Opinion : 電子書籍考 (2016/3/7)
 

最近、仕事用に使っているノート PC (Let's Note シリーズの CF-J10) をリプレースしようかと考えている。さすがに馬力不足を感じる場面が出てきたのと、ストレージのキャパ不足が主な動機。

それに、もうだいぶ扱き使っているから、そろそろガタが来ていてもおかしくない。一年半前の入院中には、この CF-J10 が「生命線」といってよい存在だったから、故障したり壊れたりしたらどうしようか、とヒヤヒヤしていた。

といいつつも、ここまで酷使に耐えてくれているのだから、さすが「タフブックの妹」である。当然、「次も Let's Note にしよう」と思うことになる。お値段は安くないけれど、商売道具は信頼性とタフネスが第一。


ところが、いざリプレースしようとすると、ひとつ問題がある。何かというと、Jane's Defence Weekly のデジタル版。この手の電子版は著作権管理の仕組みが関わっているから、ビューアをセットアップし直してデータを別の PC からコピーすれば読めます、というわけにはいかない。

しかも忌々しいことに、Zinio.com はある日突然「もう Jane's Defence Weekly の扱いは止めます。他の電子雑誌の購入に使えるクーポンを出すから勘弁してね♪」といって、さらっと手を引いてしまった。

モノがないのに契約を続ける理由はないから、当然、契約は打ち切り。よって、新しい PC にビューアをセットアップし直してダウンロードのやり直し、というわけにも行かない。第一、Zinio Reader は Ver.4.x になってから、おっそろしく使い勝手とレスポンスが悪い。どこのアホが、わざわざ Adobe Air を使わせようなんて考えたんだろう。ページめくりにいちいちアニメーション効果なんぞ要らんがな。

そういう経緯により、過去の JDW の記事を参照したい場面が発生したらどうするのか、というところが、ノート PC 代替の足を引っ張る事態になってしまった。そのうちいずれ、仕事用本務機のデスクトップ PC でも同じことが起きる。

とりあえず JDW デジタル版を切り捨てた後は紙媒体に戻して、IDR (International Defence Review) を購読中。紙なら、いつでもどこでも読めるし、故障しないし、電源は要らないし、読むためのハードウェアだの著作権管理だのという話も関係ない。

というわけで、「保存性を求められる資料は紙で持たないとアカン」という結論になってしまった。テキストや PDF や JPEG 画像みたいに、汎用性があって、ファイルをコピーするだけでどこでも読めるというなら話は別だけど。


そもそも、電子書籍というモノがやたらと騒がれるようになったのはいつ頃からだろうか、と考えると、やはりスマートフォンやタブレットが流行りだした頃からだという結論に落ち着く。

自著が電子書籍でも出ていることがあるのに、こんなことを書くのは心苦しくもあるのだけど。

ハードウェアやオペレーティング システム、あるいは電子書籍のフォーマットや著作権管理のシステムが何であれ、「プラットフォームが変わったら、読めない可能性がある」「供給元が扱いを止めたら読めなくなる」「供給元が消えたら、もはやこれまで」という宿命だけは解決できていない。

実際、華々しく立ち上げたものの、後になってひっそりと (?) 消滅してしまった電子書籍のサービスもあるわけで、上の話は決して杞憂とはいえないと思う。

だから、極端なことをいえば「読み捨てられるようなものなら電子書籍でもいいけど、長期保存していつでも参照できるようにしたいコンテンツについては、電子書籍は止めとけ」という考えに落ち着いた。

もちろん、場所をとるとか重いとか検索性が悪いとか、紙媒体には紙媒体なりのネガがあるにしても、何かのきっかけで読めなくなるよりマシである。紙媒体なら「紙屑になる」という形容がなされるところだけど、電子媒体だと何といえばいいんだろう。ビット屑 ?

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