Opinion : ウォーバードの維持保存に関する徒然 (2014/12/1)
 

自分は (行かなかった | 行けなかった) けれど、先日、さいたまスーパーアリーナで「里帰り零戦」の展示があった由。以前に所沢で別の機体を展示したときには見に行ったけれど、エンジン始動は見ていない。

そんなこんなで、静止状態ではない零戦は見たことがない。静態保存機なら、浜松広報館の天井から吊されたやつを何度も見ているけれど。その他のウォーバードというと、アメリカに行ったときに NASM の展示品は見ている。現物を見たことがあるのは、それぐらいか。

それはともかく。零戦里帰りみたいなイベントがあると、お約束のように「アメリカなどではウォーバードの保存に熱心なのに、日本では…」という話が出てくる。あるいは、既存の保存機について「保存状態が悪い」とか「日本に持ってきてから保存状態が悪化した」とかいう類の話が出てくるのもお約束。


ただ、実際にウォーバードを保存しようとすると、これは簡単な仕事ではない。

何をするにしてもタダではできないのだから、どういう形であれ、資金集めは必要。すると、他人様の浄財を預かって使うのだから、会計監査や収支報告書のリリースという話は不可欠。(すでに寄付を集めている個人や組織がその点でいい加減だ、なんていうつもりはなくて、一般論として忘れないように、という意味で書いた)

ただ、おカネを集めること以上に、クリアしないといけないハードルが多いと思う。機体の確保・復元・状態維持 (飛行可能な状態にすることも含む) だけでも大変だが、それだけの話ではなくて。

まず「何のためにウォーバードを保存したり飛ばしたりするのか」というコンセプト、目的の明確化が必要ではないか。それが広く受け入れられて指示されないことには、人もおカネも集まらない。

煎じ詰めれば「飛行機なんだから、飛んでいる姿を見せるのが本筋」ではあるのだけれど、それだけで多くの人を納得させられるか。となると、「日本の技術者が精魂こめて作り上げた機体には、技術遺産としての価値がある」とか、もうちょっとナショナリスティックに「日本人の誇り、精神的支柱として」とかいう理由が出てきそう。

もっとも、一方では「負け戦に終わった戦争を思い出させるものなんて見たくもない」とか「戦争につながりそうなものはすべて、目に見えるところから排除しないと気が済まない」とかいう人もいるから、国民的コンセンサスにまで持って行くのは、さすがに無理。

とはいえ、せめて保存を求める人の間でぐらいは、明確な旗印の策定と方向性の一致が必要。もちろん、なるべく広い範囲で受け入れられそうな内容で。となると、あまりナショナリスティックな方向に走ったらダメっぽい。

そして、場所の問題。静態展示だけでもそれなりにスペースが要るし、飛ばしてみせるとなれば、なおのこと。いっそ、静岡空港あたりが「古典機保存 & フライトのメッカ」になってしまえば、施設を有効活用できる上に人が集まって、一石二鳥かも (←冗談半分、本気半分)

あと、動態保存にしろ静態保存にしろ、恒久的に維持・継続できるかどうかという問題がある。最初は新鮮さがあるから人もおカネも集まるかもしれない。でも、長期的な話になると難易度は上がる。飛行機に限った話ではないけれど。

また、実際に飛ばすとなれば当局の承認や理解が要る。そこで、技術的な話は当然のことながら、場所・資金・人材の確保、そして維持管理・整備の体制作りや長期的な見通しの明確化しているかどうかが効いてくるのではないかと思える。


そりゃ自分だって飛行機好きの端くれ、写真でしか見たことがない飛行機の現物を見られるとなれば血が騒ぐ。たとえ静態保存の動かない機体であってもそうだから、実際に飛んでいる機体となれば、なおのこと。

だから、1997 年の "Golden Air Tattoo" は楽しみにしていたのだけど、直前に祖母の急逝という出来事が発生して頓挫した。飛んでいる "FIFI" を見られるチャンスだったのに… と地団駄を踏んだものの、事情が事情だけに仕方ない。

だから、自国でウォーバードを見る機会ができれば嬉しいとは思う。ただ、手放しで「やれやれ」とはいい辛い。いきなりフライアブルなウォーバードが日本の空を乱舞する光景を日常化するのは難易度が高すぎるから、まずは状態の良い静態保存機を確保・維持する段階を確実なものにするのが無難かなぁ。

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