Opinion : パリ航空ショーを受けての徒然 (2015/6/22)
 

航空ショーや武器展示会といったイベントがあると、メーカー各社の発表ラッシュになるのが通例。いわく「新製品を開発しました」、いわく「ローンチ カスタマーへのデリバリーを開始します」、いわく「どこそこのカスタマーに完納しました」、いわく「どこそこから大口受注を獲得しました」etc, etc。

折から、先週はパリ航空ショーがあった。F1 ならモナコ GP、航空ショーならパリ… というぐらいの大イベント (とはだれも言ってません。たぶん) だけに、もう発表ラッシュになって大変じゃないか、と覚悟していたら…

あれ、今回はなんだか様子が違う。さすがに皆無ということはないけれど、普段と比べると、あるいは他の同種イベントと比べると少ない気がする。

去年の Eurosatory なんか、ネタは多かったし、自分は身体を壊して入院した直後だったしで、ニュースを追いかけるのに四苦八苦したものだけれど。それと比べると、同じフランスでのイベントなのに、なぜこうなった。


民航機は話が別である。毎日のように各社が競い合うように「受注しました」発表の嵐をやっていた (らしい) し、MacOS じゃなくて三菱の方の MRJ を初めとする日本勢も、出展の一角に加わっていた。

でも、ミリタリーの方はどうも話が違う。そもそも、花形の戦闘機からして、Rafale と FC-1/JF-17 しかブツがなかったという話まで聞こえてきた。この手の展示会があると発表ラッシュになるのが通例のイスラエル勢も、なんか静か。

こうなったらもう、環球時報あたりで「伝統のパリ航空ショーで、戦闘機に対する注目を二分した FC-1/JF-17 !」と書き立てるチャンスだったと思う (ウソはいってない)

と、さんざん引っ張ってみたけれど、盛り上がらないのは当たり前で、開催当事国のフランスならびにその御近所に、大口の商談がない。商談がないのに、わざわざ出展料を払って、人とモノを送り込んで、パンフレットを配って宣伝しようという物好きなメーカーはいない。

展示会で宣伝するぐらいなら、地元メーカーを取り込んで「当社の製品が採用されたら、こんなに地元におカネが落ちます」とやる方が宣伝効果が上がりそうである。(ちょうどデンマークがそんな状況)

それでも以前はまだ業界に余裕があったのか、「それを売り込んで誰が買う ?」という宣伝をしていたメーカーがあった。わざわざ「アクティブ スカイフラッシュ」とか「ALARM」の日本語版パンフを作ってばらまいていた British Aerospace (当時) が典型例だけれど、未だにあれは謎である。

商談のチャンスがあるとみると、ちゃんとメーカーが乗り込んできて盛大に宣伝するのは、他の地域の展示会で立証済み。それがないのは、インカムにつながりそうにないと思ったからだと考えるのが妥当。これ、航空宇宙・防衛の分野に限らず、どんな分野の展示会にも言えることではあるけれど。


そもそも、西欧だけでイギリス (Farhborough)、フランス (Paris)、ドイツ (ILA) と展示会が三つもあって、その割にミリタリーの方は市場がシュリンクしているのだから、主催する側も大変だろう。でも、先頭に立ってイベントを止めるわけにもいかないし、「止めるなら他所が先に止めてくれ」というのが本音ではないかと思う。誰だってそう思う。

といって、ミリタリーを止めて民航機専門にするのも、それはそれでイベントのシュリンクであるし。なにやらチキン レースの様相を呈してきていないかと、外野はそんなことを勝手に思ってしまった次第。

しかし、よくよく考えるとアジアだって、シンガポールと珠海があって、さらに東京でときどきやっている (あ、ソウルもあった)。だいぶ離れたところでインドもあるけれど、あれは対象地域が違うから措いておく。としても、F-X という大口が決着した現在、民航機はともかくミリタリーの分野で、果たして日本がどれだけ市場性があるとみなされるかが課題になるかも。

なんて書くと「必要なモノがあれば国産化するんだから、海外勢は来なくてよろし」と攘夷の志士みたいになって息巻く人が出そう。

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