Opinion : 軍隊の威圧感について考えてみた (2014/5/26)
 

ときどき、陸上自衛隊が街中でパレードを行う際に「市民に威圧感を与える」といって労組などが物言いをつけたり、特に実銃の携行に物言いをつけたりする事案が散見される。そういえば、練馬の第一師団だったか、レンジャー訓練の締めくくりに街中を通って駐屯地まで移動する際に、物言いをつけられた事案もあったような。

ところが面白いもので、演習やスクランブル待機のために実弾を積んだ戦闘機が飛んでいても、誰も「市民に威圧感を与える」とはいわない。海自の護衛艦なども同様で、実弾を積んだ艦が航海していても、どこかの労組あたりが「市民に威圧感を与える」と物言いをつけた話は聞かない。

とどのつまり、陸自のパレードや訓練に限って物言いがつくのは、「自分達の目につくところ、自分達が生活しているところに、武器を持った自衛隊員が現れるから」であって、目につかないところなら「そんなの関係ねぇ」ということのようである。なんかテキトーだなぁ。


そもそも、実銃や実弾を持っているかどうかに関係なく、本当に「市民に威圧感を与える」かどうかは、何を持っているかというだけの問題ではないように思える。

本質的な問題は、その武器が自国民に向けられるのではないか、という不安を惹起するような環境・状況にあるかどうか。行き着くところ、国民と軍人 (自衛隊員も含む) の関係がどうなっているのか、ではないかと。

ちょうど先日、タイで (恒例の ?) 軍によるクーデターがあった。この手の事件も、一般的にありがちな解釈からすれば「軍が独裁体制を敷いて、強権支配により国民を圧迫する」と主張する人が出てきそうなものだけれど、実際にそうなるかどうかは場合によりけり。

では、何が「場合によりけり」なのかといえば、軍の立ち位置や軍と国民の関係といったファクターが国によって違う、という話。たまには、軍が国民の味方をして政権に反旗を翻すというケースも、ないわけじゃない。それが結果として正しかったかどうかは別として。

そういえば、警察官も実弾をこめた拳銃を携行して街中に立っているけれども、それでいちいち「市民に威圧感を与える」と物言いをつける労組は (自分が見聞きした限りでは) 存在しない。

それは「警察官の拳銃は犯罪者に向けられるもの」というコンセンサスがあるから、なのでは ? 普通の市民には拳銃は向けられないというコンセンサスがあるから、物言いを (つけない | つけられない) のでは。

もっとも、犯罪者に対して発砲することの是非を問題にする人はいるけれども、それはまた別の話。

元の話に戻すと。現実問題として、普通の一般市民に対して自衛官が武器を向けるような事態があるかといえば、それはないというのが一般的な受け止め方なのでは。実際、自衛官の方と話をしていると、「内剛外柔」というか、そんな感じである。

もちろん任務には真剣に取り組むし、その際に部下に厳しい態度で命令や指示を飛ばすことになるのは当然。でも、外部の人間に接するときには一転して穏やかな態度を見せるのが普通。

ときには「顔は笑ってるけど目は据わってる」なんてこともないわけではないものの、それは個人差というもので、国民に武器を向けることがあるかないか、なんて議論とはまったく別次元の話。

そもそも、誰にも威圧感を与えない軍事組織では抑止力にならない (笑)。その威圧感が外に (適切に) 向けられる分には問題ないけれども、内に向けられて弾圧の手段になるのはマズい、という話。


一般公開でも報道公開でも、外部の人間に対しては当たりが柔らかく「人間としての顔」を見せてくれれば、接する側の一般市民や報道陣も安心する。北方領土みたいな問題を抱えてはいても、舞鶴にやってきたロシア艦の乗組員だって充分にフレンドリーだったと思う。

逆に、外部の人間に対しても無表情だったり、厳しい態度で接していたりすれば、「この人達って危なっかしくない ?」と思えてくる。せっかく他国に軍艦を寄港させて、しかも民間の港に着けたのに、一般公開も何もロクにやらないケースもしかり。
そこで、その国の軍が自国の国民に銃を向けた "実績" でもあれば、なおのこと。本当に威圧感を与えるケースがあるとすれば、そういう話ではないのかなぁ。

(演習などでお約束の注意書き)
↑の文面は特定の国の軍を指しているものではありません。

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