Opinion : 世代間比較の有無 (2016/2/15)
 

何かモノを売ろうというときに、ライバル製品を古臭く見せる宣伝手法がある。もちろん、機能・性能・価格面の優越をアピールする手もあるし、それも広く使われているものの、イメージ広告として考えると「うちは新しい、ライバルは古い」とやるのも効果はありそう。

という考えがあったのか、「他所とは世代が違うのだよ」とアピールする効果を狙ったのか。その一例が「第五世代戦闘機」なのかもしれない。

実のところ、"5th Generation FightersTM" という言葉をアピールしている Lockheed Martin Corp. は、うまいことやったもんだと思う。登録商標にしようとしたぐらいだから、マーケティング上の狙いがあったのは確かであろうし。

注 : 複数形の "Fighters" である。米商務省の登録商標データベースで確認した。

なにしろ、ライバル社が次々に釣られて「うちの戦闘機は第○世代」とやるようになってしまった。ライバル社がそのことを自覚しているかどうか知らないけれども、結果的に LM 社が作った土俵の上で踊っている。いや、土俵だから「相撲をとろうとしている」か。


ところが不思議なことに、戦闘機以外の武器では、メーカーが先頭に立って「第○世代」をアピールするような現象が起きない。たとえば「第五世代自動小銃」「第五世代手榴弾」「第五世代軍用トラック」「第五世代ソナー」なんて聞いたことがない。

技術面・仕様面の顕著なブレークスルーがあるのは戦闘機だけ… というわけではないから、これは違うと思う。たとえば、防空艦の分野は「イージス以前」と「イージス以後」に分けていいように思える。でも、「第○世代」なんて言葉は出てこない。

そこで次に考えたのが、位置付けというか、重みの違い。

戦車がスターになれるのは、やはりランドパワー国。艦艇がスターになれるのは、当然ながらシーパワー国。そして、すべての国がランドパワー国というわけではないし、シーパワー国というわけでもない。

ところが、戦闘機はもっと普遍的。陸でも海でも、国家同士の戦争であれば基本的に「制空権がなければ戦争に勝てない」という認識はある。それだけ戦闘機は「重み」があるし一般的な関心も強いから、世代分けによる優劣比較が受け入れられやすいのだろうかと。

優秀な戦闘機を持っているということは、軍事力の強さを示すひとつの指標。だからこそ、業界関係者だけでなく一般市民のレベルでも、ネット上で戦闘機のスペック論争を展開して、他国のネチズンと口角泡を飛ばし合うようなことが起きる。

でも、自分で書いてみて思ったけれど、なんとなく無理があるというか、説得力に欠けるというか。国防上の重みよりも、金額が大きくて目立つことの重みの方が、まだしも納得されやすそう。


そういえば。戦車では世代分けがなされることがあるものの、あまり定着しなかった。これは、「世代分けをして新旧の違いをアピールしなければならないほど、新製品が出ていない」というのが本当のところのように思える。

となると、戦闘機の業界に限って世代間比較が起きる原因は「他所の業界では、誰もそういう比較をしようと思わなかった」「他所の業界では、世代間の比較を展開するほどの新製品が出てきていなかった & 商戦が激しくなかった」というあたりが真相なのかも。

という身も蓋もないオチをつけたところで、おしまい。

Contents
HOME
Works
Diary
Defence News
Opinion
About

| 記事一覧に戻る | HOME に戻る |