の側でそれを受け入れて機能させているかどうかという話も含めて。そうでないと、いくら義務兵役期間内に訓練を受けていたといっても、娑婆に戻って長く経てば術力が錆び付くし、状況の変化に適応するのも難しいし。

もちろん、この三ヶ国だけではサンプル数が少なすぎるので、これを普遍的な話としてどこにでも通用させるのは無理。あくまで、徴兵制にもメリットがありそうなひとつの事例、という話。国情によっては、これ以外のメリットを見出すケースもあろうし、ときには「志願制では人が集まらない」なんてこともあろうし。

ただ、海軍や空軍になると、いまどきの陸軍以上に専門性が高い分野になるので、話は違ってきそう。他の軍種がパートタイムの軍人でも、海軍や空軍、特にパイロットみたいに養成に時間がかかるポジションだとフルタイムの軍人が務める、なんて事例もあるわけだし。

ということは、「強大な陸軍を擁する地続きの隣国」がなくて、陸軍よりも海軍・空軍の重要性が高いような国では、それだけ専門性が高いプロの軍人に依存する度合が高くなって、徴兵制を敷くことのメリットが薄れるのではないかなと。そういう話につながっていきそう。


一般に、徴兵制と志願制を比較したときに「志願制だとプロの軍人を育てられる」なんてことをいうし、それは間違っていないと思う。ただ、「自らの意思で入隊して術力を磨くプロの軍人」である方が好ましいにしても、一方で、「とにかく頭数が欲しい」「有事の急速動員が可能な体制が欲しい」という状況もあり得るわけで。

自国がそういう状況に置かれているという認識を広く共有していて、かつ、社会の状況や、軍隊と社会の関係といったところの条件が満たされた場合には、徴兵制を維持するという形もアリなのではないかなと。そんなことを考えてみた次第。

そうなると、国民の「国防意識」という話になるけれども、そこでまずは「国防」という言葉の定義が問題になるかもしれない。護る対象が国の「体制」なのか、「国土」なのか、はたまた「自分の家や家族」なのか (これは、結果的にそうなるという類の話でもあるけれど)、といった議論が出てきてしまうだろうから。

ただ、これってやり始めると収拾がつかなくなる議論でもあるので、難しいところ。「国土を護ることが、結果として自分の家や家族を護ることでもある」とするのが、比較的、すんなりと受け入れられやすい形かもしれない。しかし一方では、「体制を護る」という話を前面に出したがる向きもあろうし。

そんなこんなで。一般的にいわれる「志願制の有利な点」を否定するつもりは毛頭ないけれども、それがありとあらゆる場面に適用できるとは限らないのかもしれないね、というのが、今回の話の落としどころかなと思った。

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