Opinion : 防衛産業と愛国無罪に関する徒然 (2013/3/18)
 

困った現実だけれども、「軍の装備調達に汚職・不正はつきもの」。多額の国費が動くだけに、なんとしても契約を獲ろうとして必死になるせいだろうか。贈収賄と過剰請求が双璧ではないかと思われる。

もちろん、誰もそのままでいいとは思っていないわけで、発覚すれば捜査・処分ということになるし、不正を防ごうとしていろいろ施策を講じてもいる。同一グループ内での利益誘導を防ごうとしてアメリカ政府が導入した OCI (Organizational Conflicts of Interest) ルールなんていうものもある。

そこで気になるのは、ときおり「不正擁護」と受け取られかねない意見が出てくること。「競争入札は装備調達にそぐわない」とか「装備近代化の足を引っ張るのか」とか「当事者の心情を思えば云々」とか。

そういえばインドでも「汚職疑惑の度に当該メーカーをブラックリスト入りさせてばかりいると、軍の装備近代化が滞る」という主張があるらしい。ちょっと待て。


これ、他の分野でもありがちな「両極端な議論」なのかなと。
一方では、「防衛産業界はボロ儲けするために戦争を起こさせている」なんて極論がある。「戦争が起きればボロ儲け」になるかどうかについては、以前にも書いたから繰り返さないけれど。かと思えば他方では、上に挙げた例みたいな「過剰な業界擁護」もある。私にいわせれば「どっちもどっち」である。

事情はどうあれ、不正がよろしくないのは当然のこと。そこで「愛国無罪」みたいなロジックを持ち出したら、法治国家にあるまじき事態である。どうもこう、目指すべきところと、そのための手段がこんがらかって、主張がおかしな方向に行ってしまっているのではないかと。

「戦争を起こさせてボロ儲け」は論外としても、企業が商売としてやっている以上は、適正な利益を実現することは必要。ただし、国民の血税を支出するのだから、好き放題にジャブジャブと公金を支出するのはよろしくない。昨今のように、財政状況厳しき折ならなおのこと。要は両者のバランス。

政府としては、長期的な見通しを立てられるような産業戦略や計画を示した上で、限られた支出の中で最大限の成果を引き出せるような制度・仕組みを作る。それに対して産業側は、最小のコストで最大の結果を出せるような努力をする。

どちらか一方に負担を押し付けるだけでは、きっと長続きしなくて破綻する。そうした中で、たとえば「競争原理を導入することの是非」とか「どういう形の競争がいいのか」とか「どういう形で適正利益を実現するか」「コスト品質・性能などの改善に向けたインセンティブはいかにあるべきか」といった議論が出てくるわけで。

ただ、そこで話をややこしくしているのが「国産 vs 輸入」の議論。特に「国産品と輸入品の競合」になった場合、心情的に前者を推したくなる向きが出てくるのは、いずこの国も似たようなもの。そういう状況が UH-X の一件に影響しなかったのだろうか ?

個人的には、「とにかく国産化さえしていれば安心」という主張には首肯できない。モノを作るところにばかり目が行っていて、原材料の調達などについてどう考えているのか、という視点が欠落した向きが多いように見受けられるから。

「産業基盤・技術基盤を維持・育成すべき」という主張そのものは同意できるけれども、それを総花的に何でもかんでも適用するべきなのかというと、それはまた別の問題。そして、従来通りのやり方で今後も通用するのか、やっていけるのか、という議論も必要。
そのことと、限られた国費をいかにして有効に活用して防衛力の整備につなげるか、という問題を勘案した上で、制度や産業戦略を見直す必要があるのでは。

たとえば「適正利益の保証と過剰な支出の抑制の両立」であれば、「最終的に必要なのは可動率を初めとする成果なのだから、作業量ではなく成果に応じた支払を行う」という PBL (Performance Based Logistics) はひとつの考え方。ただ、兵站業務なら機能できても、研究開発に適用できる考え方かというと怪しい。固定価格契約にしてもしかりで、量産ならともかく研究開発向きとはいえない。

個人的には、研究開発や装備調達における国際共同化は推進すべきだと考えているけれども、これは、それぞれ固有の経験を持ち寄ることによる知見の拡大、スケール メリットの追求、RDT&E のためのインフラやノウハウを拡大する効果が期待できると考えるから。

ただし、誰とどういう形で組むかがキモで、それを間違えると失敗しそう。それに、武器輸出管理制度の整備、技術情報の保全と輸出・共同開発の両立、といった課題に取り組む必要もある。

そんな具合に、場面に応じた最適な考え方をひねり出してみるのはいいけれども、単なる「現状墨守・業界擁護・愛国無罪」の論を展開するだけでは、結果的に誰も幸せにならないと思う。


この産業政策がらみの話は、現時点では個別の話についての考えにとどまっていて、包括的にまとまった形の結論を持つには至っていない。でも、今後の仕事を通じて取り組んでみたいテーマのひとつではあると思っている。

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