Opinion : 輸入品 vs 国産品 (2015/7/13)
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某新聞を引き合いに出すまでもなく、基本的に飛行機・軍事・鉄道あたりの世界では、「国産品スゲー」とやっておけば、まぁ文句はいわれない。手っ取り早く部数や PV を稼ぎたければ、これがもっとも安上がりで手間がかからない。
ただし、それが事実その通りなら別にかまわないけれども、事実に反していたり、妄想や願望が先行していたりすると、さすがに文句をいう人が出てくる (こともある)。
反対に、「国産品よりも、競合する海外製品の方が優れている」なんて書いてごらんなさい、たちまち冷静さを失って噛みつく人が出てくることが少なくない。
ちなみに兵器分野の場合、「輸入品」と「日本国内でライセンス生産している海外製品」は別扱いであり、後者は国産品に準じたものとして扱われる :-p
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これは日本国内に限った現象ではなくて、どこの国にでも多かれ少なかれ、見られる傾向ではある。一般市民、あるいはそれを対象とする "愛国的" マスコミが「我が国の国産品スゲー」とやるのはよくあることだが、時には軍や政府の関係者までが一緒になって乗ってしまうケースもあるのは、さすがにどうかと。
ところが日本において面白いのは、「国産品 > 輸入品」という定式が当てはまらない分野がいくつかあること。その典型は自動車評論の分野だけど、腕時計やファッションの分野でも似たような傾向はありそう。
クルマの場合、「お、国産車を褒めてるな」と思ったら、最後に「…しかしまだ、輸入車の○○には追い付けていない。あちらはもっと先を行っている」なんていうオチをつけられることが、ままある。
自動車としての基本性能 (つまり走る・曲がる・止まる) に関する評価が拮抗していたとしても、「味」という、分かるような分からないような尺度を持ち出すという最終兵器もあるから便利だ。
もちろん、全部が全部そうだというわけではないにしても、全般的な傾向として「外車びいき」な傾向はあると思う。といっても、その場合の「外車」とは欧州車、なかんずくドイツ車を指すことが多いわけで、あとはフランス車・イタリア車が加勢することがあるぐらい。
そこでアメ車や韓国車や中国車 (おいおい、日本に後二者はほとんど入ってきていないだろ) が「国産車が追い付けていない」比較対象にされることは、まずないと思われる。そういう意味では、「輸入車」というより「特定輸入車」、「外車」というより「特定外車」というべきなのかもしれぬ。
なんでそういう現象が起きるのか。国産品がどうあがいても輸入品に追いつけないほど実力不足なのか、メーカーの商品企画・商品作りに対する立ち位置やフィロソフィの違いなのか (これは間違いなくあると思う)、はたまた売り手のブランディングや宣伝のうまさなのか (これも間違いなくあると思う)。
といったところで思い至ったのは、「趣味性」の度合。趣味性あるいは個人の好みに依存して選ばれる傾向が強い商品で、かつ、日本国内で普通に接したり入手したりできること。クルマも腕時計もファッション関連も、この条件を満たしている。そこで輸入品を持ち上げておけば、趣味性を求めたり海外の高級品への憧憬を抱いていたりする読み手も喜ぶ、という構図があるんだろうなあと。
クルマについては「安くて丈夫で使い勝手のイイ仕事の道具」に徹するというシーンもある。それなら輸入車よりも国産車の方が強い (ハイエースやプロボックスを見よ)。でも、それは趣味性を完全に無視している話である。
鉄道車両も趣味の対象ではあるけれど、日本で海外から持ってきたものが使われているのは、路面電車や一部のコンポーネントぐらい。自分が柱にしているフィールドのひとつである高速鉄道の分野では、「日本国内で普通に接したり入手したりできる」という条件は満たされない。よって、TGV でも AGV でも ICE でも AVE でも ペンドリーノ一族でも、「海の向こうの遠い存在」以上にはなり得ない。
その昔、TGV-PSE が 260km/h 運転を始めて新幹線の最高速度を一気にぶち抜いたときには、さすがに「なにぃ !?」となった向きがいたかも知れないけれど、実際、TGV-PSE の初列車を取材に訪れたマスコミの大半は、日本勢だったそうである。
ところが、今は速さ比べだけなら日欧とも拮抗している。となると、持ち上げるにしても落とすにしても、なんとなく力が入らないことになりそう。
ただ、どっちがいいとか悪いとか優れてるとか劣ってるとかいう話を抜きにして、思想の違い・メカ的な違いに着目して欲しいなあと思うことはある。他所の国のものと比較することで、自国のモノの良し悪しを見る尺度が充実すると思うから。
ともあれ、なにも鉄道に限ったことではないけれど、いちいち勝ち負け・優劣をつけなければならないというものでもあるまい。「なんでも勝ち負け・優劣をつけないと死んじゃう病」にかかっている人、いそうだけど。
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