Opinion : アルジェリアでのテロ事件に関する徒然 (2013/1/28)
 

今回は、アルジェリアで発生したテロ事件について思ったことをつらつらと。

日本ではなんだか、今回の事件で亡くなった方の実名公開と、それに関連する報道の在り方に話の焦点が行ってしまっている感がある。と書いたところで念を押すと、これは自分の周辺でなされているやり取りで受けた印象なので、全体的な傾向かどうかは分からない。それはそれとして。


「テロ組織の要求には屈しない」として強硬措置に出たアルジェリア政府のやり方は、間違いとはいえないと思う。ここで要求に屈した前例を作れば、「テロを起こせばアルジェリア政府はいうことを聞く」という見方が広まることになり、後に禍根を残すのは間違いない。

ただ、強硬措置でテロリストを排除するにしても、人質の犠牲を少なくして、できればゼロで済ませる方がいいのも確か。だから今回の件、決して「結果オーライ」とはいえない。

正直な話、アルジェリアでもその他の中東・北アフリカ諸国でも、対テロ部隊がいてもデルタや SAS 並みにキリング ハウスで訓練しているかどうかは怪しいと思われるので、そこで強行突入すれば人質に犠牲者が出る可能性は高い。これは今後、改善を図ってもらわないといけないポイント。

それは、犠牲になった家族の方などにとって辛いというだけの話ではなくて、犠牲者が出たことがアルジェリア政府に対する非難、ひいてはテロ対策における各国間の足並みの乱れにつながる可能性もあるから。

そのこととの関連というべきか、「デルタや SAS を送り込んで解決させればよかったのに」という意見もあるけれど、でもちょっと待った。立場を逆にして考えたときに、それって受け入れられる選択肢 ?

たとえばの話、日本でテロ事件が起きて欧米人が人質に取られたと仮定して、そこでロンドンから「SAT では頼りにならないので (普通、そこまで露骨にいわないのが外交的配慮ってもんではあるが)、我が国から SAS を派遣する」なんていわれたらどう思うか、という話。

そうやって考えれば、自国の部隊で対処すると言い張ったアルジェリア政府の立場も分かる。そもそも、どこの国の政府にもメンツというものがあるわけだし。

そうなると、今後に同種の事態を再発させないための現実的な策としては、しかるべきノウハウや訓練インフラを持っている欧米諸国の対テロ部隊が、その他の地域の対テロ部隊を訓練してスキル向上を図る、というアプローチしかないんじゃないかと考える次第。

実際にやってみて、それでインスタントに結果が出るとは限らない。結果が出るとしても時間がかかると思う。そもそも、結果が出るかどうかは、何か事件が起きてみないと分からないのが辛いところだけれども。


ところで。こういう事件がある度に、イスラム教徒やイスラム教国に対する見方が厳しくなりそうではあるけれど、そもそもイスラム教がそんな「過激思想を煽る」側面を持つ宗教ってことはないはず。オウム真理教とは話が違うんだから。

第一、イスラム教徒でなくても過激なテロを起こした事例はある。典型例がアイルランドの IRA なのはいうまでもない。テロ組織でなく国家のレベルであっても、イスラム教国でなくたって、覇権主義な国も過激な行動に出やすい国もある。だから、この手の事件と宗教を結び付けて考えるのは、とりあえず止めておいた方が良いのではないかなあと。

思うに、テロリストやテロ組織にとっての宗教というのは、自らの支配欲を実現・確立するためのツールに過ぎないんじゃないかと。単に「俺様は正しい、俺様のいうとおりにしろ」とやるよりも、それぞれの土地で広く信仰を集めている宗教をダシに使う方が受け入れられやすいだろうから。

ただし、受け入れた側にとっては、その結果として高い授業料を払わされることになるわけだけれど。それでも、この手法にひっかかってしまう人がいるのだから辛いところ。

それに、若者を引っ張り込んで鉄砲玉に仕立てるに際しても、宗教をダシにするのは効果的だろうし。ただ、そうやって鉄砲玉になって今回みたいなテロ事件を起こすことになっても、それはテロ組織を率いる側からすれば「なんぼでも代わりがいる使い捨ての資産」に過ぎないのだろうけれど。

ともあれ、実名公開云々みたいな話に矮小化しないで、今回の件をきっかけにして中東やアフリカにおけるテロ事件とその背景について、ちょっと真剣に考えてみてもいいんじゃないかと。そこで「マスコミが報じない」と責任転嫁しなくても、その気になればいろいろと情報源はあるのだし。

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