Opinion : いわゆる Twitter 暴言からネット言論についての徒然 (2013/6/17)
 

なんでも、「復興省の参事官氏が Twitter で暴言を吐いた」といって騒ぎになったとのこと。ここのところ、自分の周辺でも、それについて言及するツイートが多数。

なるほど、悪態をつきたくなるような話が実際にあってもおかしくないなとは思うし、それについては同情する。でも、それを Twitter でぶちまけてしまったのは、どう見ても御本人の失策としかいいようがない。だから、それについては同情できない。

参事官氏を擁護する意見を見ていると、基本的には、「左翼を叩いたら、左翼とマスコミが結託して参事官氏を追い込んだ」という不満に収斂しているとの印象があった。なるほど、これはこれでありそうな話。でも、だからといって「左翼がー」「マスコミがー」を連呼しているのを見ると、

気に入らない対象がいて、それを叩くために使えそうなネタがあると、たちまち反射的に食いついてしまう

という点においては、どちらも大した差はないんじゃないの、とも思える。方向性が真逆であったとしても、フィロソフィは似たようなものではないかなあと。


根本的な問題は、誰でも見られる場所で悪態をついてしまったこと。過去に何回も書いていることだけれども、「自分の仲間内だけに宛てたつもり」で気安く発言して、それが炎上につながる事例が後を絶たない。「家の中にいるから安心」といって窓全開で着替えていたら、それを外から覗かれたようなものである (なんのこっちゃ)

ことにいわゆるソーシャル メディアは、(こんなこと書くと怒られそうだけれど) 仲間内の馴れ合いという色彩が強いから、なおのこと。でも、招待制だった mixi (それだって実際には有名無実化していたと思うが) は誰でも自由参加できるようになって久しい。他の SNS については使っていないからノーコメントだけれど、建前がどうあれ、実質的に「仲間内限定」とならない点は大同小異だと思う。

Twitter にしても、フォロワー限定の「鍵付き設定」にしていたところで、そのフォロワーがすべて自分の味方かどうか、保障できる ? ましてや、全体公開設定にしていれば、自分の発言を見ているのがフォロワーだけとは限らないし、知らないところで拡散していても不思議はない。

そういう状況で、しかも自分のポジションが明確に分かってしまうような内容の発言をすれば、どうなるかは自明の理。それをかぎつけて火をつける人も、過去の発言をサルベージして回る人も、身元を暴き立てようと必死になる人もいるだろう。それは、過去のあまたの炎上事例に共通するパターン。なのに、同じような失敗を繰り返す人が後を絶たない。

と、それはそれとして。

そんなネットの言論空間って、もともと付和雷同性があるというか、特定の「悪者」が決まると雪崩を打って叩きにかかる性質があるように思える。そして、「ワル自慢」あるいは「立場にあるまじき問題発言」みたいなのがあると、よってたかって叩きにかかる。人によっては、それで「いいことをした気分」になっているのかも。

以前にも書いた、自分が見たい話ばかりを身の回りに集めてしまいがち、という特質。そのことと前述の付和雷同性が一緒になると、自分の周囲の状況、たとえば Twitter の TL の話の流れ、メインストリームになっている話題だけ見て「○○は怪しからん、という自分の意見は、こーんなに支持されている」と思ってしまっても不思議はなさそう。

悪者を見つけては叩く付和雷同性とか、見たいものだけ見る傾向とかいうのは、なにもネット言論に限らず、リアル言論でも見られる傾向。でも、ネット言論の方が、こういった特質が先鋭的な形で出るように思える。その背景にあるのは、おそらくは紙媒体や口コミよりも電子の方が速いことに起因する、伝達の早さ。

ただしネット言論というのは飽きっぽいから、新たな「悪者」や「ヒーロー」を見つけると、それまでの「悪者」や「ヒーロー」をひょいと捨て去ってしまうことがままある。だから私は「ネットの噂も 75 時間」なんてことをいう。


ともあれ、こういうネット言論において顕著な傾向を活用して、サイバー宣伝戦・サイバー心理戦を仕掛けようとする向きが出てきても不思議はないし、すでにやっている人や組織がいても驚かない。「自分はそんなのにひっかからない情報強者だ」と思っている人ほど、実は危ないのかもしれない。

でも、前述したように「ネット世論は飽きっぽい」し、以前にも書いたように、ネット言論なるものがリアル言論との間で、どの程度まで密接にリンクしているかというと、ちと怪しい部分があると思う。だから「ネット言論をうまいこと操って大勝利」と喜んでいたら空振り三振、なんてオチで終わる可能性が高そう。

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