Opinion : 疑問が残る北斗市の報道対応 (2016/3/28)
 

25-26 日にかけて、北海道新幹線開業がらみの取材に行ってきた。それに関連して、どうにもこうにも首をひねらざるを得ない話を聞き込んだので、今回はその話を。


北海道新幹線の開業に合わせて、北斗市では新函館北斗駅に隣接する無料駐車場を設置した。新幹線利用者に対して無料開放するというもので、3 階建て (3 階は屋根なしの屋上) である。

北海道新幹線の高架橋は、その多くが防音壁に遮られていて、走り写真を撮れる場所が少ない。新函館北斗駅の近辺も御多分に漏れないが、件の駐車場の 3 階は例外的に俯瞰撮影ができる。しかも駅に隣接しているから、駅から出入りする列車を撮るには格好の場所となる。

ましてや開業日となれば、「駅に到着する初列車」「駅から発車する初列車」といった美味しい画を撮れる。当然、ここから取材したいという人は出てくる。

ただ、件の駐車場は北斗市の施設で、JR 北海道の施設ではないから、JR 北海道の広報担当者が関知するところではない。窓口は当然ながら北斗市となる。問題はここから先。

なんでも、北斗市の記者クラブがこの駐車場に目をつけて、屋上を取材に使いたいと申し入れて許可を得たとのこと。ただし屋上全域を使うわけではなくて、線路に面した側のうち東端寄りの一部である。

そこで問題。その、記者クラブが使うことになったエリア以外の扱いはどうなるか。記者クラブ以外の媒体が自由に利用できるのか。一般利用者が立ち入っても良いのか。そういう疑問は当然ながら出てくる。だいたい、記者クラブ以外の媒体だってたくさん来ているのだ。

ところが、記者クラブ以外の媒体が北斗市に問い合わせると「そこの話は記者クラブに訊いてくれ」という。そこで記者クラブの仕切りを担当しているとされた某社の人に訊くと「北斗市に訊いてくれ」となる。要するにたらい回しで、誰も責任を持って仕切ろうとしなかったのだと。

北斗市にしてみれば、日頃から付き合いがある記者クラブの意向は無視できないだろうし、わざわざ使用を断って敵に回す理由もない。そこで御機嫌を損ねることになったら、後々まで困ってしまう。

だから便宜を図ることになっても無理はないけれども、それならそれで「使って良いエリアはここからここまで」と明示するとともに、それ以外のエリアの扱いについても明確な方針を定めて告知するべき。

記者クラブ以外の報道関係者が、記者クラブにアサインした以外のエリアを使えるのか使えないのか。それを明確にしないと混乱の元だし、実際、たらい回しにされて困惑した人が何人も出たそうだ。

だいたい、記者クラブというのは口の悪い言い方をすれば「情報流通を独占するお仲間クラブ」みたいなもの。だから、アサインした場所以外の扱いを明確にしないと、「できることなら、美味しいエリアを独り占めしたい」なんて考えることになっても不思議はない。

実際、開業前日には記者クラブ所属社の人が、屋上に出る扉を封鎖して「立入禁止」の貼紙をしていた由。肝心の開業当日には、それはなかったそうだけれども。


もちろん、野次馬が押し寄せて本来の新幹線利用者が入れなくなったのではシャレにならないから、初日になにかしらの規制が入るのは致し方ない。MRJ 初飛行のときの県営名古屋空港と同じである。

ただ、それならそれで、どこからどこまでをどう規制するのか明確にして、関係各方面に示達しなければならない。それをやらないと混乱の元。そして、仮にも北斗市の施設なのだから、北斗市が責任を持って仕切るべき。その仕切りを他人に投げてしまったところに最大の問題がある。

以前なら、報道対応という新聞社とテレビだけ考えていればよかったけれども、近年では Web 媒体がいろいろ出てきているし、「鉄道ネタは売れる」といって参入してくる媒体もいろいろある。報道対応を受ける側の意識が、そういう状況の変化について行けていないのかも知れない。

というのは精一杯贔屓目に見た場合の話で、反対に、「単に、悪役になりたくない、責任をとりたくないってことなんじゃないの」という見方もできる。真相がどの辺にあるのかはともかく、施設の主である北斗市が明確に責任を持って仕切らなかったのは問題じゃないか、とだけはいいたい。

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