Opinion : どう見ても空母なのでは… に関するその後の雑感 (2014/1/13)
 

少し前に blog で取り上げた 朝日新聞デジタルの記事。これについて、いろいろなところでいろいろなことが書かれているけれど、それについて改めて、個人的に思ったことを書いてみようと思った次第。初出が blog だったから、本来はそちらでフォローすべきだろうけれど、長文になりそうだったので、場を移すことに。

で。この件って、本来は別個に扱うべき問題がごたまぜになって、話がすれ違い・食い違いを引き起こしているんじゃないかと思った。それはどういうことかというと、こういうこと。

  • 実質的な「ヘリ空母」を「護衛艦」と称することの是非
  • その「ヘリ空母」を「空母」というくくりで扱うことの是非
  • 「日本が護衛艦と称して実質的な空母を建造している」と解釈される可能性


まず、実質的な「ヘリ空母」を「護衛艦」と称することの是非

そもそも「護衛艦」というのは日本独特の用語で、実質的には「駆逐艦」あるいは「フリゲート」。それに疑義を呈したいというなら、それは分かる。ことに「いずも」の場合、固有兵装の少なさからいっても HVU (High Value Unit) ぶりからいっても、あれは Jships 誌で書いたように「護衛艦」というより「護衛される艦」である。

もっとも、諸外国を見てみても「巡洋艦」「駆逐艦」「フリゲート」の境界は曖昧になっているし、古い駆逐艦より新しいフリゲートの方がデカイ、なんて話はザラ。ミサイル時代の当節、昔みたいに主砲の口径で分けるわけにも行かない。米海軍だと、巡洋艦と駆逐艦 & フリゲートは艦長の階級が違うし、駆逐艦とフリゲートは推進軸の数が違う。といっても、汎用性のある水上戦闘艦という点で、べらぼうな差があるわけでもない。

だから、「いずも」を「護衛艦」ではなくて「ヘリ空母」と呼ぶべき、という話なら分かるけれども、それなら件の記事でも「ヘリ空母」と書けばよい。そこで単に「空母」と書くから話がややこしくなる。


それが、「ヘリ空母」を「空母」というくくりで扱うことの是非、という話。

まず、「帝国海軍の空母と似たような規模で、しかもフラットトップなんだから空母だ」という論法は無理があると思う。航空機の機体規模がまるで違うのに、艦のサイズだけ同じ基準で比較しても比較にならない。

軍艦に詳しくない読者に対して、艦の規模 (ありていにいえばデカさ) を具体的に知って欲しいというのならば、帝国海軍の正規空母を出したところでピンとこないのは同じこと。むしろ「東京タワーの特別展望台の高さぐらい」の方がよいのでは。

また、空母といっても能力を発揮するのは搭載機なのだから、問題はどんな能力を持つ機体をどれだけ搭載しているか。そこで「ちょっと改修すれば F-35B を積めるのだから空母だ」と仮定の話をねじ込んで「空母だ」と主張するのもいかがなものかと。

「改修すれば空母として使えるのだから空母だ」という論法なら、橿原丸や出雲丸だって空母ってことになってしまう… というのは極論なれど、まずは「ヘリ空母」という現状に立脚して話を進める方が良いのでは。

そもそも、昔は「フラットトップ ≒ 空母 = CTOL 空母」だったけれど、今は「ヘリ空母」も「V/STOL 空母」もあり、「空母」の定義が拡散している。その搭載機に起因する区別に加えて「攻撃型空母」「対潜空母」という用途に起因する区別があるし、それをさらに展開すると「強襲揚陸艦」や「多目的艦」だって、「ヘリ空母」「V/STOL 空母」の親類になる。

つまりは、いまどきの軍艦を昔と同じ艦種でまとめようとしても無理があるよね、という話に落ち着くのでは。


それが、「日本が護衛艦と称して実質的な空母を建造している」と解釈される可能性の話とも関わってくる。

「いずも」の能力面については、少なくとも現状に立脚すれば「ヘリの運用能力と指揮管制能力を高めた艦隊中枢多目的艦」であって、それ以上でもそれ以下でもない。将来的に F-35B を載せる深謀遠慮があるかも知れないけれど、載せたところで機数は限られるから、米海軍のスーパー キャリア並みとは行かない。その辺の話も Jships 誌で書いた。

なんだけれども、「空母」という言葉で単純にくくってしまい、さらに「サイズが帝国海軍の空母並み」と書けば、それこそ、知らない人は「米海軍の空母並みになる、所謂変装空母である」と勘違いするかも知れないし、そうなると明らかにミスリード。

よしんば F-35B を搭載したところで、どう逆立ちしても米海軍のスーパー キャリア並みにはならない。仏海軍の空母と比べてもどうだろう ? それでは「実質的な空母」とは言い難い。


とどのつまり、こういう話。

まず、「空母型軍艦」の定義・能力が多様化しているのに加えて、昔のくくりに納まらない軍艦がいろいろ出てきている現状。それと、過去の経緯からか「護衛艦」という枠に押し込めざるを得ない海自の現状。そういう現状と矛盾を象徴するような艦が「いずも」だよね。あれを「護衛艦」って呼ぶのはどうなんだろうねと。その問題の指摘にフォーカスすれば良かったのでは。

なのに「帝国海軍の空母と同級のサイズ」だとか「改造すれば F-35B が載るんじゃないか」とかいう話をくっつけて、あまつさえ「どう見ても空母」なんて見出しをつけたもんだから、話が要らぬ方向に拡散してしまったのではないかと思った次第。

ちょっと勘ぐるならば、あれはわざと刺激的な見出しをつけた「釣り記事」だったのかも知れないけど… そもそもなんで、予算要求時でもなければ進水式の直後でもなく、進水式から 5 ヶ月も経ったこの時期に蒸し返してきたのか、そこのところが謎。

なんていっていたら、時事通信が別件で、さらに無理筋な記事を書いているけれど、その話はまたおいおい。

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