Opinion : 国境問題に対する理解の必要性 (2013/12/2)
 

先週はなんだか、中国の防空識別圏 (ADIZ : Air Defense Identification Zone) 設定騒ぎで明けて暮れたような気がするけれど、気のせいかも。

ただ、J-WAVE の番組でもコメントした通り、本来の意味としては「防空識別圏」と「領空」は別物なので、そこは勘違いしてはいけないところ。「領空を侵しそうな機体を早期にいぶりだして、対応行動をとるための時間を確保する」ために設定するのが防空識別圏。

ただし、当の中国政府が、その「防空識別圏」と「領空」の違いを正しく理解してないんじゃないか、という指摘がある。

防空識別圏を通過して他国同士を行き来する機体 (つまり自国の領空を侵す気遣いがない機体) まで「飛行計画書を出せ」「指示に従え」「指示に従わないと対応行動を云々」なんていいだしたのだから、そう思われても仕方ない。ただし、現時点では状況証拠に留まっているので、現時点でこれについて断言することは避けておいて。


もちろん、「領空を侵しそうな機体を早期にいぶりだして、対応行動をとるための時間を確保する」という目的からすれば、単なる通りすがりまで「身元と行先を明かして指示に従わないと敵扱い」というのは明白なやり過ぎなのだけれど、だからといって、我々がそれに釣られてカッカするのもどうかと思う。

blog でもちょっと書いたことだけれど、空の上に「領空」と「防空識別圏」があれば、海には「領海」に加えて「接続水域」や「排他的経済水域 (EEZ : Economical Exclusive Zone) 」がある。ときどき、後二者を領海と混同している向きが見受けられるようだけれど、それでは中国政府の防空識別圏騒動を笑えない。

防空識別圏設定をめぐる中国政府の動向を批判するのであれば、こちらはこちらで、防空識別圏にしろ、接続水域にしろ、排他的経済水域にしろ、意味を正しく理解して、過剰にいきり立たないようにしないと。

ことに排他的経済水域の場合、「排他的」なんて言葉が含まれているもんだから、「他国の艦船は出入り禁止にできる」と勘違いしている人がいるんじゃないか… と、ふとそんなことを考えた。そういうものではないので、お間違いのなきよう。あくまで「排他的」なのは「経済活動」に限定されるし、通航は自由なので。

実際、「接続水域に侵入」についても、「領海に侵入」と同じ意味だと勘違いしている人、いるんじゃなかろうか。ついでに書けば、領海だってしかるべき条件を満たせば通航可能である。もちろん、無害な存在であることを明らかにした上での話だけれど。


思うに、陸続きで隣国と接していて、常に「国境」ということを意識しなければならない場合と比べると、海を隔てている場合には、その辺の意識が希薄になる… というと違うかもしれない。むしろ、「国境」を構成する要素に関する正しい理解が足りない、あるいは「国境」を構成する要素を正しく知っておこうとするドライブがかかりにくい、という方が実情に即しているのかも ?

なんにしても、「国境」に対する意識、あるいは国境をめぐる諍いにどう対処するかという経験が欠如していれば、結果として、国境紛争をどう解決するか、どう折り合いを付けるかという意識が欠けることにもつながる。

でも、領海・接続水域・排他的経済水域の違いや、無害通航権とかいった話についてちゃんと理解しておかないと、いきり立たなくていいところ (あるいは、いきり立つべきではないところ) でいきり立って、要らぬ強硬論で煽って国の行方を誤る人が出てこないとも限らない。それに、その辺のところがちゃんと分かっていないと「海洋利用の自由」だって語れないだろうに。

土地でも海でも「領有をめぐる争い」というのは煽りやすいテーマであり、煽られやすいテーマでもある。それだけに、昨今の状況と、それをめぐる世論の動向には、不安を覚える。それを利用して、相手を煽って先に (暴発させる | 手を出させる)、というテクニックだってあり得るのだ。冷静に、冷静に。

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