Opinion : 独立するということ (2014/09/22)
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スコットランドの独立をめぐる住民投票があって、結果的に否決になった。その件に関して「独立をいいだすのはいいけれど、経済的に立ちゆくのか」といった疑義を呈する向きが見受けられた。
確かに、どんな「独立」でも、国の経済を支える基盤をどうやって確保していくか、というのは重要な課題。だから経済的基盤について指摘するのは間違っていないのだけれど、それに比べると指摘されていないなあと思った話が別にある。
それは何かというと、「国家という組織・体制を作ることの困難」。
つまり、どんな役所を作るか、その役所の組織はどうするか、どの役所にどういう仕事を割り振るか、そもそも役所でなすべき仕事に何があるか、役所の人材登用はどういう仕組み・制度のもとでやるか。などなど、お役所ひとつとっても、考えないといけないこと・やらないといけないことはいろいろある。
そして、国家というのは役所だけで回っていくわけではないから、学校制度にしろ、警察・軍隊にしろ (おっと、これは役所の一部か)、議会制度にしろ、そもそも国のトップを選出する仕組みにしろ、自国に最適と思われる仕組みを作っていかないといけない。
基本的には他国の仕組みをテンプレートにして引き写すとしても、それでそのままうまくいくとは限らないから、手直しが必要になる。ところが、引き写して体制を立ち上げる場面でも、それを後から手直しする場面でも、考え方や利害の対立は絶対に発生するから、それをどうやって解決するかという問題も出てくる。
実際、国が瓦解して立て直しに必死になっているアフガニスタンやソマリア、あるいは外部からの侵攻で体制がぶち壊されたイラクといった具合に、国の体制を作り直すのに苦労している事例はいくつもある。
よくよく考えれば、自分も 15 年前に会社を辞めて、フリーランスという形で「独立」したわけだけれど、これはすなわち、会社という組織が受け持っていたファンクションを、自分一人で全部背負い込むということ。
つまり、フリーランスで仕事をするということは、メインの物書きという仕事だけやっていればよいという話ではなくて、総務も経理も営業も一人でやらなければならないということ。すると、そういう作業をいかにして効率的にこなすか、そのためのシステムをどう構築するか、という課題ができる。
国家体制の構築と比べれば桁違いにスケールの小さい話ではあるけれど、「独立」して「それを切り回すための体制・システムを作る」という点では共通性があるわけで、実際、特に総務・経理がらみの仕組みを安定させるには、それなりに時間がかかった。
実はそれだけではなくて、独身・一人暮らしの身にとっては、さらに「家事全般」というタスクも加わる。そして、これらを全部一人でこなしつつ、かつ赤字にならない程度のインカムを確保できるだけの仕事をして、それで初めて、ちゃんと日常生活が回っていくことになる。
これ、けっこう大変である (自分でいっていれば世話はないけれど)
そこで「病気をして入院」なんていうイベントが発生すると、もう大騒ぎ間違いなしというわけである。実際、原稿書きは病室まで持ち込んで続けていたけれど、総務・経理系のタスクは盛大にスタックした。そもそも、この手の作業を効率化するために構築したシステム・インフラまで、病室に持ち込むわけにはいかないんだもの。
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それで何をいいたいのかというと、「独立」って簡単なことじゃないよ、という話。だから独立なんて主張するな、というわけではないけれど、独立をいいだすなら「経済的基盤の確保」だけでなく「組織・体制・システム作り」という厄介かつ重要な課題に直面する。
それをちゃんとやる覚悟、やれる目算が立ってから「独立」をいいだすぐらいでないと、後できっと苦労すると思う。そういう機能を他国に「おんぶにだっこ」すれば、それは単なるフリーライダーになってしまい、「独立」は看板だけの見かけ倒しになる。
実は、「優れた反政府運動の指導者」が必ずしも「優れた国家指導者」にならない理由って、この辺にも一因が求められるのかも知れない。「国家指導者」には組織や体制を切り回して、動かしていく能力が求められるわけで、それって反政府運動とは別次元の問題だし、「組織・体制に立ち向かっていた人が、今度は自分で組織・体制を維持していく」という逆転現象でもあるから。
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