Opinion : プレゼンがヘタな技本 (2014/11/17)
 

先日、毎年恒例の「防衛技術シンポジウム」に行ってきた。もっとも最近だと、展示を見に行っているのか、オーラル セッションを聴きに行っているのか、はたまた同業者同士の顔合わせが目的で行っているのか、よく分からないところがあるのだが、それはそれとして。

今回、将来戦闘機に関するオーラルセッションを聴いていたら、とにかく「プレゼンがヘタだ」と思った。内輪向けならまだしも、外部の人間に自分達の活動の成果をアピールしようという場なのだから、もうちょっと上手にやってもらいたい。


自分もときどき、人前に出て喋る仕事をしている。たまには公共の電波で顔出ししてしまうこともある。

そこで「下を向いて原稿の棒読み」なんていうのは下策もいいところ。テレビに出て喋るのであれば、司会者、あるいは他の出演者の方を見ながら喋るか、そうでなければカメラの方を見て喋るかのどっちかだ。

講演やプレゼンみたいな場面も同じで、下を向いてモソモソ喋っていたら、それだけで景気が悪い。ちゃんとオーディエンスの方を見て、元気よく喋らないといけない。そこで、意図的にお笑いネタやおちゃらけを仕込むこともある (これは場合と相手によるけど)。

マイクが固定設置だとそういうわけにも行かないが、ワイヤレスのマイクだったら、ひとつところにとどまっていないで、壇上であっちに行ったりこっちに行ったり、なんてことになっても不思議はないところ。この人 ほど派手なことにはならないと思うけど。

おっと。壇上でひとつところにとどまっているか、それとも行ったり来たりしながら喋るか、なんていうのは芸風の問題だから「人それぞれ」なのだが、なんにしても大事なのは「ちゃんとオーディエンスの方を見て、自分の言葉で、自分の芸風で語りかけなければ」ということ。それで初めて、「話し手の言葉」になる。

もちろん、話し手が原稿の棒読みにならないで「話し手の言葉」で語っているからといって、それが間違いだらけだったり、粗相を連発したり、いわゆる失言や社会的にまずい表現を含んだりしたのでは問題がある。具体的に誰のこととはいわないけれども、「サービス精神満載でオーディエンスは大喜び、でも内容は…」という事例もある。

だから、もちろん「間違いがないように」「粗相がないように」ということに気を使う必要はあるのだけれど、そっちにばかり気を取られてしまい、今回みたいな「下を向いて原稿を棒読み」になってしまっていいのか。


ちょっときつい言い方をするならば、今回の防衛技術シンポジウムにおける「将来戦闘機」のオーラルセッションは、そもそも「納税者向けのプレゼン」になっていない。

何のために「防衛技術シンポジウム」というイベントを開いて、一般向けに出入り自由にしてオーラルセッションを開催しているのか。それは、「納税者に対して技術開発の成果や方向性をアピールすること」ではないのか。

それが結果として、技術研究本部による国産装備品の開発、あるいは要素技術の開発に対する国民の理解と支持につながり、間接的に予算獲得につながる (かもしれない)。そこまでいかなくても、技術研究本部に対する、ひいては自衛隊に対する国民の信頼感を形作る手段のひとつでもある (はずだ)。

アメリカだったら、予算を獲るには議会向けのアピールが大事になるし、それだからこそ、軍の首脳は頻繁に議会に呼ばれていろいろ発言している。でも、日本では制度・仕組みが違うから、それはないか。

もちろん、RDT&E のプロセスには相応の時間がかかるものだから、毎年のように新味のあるネタが出てきたりサプライズがあったり、なんてことは期待しないし、するべきでもない。しかし、だからといって、すでにオーディエンスが分かりきっていそうなことを棒読みされたのでは、誰も嬉しくないし、幸せにならない。

「ネットワーク化する方が有利な交戦ができます」「RCS が比較的高い側方に占位する方が、ステルス性を備えた敵機を探知しやすくなります」。んなこたぁ百も承知である。
オーディエンスが知りたいのはそんな話ではなくて、それをどうやって実現するのか、それが運用構想の仲でどう位置付けられるか、他国の動向と客観的に比較してどうなのか (そこで夜郎自大になってしまったのでは大問題)、ではなかったんだろうか。

技術開発というのは、それ自体が目的なのではなくて、「想定している脅威に対していかに対処するか、という作戦構想・運用構想を実現するためのツール」である。「こういう技術・製品ができたので、使ってみてください」では本末転倒。

「こういう脅威が想定されます。それに対してこういう対処を考えています。そのための技術的な capability gap としてこういう話があります。そこで、こんな研究開発を進めています。それが実現すれば、こういうメリットが期待できます。結果として国の護りが強まります。だから予算くださいね・応援してくださいね」と (多少の演出付きでもいいから) やるのが、一般向けのプレゼンというものじゃないんだろうか。

財務省の人に予算要求資料の説明をするのとは違うのだ。いや、それだって先日のオーラルセッションみたいなのではアピール不足ではないか ?

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