Opinion : 批判記事は必要。ただし内容次第 (2014/2/3)
 

別のネタにしようかとも思ったものの、そうすると時事通信社の「あれ」が放置プレイになってしまいそうだったので、そっちで行くことに。

もう掲載から三週間以上経っているので、念のために見出しと記事の抜粋を。

護衛艦発着の飛行機配備へ=海自初、無人偵察機で

海上自衛隊が護衛艦に発着できる飛行機の配備を検討していることが 11 日、分かった。発着に必要な設備も併せて研究する方針で、導入されれば海自初の艦載型固定翼機となる。
(中略)
憲法で定めた自衛のための必要最小限度の実力を超える「空母」に当たる恐れがあり、これまで護衛艦では固定翼機は運用してこなかった。将来的に研究が進めば、戦闘機が発着艦する空母の保有につながる可能性もある。
新たに配備される固定翼機は、艦載型の無人偵察機。(中略) 米海軍や海兵隊が配備を進めている無人小型偵察機「RQ21」などを検討している。


記事中では RQ-21 は「候補」扱いだけれども、現実問題として (ヘリ発着甲板しか持たない) 水上戦闘艦で運用可能な固定翼 UAV は ScanEagle と RQ-21 以外にほとんどないので、RQ-21 という前提で話を進めることにして。

ありがちな突っ込みどころはすでに分かりきっていて、「RQ-21 から固定翼搭載の CTOL 空母に発展させようだなんて無理がありすぎる」というもの。
それは確かにその通りで、そもそも似ているのは「固定翼」という一点のみ。油圧カタパルトで打ち出して、SkyHook でひっかけて回収する ScanEagle や RQ-21 では、CTOL 空母の導入に向けて必要となるノウハウの導入にも何もなりはしない。

「空母 = 軍事力の象徴 or 大国の象徴」という観点から、「空母導入に向けた動きらしいものはぶっ叩く」というには、いささか無理がありすぎる。第一、それをやるなら F-35B 搭載願望が後を絶たない「ひゅうが」や「いずも」を肴にする方が理に適っている。どうして、こんな無理筋満載の記事を書いたのかと不思議でならない。

RQ-21 のベースになった ScanEagle が、もともとマグロ漁船向けの魚群探査用だったからといって、「動物はあなたのごはんじゃない」の線から責めるつもりだったわけでもあるまい :-)

となると、「とにかく、何か新しいものが出てきたら反射的に否定しにかかる」というだけの話だったのか。それとも、RQ-21 の導入で割を食う可能性がある誰かさん (それはライバル メーカーやその代理店かもしれないし、部内での予算争奪戦の関係かもしれないし) に何か吹き込まれたのか。

それとも、なにかと物議を醸している武装 UAV に結びつけたかったのか。RQ-21 とは何の関係もない X-47B の写真特集にリンクしているところからすると、そういう可能性も考えられる。しかし、件の記事では「将来的に UAV を武装化する懸念が」なんて書いていない。それに、X-47B にしろ実用版の UCLASS (Unmanned Carrier-Launched Airborne Surveillance and Strike) にしろ、実用品になるのはしばらく先の話。

といったところで気付いたけれど、DDH だって「護衛艦」に違いはないから、「ひゅうが」や「いずも」に X-47B を載せるのだと思った… わけじゃないなあ。「RQ-21 などを検討している」と書いているし。


件の記事の場合、「護衛艦に固定翼 UAV という構想はいかがなものか」と疑義を呈しているように読める。疑義を呈するのは自由だけれども、そこに話を持って行く際の論理展開が乱暴すぎやしないか。

この件に限らず、何でもチェック & バランスの機能は必要だし、特に昨今みたいに「島嶼防衛がらみなら何でもあり」「南西諸島がらみなら何でもあり」になりかねない状況下ではそう。日本に限らずどこの国でも、国民的関心事になったマターがあると「何でもあり」になるのはありがちな話だし。

ただ、それならなおのこと、「手当たり次第の批判」「無理筋のこじつけ批判」といわれるような話は避けないと、肝心のところでチェック & バランスの機能が成り立たなくなるんじゃないかと気になる。それって、「手当たり次第の買物」「無理筋のこじつけ買物」と同類だと思うから。

それに、何でも空母保有に結びつけないと批判できないというのは発想の貧困だし、その空母でも集団的自衛権でも何でも、「憲法で禁じられている」「過去の答弁で否定している」以上の理由までちゃんとつけられないと、どこかで行き詰まると思う。

Contents
HOME
Works
Diary
Defence News
Opinion
About

| 記事一覧に戻る | HOME に戻る |