Opinion : 気持ちの悪い持ち上げ方 (2014/9/29)
 

先日に発生した御嶽山の噴火に限らないけれども、何か事件があって自衛隊が出動すると、「自衛隊を出す必要はない」と主張する人と、「自衛隊でなければ務まらない」と主張する人が現れて喧々囂々になる。

特に Twitter の出現以降、思ったことをその場でパッと書いて流せるもんだから、リアルタイムでやり合ってフレームアップする事例が増えているような気がする。ただでさえネット上の喧嘩は不毛で犬も食わないのに (経験者談)、特に Twitter に場を移すと、その場その場の瞬間的な (言葉での) 殴り合いにしかならない。不毛だ。

そして「自衛隊が出てくるというと、とにかく否定したくなる人」vs「自衛隊のことをちょっとでもネガティブにいわれると噛みつきたくなる人」なんて図式になったら、もう不毛の極致。


軍用の装備が民生品よりタフにできているのは事実であるにしても、それとて限界はある。

たとえばの話。NBC 防護がなされた装甲戦闘車両なら、放射性物質で汚染された場所でも内部の乗員に累を及ぼすことなく行動できる (はず)。でも、頭上で原爆が炸裂したら、どんな装甲戦闘車両だって耐えられない。

なんて書くと「それは極端すぎる」と噛みつかれそうだけれど、要は「何事にも限度はあるし、設計時点で想定していないことまでは耐えられない」ということ。でも、常に頭上で原爆が炸裂するわけではないから、汚染された場所で行動できるだけでも有用性は充分にある。

「パソコン兵器」Toughbook にしたって、ありとあらゆる衝撃に耐えられるわけではなくて、MIL-STD-810 で規定している範囲なら耐えられますよ、という話。それと同じである。

火山の噴火に絡んで火砕流と歩兵戦闘車の話が出ている。「多少の有毒ガスや石などの飛来に耐えられる」なら分かるけれど、「火砕流そのものに突撃しても耐えられる」となれば吹かしすぎ。火砕流そのものと真正面からやり合ったら、どんな装甲戦闘車両でも勝てない。

そもそも、高温には耐えられても、土砂や溶岩が大量に流れてきたら押し流されたりひっくり返ったりするかも知れない。ただ、装軌車だから機動性はそれなりにあるし、「多少の有毒ガスや石などの飛来に耐えられる」のなら動く掩体代わりとして使える。そういう有用性はある。

となると要は、よくある「両極端に走った議論はあかん」という話になる。諸悪の根源は「ちょっとでも (ポジティブな | ネガティブな) 話が出ると叩きにかかる」という心理にあるんじゃなかろうか。「完全無欠ではないけど、こういう有用性もあるから活用すればいーじゃん」なら問題はないのに。


自衛隊の出動を擁護するのは個人の自由だから止めないけれど、そこで「自衛隊員が、まるで超人であるかのように持ち上げる」とか「自衛隊の装備が、どんな困難にも耐えられるスーパーメカであるかのように持ち上げる」となると、これはいくらなんでも気持ち悪い。

そこで誰かに突っ込まれて、後から「いや、あれはこういうつもりだったんだ」と留保条件を付け加えたところで、それは後出し。それならそれで、後から説明を足さなければならないような論陣を張る方にも非はある。それなら最初から、140 字という制約がある場で論陣なんぞ張るべきじゃない。

時間をかけて隙のない論旨を組み立てておいて、それをもっと適切な場に上げれば、後から留保条件を足すようなマネは必要ない。文字数の制約がない場ですら、ネット上でのコミュニケーションは行き違いや誤解が起きやすく、不必要なフレームアップにつながりやすいというのに、字数制限付きの場所で反射的なやりとりを繰り返すなんて愚の骨頂。

だから、個人的には「Twitter は議論の場にしない」と決めている。もともと、「筋道立てて背景説明まできちんとやって、起承転結の整った論陣を張るツール」ではないのだから。

「超人」「スーパーメカ」扱いして持ち上げるぐらいなら、むしろ、自衛隊 (に限らず軍事組織はそういうものだけど) が持つ、「市井の普通の若者を、国防の任に耐えられる人材に育て上げる仕組みやノウハウ」にこそ着目すべきだと思うのだけれど。実はそっちの方がすごいことですぞ ?

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