Opinion : 一年待て (2015/3/23)
 

先週、北陸新幹線の上り初列車に乗ってきた。普通、「初日」と「最終日」は喧噪に巻き込まれるのが分かっているから避けるのだけれど、今回は事情があってゴニョゴニョゴニョ…

と、それはともかく。

開業から一週間で「北陸新幹線の利用者が在来線時代と比べて××万人増加した」とか「北陸新幹線、早くもガラガラ」とか、いろいろなところで、いろいろなことをいう人がいる。どっちにしても、気が早過ぎはしないか。


なにも新幹線に限らず、新しいモノができたり売り出されたりすれば、初物人気で最初はワッと盛り上がるもの。目新しいもの、新鮮さがあるものが人目を引くのは当たり前の話だし、また、それを当て込んで煽る向きも多数いるわけだから。

以前にも書いたことがあった新東名なんか典型例で、本線はどこも渋滞していないのに、SA・PA の入口だけ大渋滞、なんていう珍妙な光景があちこちで見られた。今ではさすがにそんな馬鹿げたことはなくて、普通に落ち着いて利用できることが多いし、そうでなければ困る。

新東名で開通当初と比べて大して変わっていないと思われるのは、「静岡県警高速隊の入れ食い状態」ぐらいじゃなかろうか。このために新東名を作ったんじゃないか、と嫌味をいってみたくなるぐらい :-)

逆に「早くもガラガラ」の件についていえば、この手の逆張り発言をして揶揄してみたがる人だって確実に存在する。たまたまなのか定常的なのかはともかく、空席だらけの列車があれば、その手の人がダボハゼのように食らいつくのは自明の理。

ただ、逆張り発言をしていい気分になれる、あるいは注目されるのは、その対象が世間の耳目を引く存在だからこそ。なんであれ、それが日常的なものになれば、逆張り発言をしても話題性に欠けて、面白くない。自然と、意図的な逆張り発言 (というか、逆張り先にありきの発言) をする人も減ると思われる。

だから、タイトルに書いたような話になる。つまり、持ち上げるにしろ叩くにしろ、まずは一年待てと。たいていの場合、それぐらいの時間が経過すれば「特別なもの」から「日常的なもの」になって、落ち着くべきところに落ち着くだろうから。

あと、交通機関の場合、意外なところに影響が波及することがある。北陸新幹線が長野まで開業した後で、首都圏と白馬方面を行き来するルートが激変して、中央線ルートよりも新幹線とバスを乗り継ぐルートの方がメインになってしまったとか、福岡と宮崎の間を行き来するのに新八代でバスに乗り換えるルートが登場したとかいう類の話がそれ。

こんな具合に「そんな手があったのか」という類の話が出てきても、それが広まって定着するには、なにがしかの時間がかかる。だから、やはり「しばらく待て」という話になる。一年かどうかはともかく。

反対に、当初に喧伝された話が空振りに終わることもある。東北新幹線のいわて沼宮内駅が「安比高原方面への玄関口になる」ハズ だった話、どれだけの方が覚えているだろう。結局、今も安比に行くバスは盛岡駅から出ている。


そんなこんなで、プラスの話にしろマイナスの話にしろ、定着して状況が安定するまでには相応の時間がかかるのだから、初日あるいは一週間ぐらいで「わあわあ」いってみても、時間と手間の無駄なんじゃなかろうか。

だいたい、新手のもの、新味を感じさせるものが出てきたときには、必要以上に騒がれることが多い (そしてしばらくすると忘れ去られる)。

「○○の衝撃」とか「○○が△△を変える」とかいう類のタイトルをつけた書籍や記事は、それこそもう掃いて捨てるほど存在するが、そのうちどれだけが本当に「衝撃」や「変化」をもたらせたのか。そう考えれば、新鮮味やインパクトが強い段階で騒ぎ立てることの無意味さは理解できるんじゃないかと。

だから「一年待て、話はそれから」ということになる。それぐらいの時間が経過して、インパクトや衝撃や変化が持続していれば、それは本物だと思うけれど。

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