Opinion : その勝ち馬は本当に勝ちますか ? (2013/10/21)
|
三国同盟に乗るかどうかでスッタモンダしたときに、「バスに乗り遅れるな」と主張する人がいれば、一方では「故障しそうなバスには乗り遅れた方がいい」と主張する人もいたらしい。結局、前者の主張が通ったら、とんだ火の車であった。
ただ、それは後からだからいえることで、当時の日本から見ればドイツ・イタリアの方が勢いがありそうに見えたのだろうなあ (あくまで「見えた」ね) と考えると、眼力のなさが悔やまれるところ。もっとも、判断の基本になるデータを持っている人が少なかったり、そのデータの絶対量が乏しかったりすれば、判断ミスにつながるのは必然。
と、ここではイントロとして三国同盟の話題を引っ張り出したけれど、似たような話はいろいろありそう。
どういうことかというと、そのときそのときで「勢いがありそうな人・プロダクト・テクノロジー・国など」に乗っかって提灯記事を書いたり持ち上げたりする人はいるよね、という話。特に IT 関連メディアはそれが酷い。
たとえばの話、Second Life というネットサービス (っていうのか ?)。私が「超重い富士通ハビタット」と呼んでいたアレである。あれなんかもう、IT 系メディアがこぞって持ち上げて、毎日のように (でもなかったか ?)「○○社が Second Life に SIM を作った」といってニュースにしていた。「Second Life をいかにビジネスで活用するか ?」なんてこともあちこちで書かれた。そしてどうなった ?
そういえば、ネットサービスがらみだと「○○が API を公開した」というニュースがあふれかえった時期もあった。確か、「マッシュアップ」という言葉あたりとワンセットで。そして (以下略)
そういえば、資産運用や投資がらみなどでも、「どこそこの国が熱い」といってさんざん持ち上げておいて、後で勢いがなくなったら知らん顔、という事例はいろいろありそう。企業の海外進出にしてもしかり。
具体例を出し始めるとキリがないからこれぐらいにしておくけれど、要は「バスに乗り遅れるな」といって煽った挙句に「乗らせ逃げ」する人っているよね。と、そういう話である。
ただ、後になってから後知恵で「ほらみろ、そのバスは故障したじゃないか」というだけなら、誰にでもできる。問題は、周囲がみんなで「バスに乗り遅れるな」と熱くなっているときに、冷静に、そのバスが故障しないかどうかを見極めること。
見た目には勢いがありそうだから、勝ち馬に乗ろうとして煽る人が出てくるのも、それに釣られそうになるのも、簡単には避けられない。でも、その「勢い」が本物かどうか、長続きするものなのかどうかを見極めないと、後で足元をすくわれる。そういう眼力を持ってる? どうすれば持てる ? と、そういう話になる。
でも、これっておそらく「こうすれば見抜ける」という公式みたいなのはない。「誰かが必死になって煽っているものは、必ずこける」と決め打ちして逆張りするのも、それはそれでリスキーに過ぎるし。
となると、平素からのデータの収集や分析、そして知恵・経験・カンがモノをいうのでは。最新の情報だけでなく、過去の歴史や経緯、対象に関するデータの蓄積と、そこから導き出される評価。そういう自分なりの尺度があれば、他者による煽りと違う視点ができる。とどのつまり、インテリジェンス担当者の仕事みたいなもの。
ここまで書いてきたことの裏返しで、世間で寄ってたかって叩いている、あるいはそう見える対象が、本当に叩かれるべきなのか、叩かれても仕方ないようなことをしているのか。これもまた同様に、冷静に見極めないといけない場面がありそう。
|
ただ、見た目の勢いに目が眩んで「バスに乗り遅れるな」となるパターンなら眼力の問題といえるけれど、それとは別に、「○○嫌悪症」の度が過ぎても似たなことが起きる。つまり、「○○嫌悪症」だから「○○の対抗馬である△△を激しくプッシュする」というパターン。
これの有名な症例 (?) は「Microsoft 嫌悪症」という奴だけれど、F-X がらみで Typhoon をプッシュした人の中にも、「アメリカ製品は嫌だ」という一種の反動、あるいは「物珍しい欧州機だから」といってプッシュした人が少なくなかったのでは。
最近だと「中国」「韓国」「原子力」もこれまた、人の判断力やモノの見方を狂わせる魔法のキーワードだと思うことしきり。実際、「中国」とか「韓国」とかいうキーワードが出てきた途端に (ネットスラング的な意味で)「厨房化」する人っているものだし。
なんにしても、まわりが熱くなってるときに、落ち着いて、冷静に判断できる状況を維持するのって難しい。でも、それができないと、ことに変化の激しい御時世には危険を自ら呼び込んでしまう結果になりやすいと思う。自分も気をつけないと。
|