Opinion : いわゆる戦車不要論をめぐる徒然 (2013/7/29)
 

少し前に Twitter で突如として「戦車不要論」に反駁する内容のツイートがワラワラと流れてきたことがあった。どうも、誰かが「戦車不要論」と受け止められそうな内容のツイートをして、別の誰かがそれに反論して、そこに参入した人がいて、ということの様子。

と見受けられたけれど、なにせ「Twitter 三原則その 1 : 議論しない」を掲げている自分のこと。わざわざ火事場に突っ込んでいくことはしなかったので、これはあくまで推測。火のないところに煙は立たないだろうから、当たらずとも遠からずというところではないかと。

その件に限らず、日本で陸自がらみ (特に 10 式戦車がらみ) で戦車の要・不要をめぐる議論になると、参加者が、すっごく熱くなる傾向がある様子。でも、そこで持ち出される定型の主張を見ていると、複数の話がごちゃ混ぜになっているのではないかと思った。つまり、こういうこと。

  1. 戦車が、他にとって代わるもののないプラットフォームなのか
  2. それぞれの国の安全保障政策やドクトリンにおいて、戦車の居場所があるのか
  3. 居場所があった場合、その中で戦車の優先度はいかほどなのか


まず「1.」。たとえば、第四次中東戦争などで、対戦車ミサイルによる被害を出した事例があることから、「機動力・打撃力・防禦力のバランスがとれたプラットフォーム」という定義に疑義を呈する人が出てくる。

この手の話って無限ループみたいなところがあって、攻撃側の技術開発と防御側の技術開発と、どちらに振子が振れているかで話が違ってくるだろうから、おそらく戦車というものが存在する限り、永遠になくならない議論だと思う。

次に「2.」。想定している戦場や戦闘の様態、仮想敵の陣容や装備といったところによって、居場所の有無が違ってくるのは当たり前で、ある国における要・不要の判断がそっくりそのまま、別の国に適用できるかというと疑問がある。

なるほど、いったんは「戦車全廃」といったのに、後で復活させた国はありますよ ? でも、その国が直面している戦場や脅威が、他所の国、たとえば日本にそのまま適用できるのかどうか。そういう話を抜きにして「某国で復活させたから日本でも不要ということにはならない」というのは、ちと乱暴ではないのかなあと。

ただし個人的には、全廃には反対。それはなぜかというと、以前にもどこかで書いたように、いったん止めたものを後で復活させるには、生産・維持・運用の基盤を再構築することになって手戻りが大きいから。それなら小規模でも維持しておくべき。

で、そうなると今度は「ゲリコマ対処」とか「島嶼防衛」とかいう主張が出てくる。なるほど、戦車は機動力と打撃力と防御力に加えて、優れたセンサー能力を備えたプラットフォームにもなり得るけれど、戦車だけが優れたセンサー能力を持っていて情報を抱え込んでても、役に立ちませんよ ?

優れたセンサー能力で情報を得たら、それを他の兵科と共有・活用してナンボ。陸戦に限らず海戦でも空戦でも同様だけれども、情報を得るだけでなく、それを必要とする関係者同士で共有することも、負けず劣らず重要。

島嶼防衛云々にしたって、敵兵が上がってきた時点で制空権や制海権が怪しくなっているということだから、その時点で問題がある。制空権も制海権も怪しくなった状態で、陸地で戦車だけ頑張ってどうするのか。まずは制空権や制海権の維持と、それによって敵兵を上がらせないことが先決。

そもそも、上陸した後で個別にやっつけるよりも、揚陸艦に乗っている段階でフネごと沈めてしまう方がよろしいのではないか。というのが、「3.」の優先度の話。

もちろん、それで上がってくる事態を完全に阻止できるという保障はないから、上がってきた後のことも考えなければならないけれど、そこでどちらを優先すべきか。必要だけど優先度は低いということもあり得るんじゃないの、と。


実際のところ、先に挙げた「1.〜3.」だけでなく、さらに「日本の技術者が心血を注いで作った国産品の悪口をいうな」とか「戦車の製作に関わっている職人の技術は国の宝で」なんて話まで持ち出せば、もうグチャグチャになって収拾がつくはずがない。だから、この辺の話は措いておくとして。

どうしても「日本における戦車不要論の正当性」についてやり合いたいのであれば、まずは「居場所」と「優先度」の話に的を絞ってみては。「必要 = 最優先」という "いちぜろ" の議論になるから話がおかしくなるので、「必要だけど現状では優先度が比較的低い」という結論だってあり得るだろうに。

どんな国でもリソースは有限なのだから、それをどう配分するかで優先順の判断を迫られるのは必然。そのことを無視してやりあったところで、現実的な落としどころには行き着かない。「どうしても」というなら、まずは日本の経済発展と国の財政基盤強化から話を始めないと。

いやまあ、落としどころを見つけるのが目的ではなくて、気に入らない主張をする人をやっつけるのが目的だというなら、もう何もいわないけど。

Contents
HOME
Works
Diary
PC Diary
Defence News
Opinion
Ski
About


| 記事一覧に戻る |