Opinion : MRJ の初飛行とターミナル閉鎖の話 (2015/11/16)
 

11 月 11 日に MRJ の初飛行があり、取材に行ってきた。

初飛行後の記者会見でも話が出たし、その前からあちこちで賛否両論だったのが、初飛行を予定した週すべてについて、県営名古屋空港がターミナルビルの展望デッキなどを閉鎖した措置。

実際、現場に行ってみると「展望デッキは閉鎖中」とか「見学はできません」とかいう看板・横断幕の類がビシビシ出ていて、さらに看板を持った警備員まで各所に立っているという状況。プレスだって、事前に申請して受け取っていた通行証がなければ入れない。

パッと見た感じ、批判の声としてよく見かけたのは「ファンを無視している」とか「こういうときこそファンを増やすべき」とか「子供達に夢を与えるために」とかいった類のもの。

対して擁護の声としては「混乱回避が優先」「民航機の利用者に迷惑がかかってはまずい」といったところか。自分もこちら側である。


もちろん、根っこの部分にある「混乱防止」だけでも充分に閉鎖の理由になる。もしも展望デッキなどを平常通りにオープンするとなれば、人が大量にあふれかえったり、場所取りのために何日も前から徹夜する人が現れたり、罵声大会になったりしたであろうことは想像に難くない。

そして、見物人のために駐車場が埋まってしまったり、周辺の道路が混雑したり、路駐が続発したりすれば大迷惑である。愛知県警が、空港周辺における路駐の取り締まりで入れ食い状態になったかどうかまでは知らないけれど。

B.787 の初号機 (ZA001) が中部国際空港に飛来したときには、平日だというのに展望デッキが人で埋まっている様子が、遠方からでも見て取れた。それでも中部国際空港の場合、電車で行くという手もあるから、駐車場や路駐の問題についてはマシだと思われる。しかし、クルマとバス以外に足がない県営名古屋空港では話が違う。

といったところで本題。

子供達が実際に飛んでいる飛行機、あるいは走っているレーシングカーなんかを見て「自分も作ってみたい」といって技術者を志すのはウェルカムだし、実際、そういう話はあるだろうと思う。それだけ見ると「子供達に夢を与えるためにも公開すべき」という論には理がある… ように見える。

ただし、たとえば飛行機の場合、そのきっかけとなるイベントは果たして「初号機の初飛行」でなければならないのか。その後の飛行試験で飛んでいる飛行機、あるいは就航した後の飛行機ではいけないのか。それでは夢を育む結果にならないのか。初物でなければ触発されないのか。初物でなければ感動はないのか。

そういう議論があってもいいんじゃないか。とはいいたい。

実際、記者会見の席で三菱の広報担当者は「機体を公開する場を設けることも考えたい」という趣旨のことを話しておられた。実機を一般向けに見せることの意味は、当事者だってよく分かっているのだ。もっとも、試験飛行で忙しいだろうから、すぐに実現できるかどうかは分からないけれど。

しかし、初飛行をつつがなく行うこと、その際に民航機の利用者に迷惑をかけないこと、というのは別の問題。子供達に夢を与えるために、という大義名分の下、空港に人が集まり過ぎて混乱したり、民航機の利用者に迷惑がかかったりしたら、めでたいハズの初飛行にミソをつける結果になってしまう。


といったところで、ふと思ったこと。

個人的にはもともと、子供をダシに使う言説、あるいは子供を前面に押し出した政治的運動に対して根強い不信感がある。以前にも指摘したように、子を持つ母親を言いくるめるには「子供達の将来のために〜」という殺し文句が強いという事情もある。

その手の主張よりもむしろ、「近所の小学校に初飛行のスケジュールを知らせておいて、見られる機会を作った」という話の方にホッコリした。知らせてもらったときに、授業を中断して MRJ の初飛行を見せると決めた先生もえらいと思うが。

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