Opinion : マイルストーンとゴール (2016/4/25)
 

航空各誌の編集部をヤキモキさせていた X-2 が、ようやく進空した。もちろん、それはそれで目出度いニュースなのだが、初飛行したというだけで舞い上がってしまうのは、「そりゃ違うだろう」と思う。飛行のニュースだから舞い上がっちゃうのかも知れないけど。

以前に MRJ がらみで 書いた 通り、飛行試験は初飛行の段階から始まっているし、その飛行試験を最後まで消化しないと話は先に進まない。

そして、MRJ みたいな民航機であれば、それが実際にエアラインで就航して、メーカーにとって収支が均衡するところまで売れて、それで初めてひとつの成功。もちろん、そこからさらにたくさん売れれば、なおよい。

軍用機でも「収支が均衡するところまで売れて成功」なのは同じだけど、それが実任務で有用性を立証しないと「口先だけで終わり」だといわれかねない。だから、こっちの方がハードルは高そう。


では、X-2 みたいなデモンストレーターが目指すべきゴールとは何か。それは看板通りに「技術の実証」ができること。そして、それを次の戦闘機 (国産戦闘機とは書かない) の開発に際して役立てること。

今は昔と話が違うから、ブラックバーン F3 みたいに「造ったけど飛べませんでした」なんていうトンマなことは、まず起こらない。

予算を切られたとか会社がつぶれたとかいう、エンジニアリングと関係ない理由によるものは話が別。

だから、「飛ぶ」というところまでは普通は実証できるものだけど、それはゴールじゃなくいマイルストーンのひとつ。いろいろと新しい技術を盛り込んだ機体であれば、その新技術が目論見通りに機能するかどうかを確認するのが本来の目的。

もちろん、目論見通りでした、と確認することも大事。ただしときには、実際に現物を造って飛ばしてみたら「あれ ?」「え ?」「なんで !?」ということも起きるかも知れない。でも、それはそれで実際にブツを造ってみて初めて分かることだから、ひとつの成果。

何でもモデリングやシミュレーションだけで完璧に検証できればいいけれど、実際のところ、なかなかそうはいかない。そこに実証機を造る意味があるのだから、思った通りにいかない事案が発生したからといって、それを叩くのは筋違い。「あれ ?」「え ?」「なんで !?」の原因を突き止めれば、それはモデルを熟成する際に反映できるのだし。

ことに最近はソフトウェア制御のものが増えているから、これはもう、実際に造って、動かして、いぢめてみて、それで初めて熟成ができる。

メカニカルなものと比較すると、ソフトウェア制御のものは往々にして、「これでもか、これでもか」といろいろなテストケースを作っていぢめてみないとボロが出ない。そして、試験の段階でボロが出るのはいい。でも、試験では問題ないと判断して、いざ実用に供したらボロが出るのは困る。

いつも書いているように、試験が何事もなく順調に進むのは、果たして単純に自慢していいことなのかどうか。本当に問題がないのならいいけれど、問題を見逃したために形の上では順調でした、では自慢にならない。だから試験のノウハウを得ることも目的のひとつになる。


分かりやすいイベントではあるけれど、「初飛行した」というだけで舞い上がってポエムを書いてる場合じゃない。それがプログラム全体の中でどういう位置付けのイベントで、この先に何が控えているかということを、(できるだけ) 多くの人が分かるように書くのが、自分らみたいなポジションにいる人間の仕事じゃないかと。

「初飛行した」というだけで成功だと思っちゃうのは、いわゆる「一流大学」や「一流企業」に入っただけで自分の人生が成功したと思いこむのと似たようなものだ、と思うわけである。

あ、そうそう。X-2 が F-35 を明らかに凌駕しているポイントをひとつ知ってる。「エンジンの数」。

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