Opinion : 安全の元手 (2013/9/30)
 

以前に Twitter でチラッと触れたことがあるけれど、うちのデータ保全体制はおかしい。仕事用本務機と別に仕事用予備機があるという時点で、すでにフツーではないかも知れない。しかも、お出かけ用のノート PC とは別に。
お出かけ用のノート PC が予備機を兼ねていたのでは、紛失や破損のリスクが高まるので予備機にならない。だから、両者は別。

で、それぞれの PC ごとに週に二度ずつシステム イメージを作っていて、それも別々の HDD で。だから PC の台数×3 倍のデータがあることになる。ただし、本体もバックアップも自宅の中に置いてあるから、「自宅が倒壊すればアウト」ということになるのだけれど。

でも、そもそも自宅が倒壊するような事態になれば、自分が生きながらえているかどうか分からない。それでは事業継続もヘッタクレもないので、そこまでは考えないことにしている。

もちろん、こういった仕掛けのために投下した資金はすべて、自分が稼いだ売上の中から出している。「事業継続のためにバックアップ体制作りのための資金を出してください」なんてクライアントにお願いしたことはないし、お願いしても相手にされないと思われる。


「データ保全」だろうが「事業継続」だろうが「安全」だろうが、なにがしかの資金投下を必要とするのだし、その資金は自分で稼いだ中からひねり出すのが基本。それは個人でも企業でも同じこと。つまり、「何をするにも元手が要る」。

といったことを考えると、JR 北海道で問題になっている軌道や車両の保守管理に関わる問題、あるいはその他の問題に関して、「儲けを優先して安全を犠牲にする姿勢が云々」という批判は、いささか首肯しがたいものがある。まず儲けて元手を用意しないことには、安全対策も何も実現できないだろうに。

だから、「儲ける」と「安全対策」が二律背反の関係にあるのではなくて、「儲けたカネをどう使うか」という問題のはず。したがって、「儲けを優先して安全を犠牲にする姿勢が云々」という言い方はおかしいんじゃないかと。「儲けたカネの使途を決める過程で安全を犠牲にする姿勢が云々」というならまだしも。

ただ、どうもこの国では「儲ける」こと自体が「悪」だと思われている節があるので、そのことからすると、「儲けを優先して安全を犠牲にする姿勢が云々」という批判が出てくるのは無理からぬところがあるのかも知れない。

それに、人によっては「企業の儲け = 資本家による搾取」という観点で見てしまうこともありそう。そういえば、内部留保の意味を勘違いしている政党がどこかにあったような…

現実問題として、左前になった地方私鉄などで安全対策が行き届かず、事故を起こしたり、国土交通省に叱られたりしている事例もある。制度改正の引き金になったツアーバスの事故にしても、「安いは正義」というニーズ (?) に対応すべく、ツアーを企画する旅行会社がバス運行を担当する会社を安値でこき使った事情が、まったく影響していないわけでもないだろうし。

何をするにもコストはかかるのだから、必要なコストはちゃんとかける必要がある。でも、そのためには元手が要る。当たり前のことなんだけれども、「利益を度外視して安全対策のために資金を投下する美談」を歓迎する風潮があって、それが却って危険を呼び込んでいるような気がしなくもない。

何かある度に「国が、国が」というのも同じ。国に対処を求めるのはいいとして、それには人手や費用がかかるという話はきれいさっぱり無視してしまう人がいるのだから、頭痛がする。そりゃまあ、選挙の公約なんかで「貴方以外のところに負担させて貴方を優遇します」とやれば、ウケはいいだろうけれど。

筋論からすれば「景気を良くして経済を回せば国のインカムも増える」というところなのだろうけれど、そうすると今度は「金儲け悪玉論」が邪魔をして「経済成長なんて要らない、昔に帰れ」といいだす人が出るのだから始末が悪い。


冒頭で触れた JR 北海道の話についていえば、安全対策を講じないといけないのは当たり前の話で、そこで手抜かりがあった点については弁護できない。ただ、最近になって不具合がワラワラと露見したのが気になる。昨日・今日にできた会社ではないし、130km/h 運転だって 20 年近くやっているのだから。

すると、不具合の続出が車両やインフラの疲労によるものなのか、それとも人材や組織などの問題によるものなのか。以前と比べて、何か安全対策に影響するような状況の変化があったのか。そこのところは明確にする必要があると思う。

しかも、もともと利用者が少なくて経営基盤が弱いことは分かりきっているのだから、そういう状況の中で鉄道事業を維持するにはどうすればいいか。当事者と地元の両方が再考する必要があるのではないかと思った。事故を起こすと責める (これは仕方ない) 一方で、合理化や路線廃止などをいいだすと「それは止めてくれ」というのでは、板挟みになる方もたまらない。

電力会社の一件にしても、「安全対策が必要」という話と「悪いことをした奴は懲らしめろ、吊せ」という話がこんがらかってるように思える。

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