Opinion : ネーミング考 (2014/12/29)
 

2014 年を締めくくる大笑いニュースは「生活の党と山本太郎となかまたち」なる党名の出現であった。個人名が入っているのは個人的にどうでもいいとして、「なかまたち」が一気にズッコケ感を増大させている。

いわゆる並行在来線転換三セクの中でも、「あいの風とやま鉄道」と「えちごトキめき鉄道」は、個人的にはいただけない。これをズッコケ感というのは酷な話かも知れないけれど。もちろん、当事者があれこれ考えてひねり出したネーミングなのだろうとは思うが、なんというかこう「背中がムズムズする」のである。

そうこういっていたら、今度は江差線を引き受ける新会社が「道南いさりび鉄道株式会社」になるとのニュースが。「えちごトキめき」ほどではないが、これもまた背中が微妙にムズムズする。

「しなの鉄道」「青い森鉄道」「IGR いわて銀河鉄道」あたりでは、特に「背中がムズムズ」はしなかったのだが、最近の並行在来線転換では状況が違う。時代背景が変わったのか、当事者の意識が変わったのか、なんなのか。

さすがに歴史ある大手ではそんなことはない… かと思うと、さにあらず。いうまでもなく「スカイツリーライン」に続いて「アーバンパークライン」を繰り出した東武鉄道のことである。何でもカタカナにすりゃあいいってものではない。


そういえば、「キラキラネーム」という言葉が広まってしばらく経つ。この言葉自体、実態を隠蔽してオブラートを被せた表現だと思っているので、「DQN ネーム」という方がしっくり来る。ただ、このネットスラングが広く人口に膾炙しているとは思えないし、膾炙するのもどうかと思うので、難しいところ。

並行在来線三セクの「背中がムズムズする社名」にしろ、いわゆるキラキラネームにしろ、共通するのは「思い入れ過剰」ではないかと思う。

もちろん、社名にしろ子供の名前にしろ、そこには関係者のさまざまな思いが詰まっているもので、それは今も昔も変わらない。ただ、昔はその「思い」を短く凝縮してまとめていたものが、最近では凝縮もなにもしないでストレートに、モロ出しにしてしまっている、という違いはありそう。

並行在来線三セクの場合、ローカリティというか、地元色を強調しようとして、地元の名物を社名に盛り込もうとして、それで「滑った」感があるのではないか。ましてや「トキめき」みたいにダジャレにするのは言語道断。

会社の名前というのは一種の公器であって、そこにダジャレを持ち込むこと自体、「軽さ」を感じさせてしまって好ましくない… と思うのは、自分が年をとったせいだろうか ? 日常会話の中で、ちょっとしたズッコケを演出する手段としてダジャレを飛ばすならともかく、それを社名にするなと。

ただし、この手のネーミングが多発する理由は、先に「思い入れ過剰」と書いた件だけではなさそう。つまり、さらにきつい書き方をすれば「名付け側の自己満足」でしかないと思う。こんなことを書くと、非難囂々になるかも知れないけれど。

この「名付け側の自己満足」は、いわゆるキラキラネームにおいて、一般的な漢字の読み方を意図的に逸脱させるところにも通じるのだろうか ?


ついでに東武の件についていえば、「そんなに東急になりたいのか」と思う。地下鉄を挟んだ三者相互直通が始まった後は特に、何かと比較される度合が強まったのは確かだろうけれど。

でも、カタカナ書きにすればイメージアップ、カタカナ書きにすればおしゃれ、ってものでもないだろうに。カタカナのネーミングや、沿線に誘致した起死回生の名物施設なんていう飛び道具に頼らず、もっと地道な取り組みが必要であるように思う。少しは阪急を見習ってみてはどうか。

そういえば、四半世紀ほど前に「CI ブーム」というのがあった。CI といっても「主変換装置」ではなくて Corporate Identity の方。で、社名を改めるとともにロゴも新しくして、それを告知する CM をガンガン打つのが流行っていた。それで本当に identity を確立できたのかどうか、ちょいと気になるところではある。

ヤマハみたいに、すでに定着していたブランドを社名として使うことにします、というのであれば、それはなるほど identity の確立であったろうけれど。すでに当時の時点でも、「楽器製造株式会社」の枠からは盛大に逸脱していたのだし。

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