Opinion : 愛国エンタメとやらへの批判に関する徒然 (2013/6/24)
 

こんな記事が出回ったとのこと。

朝日新聞デジタル:読者の右傾化 ? 不満の表れ ?「愛国エンタメ小説」が人気 - 社会

その中に、こんな記述が。

受賞を逃した山田宗樹「百年法」について選考委員の石田衣良さんは「右傾エンタメのパターンを踏んでいて残念」と講評した。

あのー、そんなにエンタメ業界の「右傾化」が心配ならば、石田さんがお得意の「サイレントマジョリティ」でなんとかなされば宜しいのでは。


というのは冗談として。

そもそも、過去に「日本はこんなに良くないことをしてきた」「日本はこんなに良くない国である」「だから被害者のいうことは聞くべき」とかいうことばかり言い立ててきたから、その反動が来ている、というのが実情なのでは。

多くの業界で見られる傾向だけれど、特定の方向に強引に誘導しようとすれば、それに反発する人や勢力が現れて跳ね返りが来る。元の位置まで跳ね返るのならまだしも、さらに利息を付けて反対方向まで跳ね返ってしまうこともある。すると今度は逆方向の力が働いて、また反対方向に… なんていうことになるかもしれない。

問題なのは、その過程で極端から極端に振れてしまうこと。たとえば、その「右傾エンタメ」とやらの流れに含まれそうな話で、尖閣情勢あたりをネタにした「日中開戦モノ」がいろいろある様子。これなんか、はっきりいってしまえば「過去の反動で、反対方向に極端に振れた悪い例」だと思う。

個人的には、「中国はこーんなに強大な脅威だ」と煽るのも、「自衛隊はこーんなに強い」と煽るのも、辟易している。尖閣情勢に限らず、サイバー防衛問題でも何でもそう。だから、できればそういうトーンの案件には関わりたくない。第一、架空戦記とか空想戦記とかいうのは、個人的にもっとも苦手な分野なのである。

もっとも、そういう打診をいただくこともないのが実情で、そこのところは「よく分かっているなぁ」といえるかも知れないけれど (苦笑)。

問題は、「戦争イヤイヤ」が「戦争に関する物事、軍事に関する物事を、見えないところに封印して閉じこめておけば OK」という考えにつながり、戦争・軍事について国民の多くを「ネンネ」の状態にしてしまったこと。
そこでいきなり昨今のように情勢が緊迫化すれば、ついつい刺激の強い話に目がいってしまうし、安い煽りに乗せられかねない。それでは結果として、「戦争イヤイヤ」のはずが、却って逆効果になる。

こんな例えはどうかと思うけれど、「エロ封印」からいきなり「エロ全面解禁」にいったらどうなるか… と考えると、分かりやすいかも。
子供の頃から軍事関連の話を教え込む必要はないし、それよりも基礎的な「普通学」を身につけることの方が大事。ただし、だからといって大人になっても何も知らないのも問題。「いちぜろ」ではなくて、段階を追って少しずつやらないと。

かといって、「正しい軍事知識の普及」とかいって当局の言い分だけそのまま流すのも、兵器のスペックの話ばかりするのも、それもまたどうかと。ことにスペックの話なんていうのは、公表値はあくまで公表値であって、真実が奈辺にあるかは分からない。それをせっせと暗唱したところで、いかほどの意味があろうか。

それよりもむしろ、「軍事力とは何か」「ただの暴力集団と何が違うのか」「その軍事力で何ができて、何ができないのか」「軍事力を動かすのに何が必要なのか」という、それこそもう「根本」「仕組み」の話をする方が、ずっと優先度が高い話ではないかと思う。そういう知識が、極論や煽りに対するストッパーにもなるだろうし。

「世の中の右傾化がー」「愛国エンタメの増加がー」「憲法九条の死守を」と、従来と同様のシュプレヒコールを続けても、おそらく流れは変えられない。方向を無理矢理変えようとせず、ただし極端すぎるところまでに振れないようにストッパーをかける方が、よほど喫緊の課題だし、意味があると思うのだけど。


それはそれとして冒頭の話。文面から見ると「右傾エンタメに属する作品に賞なんてやれん」というようにも読めるのだけれど、実のところはどうなのだろう。もしも本当にそんなことを考えている審査員がいるのだとしたら、それこそ「言論の危機」ではなかろうか。

もっとも、平素から「文学作品を通じて世論を導くのだ」と思っているのなら、「右傾エンタメ」批判につながるのも無理はなさそう。とも思える。

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