Opinion : 尖閣情勢と反日デモをめぐる徒然 (前編) (2012/9/17)
 

なんだか最近、中国の反日デモのニュースが立て続けに報じられているせいで、韓国関連の話がどこかにすっ飛んでしまっているような。

それはそれとして、最近「なんか、以前とは違うんじゃないか」と思っていることがある。それは何のことかというと、自分の身辺で中韓両国に対して批判的な言動が増えているなあ、という話。

もともと、平素から「中国」とか「韓国」とかいうキーワードにいちいち反応しては、朝から晩まで Twitter なんかで批判的な言動を繰り返しているような人ならいざ知らず。そうではなくて、以前だと中国や韓国のことには何も言及しなかったような人が、批判的な発言をする方向に変わってきている事例が、自分の身辺にいくつもある。

もちろん、自分の周囲の何名か、という超ローカルな話だから、これをもって全国的な傾向だと判断するわけにはいかない。それでも、以前ならこの手の話についてはスルー、あるいはノンポリを決め込んでいた人までが「中国・韓国は怪しからん」という態度に転じたとなると、これはひょっとしたらタダゴトではないんじゃないか、と。

つまり、尖閣・竹島などをめぐる両国の昨今の行状が、これまでノンポリ派・穏健派だった日本国民までも、強硬な方向に走らせるという藪蛇な事態につながってないか ? という話になる。


日本の状況からいって、日本国内で中国人や韓国人、あるいは中韓両国の企業などが物理的に襲撃される事件は滅多に起きないだろうし、起きても大きな規模にはならないと思われる。第一、そんなことをやったら日本人も相手と同じ次元に墜ちることになってしまうので、やったら駄目である。

ただ、中国製品や韓国製品、あるいは両国の企業の製品をターゲットにする不買運動みたいな形で、じわじわとダメージを与えることはあるかも知れない。だから、日本国内で事業を展開している中国系・韓国系企業の関係者なんかは、内心ではヒヤヒヤしているかも知れない。

そういえば以前に、ヨドバシカメラの店頭で「我が社はアメリカに本拠を構えるグローバル企業です」というでかい POP を掲示して "出自隠し" をやっていた中国系 PC 企業があった。

中国国内の反日デモについては、以前から「政権・体制に対する批判に転じることを当局は怖れている」とかなんとかいうことがいわれている。ただしどうだろう。本当に体制批判、反体制デモに転じた日には、またぞろ武警でも戦車でも繰り出してきて、強引に鎮圧して終わりではないだろうか。もちろん、海外の報道陣はシャットアウトした上での話。

ロシアともども、シリアの現体制を支持している中国政府のことだから、それぐらいのことはやっても不思議はないと思う。天安門事件という前例もあることだし、体制を守るためなら、それこそ "手段は選ばない" のでは。

むしろ、日本政府、ないしは日本の朝野をビビらせることを企図して、(公然と、なのか、それとも非公然と、なのかはともかく) 一種の官製デモを仕掛けているのだといわれても、致し方あるまい。ただし、官製デモだからといって完全に管制できているかというと、それはまた別の問題であるけれど。

現実問題として「理知的な行動を」という抽象的な表現にとどまっている中国政府の態度からいって、どこまで本気で止めるつもりがあるのか怪しい、と思ってしまう。それと同じようなことを考えている人が増えて、これまでスルー、あるいはノンポリを決め込んできた人までその流れに乗ってしまったら、どうなるだろう ? というところで、冒頭の話につながる。


過去の前例からすると、中国政府が記者会見で、あるいは日本政府あたりに対して「悪意をもったネガティブキャンペーンが張られている、もっとポジティブな報道を」と要求してくるかも知れない (それは一体、どこのキングソフトだよ ?)。

ただ、官製デモを仕掛けられるような国、政府が情報を統制できるような国と違って、日本ではそんな簡単にお上がコントロールできるわけではないから、「反中路線の方が部数が増える/視聴率が上がる」とみた途端にコロリと態度を変えるメディアが出てくるかも知れない。

一方では、「こういうときこそ国民を正しい方向に啓蒙すべきである」と考えて、あくまで親中路線を押し通すメディアもいるかも知れない (ここでいう「正しい」とは、そのメディアの過去の路線に照らして「正しい」という意味。為念)。正直な話、どうなるかは予想がつかない。

なんていう調子でいろいろ書いていたら分量がかなり増えそうになってきたので、続きは次回に。

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