Opinion : 異機種間空戦訓練 (DACT) の意味 (2012/8/6)
 

先日に行われた Red Flag Alaska 演習の際に、米空軍の F-22A とドイツ空軍の EF2000 (いわゆる Typhoon) が DACT (Dissimilar Aircraft Combat Training) をやって、後者が勝ったというので、先週の後半から Twitter の TL などが騒々しい。

でも、ここぞとばかりにドヤ顔している人、DACT の結果に一喜一憂している人を見ると、「なんだかなあ」というのが正直なところ。


そもそも、何の目的で DACT をやるのかという話。単に「どっちが強いか決めようぜ」なんていう児戯に類した目的で、わざわざ戦闘機を飛ばして DACT をやっているわけでもあるまい。また、パイロットの腕を競うのであれば、同じ機体同士で対戦する、いわゆる SACT (Similar Aircraft Combat Training) でワンメイクにする方が、違いがはっきり出る。

そこであえて DACT をやるのは、自軍が現用中の機体について、得手・不得手を明確に認識して、今後の戦術開発などに役立てるのが本来の目的ではないのか ? と突っ込んでみたい。

なにも F-22 に限らず、どんな戦闘機にでも長所があれば短所もある。ありとあらゆる性能が傑出していて、ライバル機に対して圧倒的な優勢を確保している、なんて機体は、そうそう出てくるもんじゃない。いや、戦闘機に限らず、その他の軍用機でも艦艇でも装甲戦闘車両でもミサイルでも同じこと。

だから大事なのは、自分の装備がライバルに対して、どの分野で優れているのか、どの分野で拮抗しているのか、どの分野でハンデを負っているのか、それを正しく認識すること。そうすることで、長所を活かし、短所を突かれないような戦術を組み立てることで、結果的に勝利が近付く。

だから、多国籍演習のような機会を活用して、普段は顔を合わせない機体を相手にして DACT をやると、得るものが大きい。しかも、相手の国が違えば訓練のやり方や戦い方も違ってくるから、そういう意味でも勉強になる。そういうことを理解しないで、単に結果だけ見て「勝った、負けた」と一喜一憂するのは、ちと視野が狭すぎるのではないかといいたい。

さらに付け加えるならば、今回の F-22 と EF2000 の DACT は近接戦。最初からそういうシナリオで DACT を始めているわけで、そこのところを無視している人が多くないかと。

つまり、近接戦をやるには、まず相手に近接するところまで進出しなければならない。それには、私が何度も各誌で書いているように、「敵が何者で、どこにいて、どちらに向かっているか」が分かっていないといけない。そこでモノをいうのは状況認識能力であり、戦闘機を含めた航空戦のシステムである。

そういう部分に対する認識が欠落していて、「敵の所在は必ず分かっていて近接戦に持ち込める」という前提の下、近接戦の DACT の結果だけ見てドヤ顔しているってどうなのさ、と。

こういうことを書くと、「そのつもりがなくても、いきなり敵機と遭遇して近接戦になることがあるかも知れない」と反論する人が出てきそう。でも、それはそれで状況認識能力の欠落であるし、偶然の遭遇に期待をかける時点で、そもそも問題がある。

ついでに書いておくと、視程外戦闘の成績を云々するのであれば、有史以来の航空戦のデータ… だけではなくて、湾岸戦争以降の航空戦のデータも調べてみるべき。BVR AAM がまともにモノになっておらず、早期警戒機やデータリンクなどのシステムが整備されていなかった時代のデータまで引っ張り出してみても、有意な参考にならない。


かつて「F-X に F-22 以外の選択肢はない。F-22 でないと日本の空は護れない」という議論が大手を振ってまかり通っていた頃には、「Typhoon/EF2000 の方がいい」なんて話はマジョリティになっていなかった。そもそも、今回の話より前に F/A-18E/F が DACT で F-22 をキルしたことがあったと記憶しているけれども、そのときには大して騒ぎにならなかった。

最初から「F-22 よりも Typhoon/EF2000 の方が日本の空の護りに役立つ」と主張していた人が、今回の話を聞いてドヤ顔しているならともかく、かつて「F-22 至上主義者」だった人が今回の DACT の結果を見てドヤ顔していたら、もう噴飯モノである。

最後に一言。「空中戦をチャンバラ時代劇と一緒にするな」と。

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