Opinion : 今頃になって「あけぼの廃止反対」といわれても (2014/2/10)
 

3 月のダイヤ改正で、寝台特急「あけぼの」が「臨時化という名の事実上の廃止」になる。最近では切符をとるのがひと苦労みたいで、昨年のうちに乗っておいて正解だったと思うことしきりだけれど、それはともかく。

秋田県方面で、今頃になって「廃止反対」の声が上がっているそうである。なんでも、自治体、商工会議所、商工会の関係者が JR 東日本と国土交通省に、「廃止の再考と、存続・復活を求める要望書を提出した」んだとか。

在来線でアクセスしないと新幹線に乗れないから不便で、一本で済む「あけぼの」の方が良いという主張に加えて、「廃止はビジネスや観光振興に大きな痛手」と主張している由。


といったところで、「あけぼの」1 列車で何人乗っているか概算すると、A 寝台×1 両・B ソロ×2 両、B 開放×5 両で、合計 250 名に達するかどうか (シングルデラックスは 2 人利用もできるので、そこまで計算に入れるとややこしいことになる)。

満タンでこの数字。実際の平均乗車率はもっと低いだろうけれど、仮に 1 列車につき平均 200 名とする。果たしてこの数字が、山形・秋田・青森方面における入込客のうち、どの程度の比率を占めているのか。そこまで具体的な数字を出さないと、「大きな痛手」かどうかは立証できないのでは。

それにこの数字、3 列シートの夜行バスなら 7 台分ぐらいだろうか。もちろん、寝台に寝られるのと椅子で寝るのとではだいぶ違うけれども、それを差し引いても、あれこれのコストをかけつつ夜行列車を維持するのに充分な数字かどうかは、ちゃんと議論してみる必要があると思う。

おまけに、使っている客車がはっきりいってポンコツである。というと言い方が悪くて、正確には老朽化が酷い。新造するとなれば予備を入れて 3 編成は要るから、客車だけで数十億円の投資になる。さらに機関車も要る。それは EF510 500 を貨物に譲渡しないでキープしておけば、それを充当できただろうけれど。

今にして思えば、EF510 500 を妙に多く新造したときに、「北斗星」と「カシオペア」には充当したのに「あけぼの」に充当しなかった時点で、すでに「あけぼの」の今後に見切りをつけていたのかも ?

285 系みたいに電車にすれば機関車は要らないけれど、285 系の設計を流用しても、果たして交流と直流と、両方の主回路機器を載せるスペースがあるかどうか。おそらく、客室の一部をつぶして主変圧器を載せるスペースを捻出しないといけないような気がする。

とやっていくと話が脱線するので元に戻すと、要は「老朽化した車両を代替新造してまで維持するほどの利用を確保できるのか」という話に収斂する。乗車「率」がいくら高くても、分母が小さければ分子の絶対数も小さいのだから、「率」だけで論じるのは詭弁というもの。収入は率じゃなくて絶対数で決まるのだから。

第一、存続を求めるにしてもタイミングが遅い。すでに改正ダイヤが確定して、発表も手配もできているところで「存続を」といっても、元と同じダイヤで走らせることはできない。何ヶ月も前から廃止の話は取り沙汰されていたのだから、その時点で声を上げたのならともかく。

とはいえ現実問題として、秋田県の北部や南部、それと山形県の日本海岸あたりになると、新幹線の速達効果が他と比べると及びにくい。そうした中で、「あけぼの」がそれなりに使いやすい時間帯に走っているし、乗り換えが要らないメリットもある。

だから、もしも「車両が老朽化したけれど、代替新造するには費用対効果が…」が廃止の主因であれば、そこのところの負担軽減を図るスキームを早めに打ち出せれば状況が変わっていたかも、とは思う。今となっては手遅れだし、車両が傷んでいるのは前からのことだから、早めに動いていれば良かったのに。


そういえば、JR 東日本の Web サイトにある時刻表で「運転日が 3 月末日までになってるから、ダイヤ改正後もそのまま臨時として走るのではないか」と希望的観測をしていた人がいた。

そこで自分は blog で「んなこたーない」と書いたのだけれど、蓋を開けてみればその通り。単にアップデートしていなかっただけだった。これも消滅がアナウンスされている「スーパーこまち」だって改正後まで運転することになっていたのだから、単に Web のデータを更新していなかったのだと考えるのが自然というもの。

なんか、これって「希望的観測って人間の判断力を狂わせる」典型例だなあと。「今あるものはずっとあると思ってしまい、いざ廃止となるまでアクションを起こさない」のも、根っこは似てるのかしらん ?

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