Opinion : ネガティブ探しも程度問題 (2016/5/16)
 

確か、東北地方太平洋沖地震からしばらく経った後だったと思うが、ある知人が震災関連報道に関して「どうして、暗いニュースばかり流すのかしら。もっと明るいニュースだってあるだろうに」という趣旨のことを話していたことがある。

なにも東北地方太平洋沖地震に限らず、先日の熊本地震でもその他の災害でも、「まだ仮設暮らしの人がこんなにいる」とか「物資が届かない」とかなんとか、ネガティブ系の話は確かに目に付きやすい。

一方で、(発災からしばらく経った後、という条件付きではあるが)「これだけ復興しました、あるいは復興に向けた努力が進んでいます」という類の話は、出てこないとはいわないけれど、どちらかというと後回しにされがち。

バリエーションとして「宿泊キャンセルがこんなにあった」というニュースはお約束のように出てくるけれど、「元気に営業しています」という話は後回しにされがち。その分、Twitter などを通じて「拡散してください」となる。

ただでさえ、災害がらみの報道は「被害が大きい場所、被害が目立つ場所」に集中しやすいし、キャッチーかつシンボリックな映像が繰り返し出回る。そこに上述のような話が重なれば、そりゃ観光客の足が遠のく風評被害が起きてもおかしくない。

なぜこうなる。


といったところでつらつらと考えてみたのは、マスコミ関係者 (特に新聞) の基本的なマインド セットとして「良くないことを見つけて報じるのが正義」(あるいは、使命) という考え方があるのかなあ、ということ。

もちろん、モノの見方・考え方だけの話ではなくて、数字がとれるかどうか、という判断基準が入ってくることも否定はできない。でもまあ、商売でやっているのだし、数字をまったく無視するわけにもいくまい。

そういえば、この手の人達が好むフレーズとして「権力の監視」というのがある。権力が往々にして不正や人権侵害に手を染めるのは否定のしようがない事実で、それは監視する必要がある。そこは首肯できる。

ただ、「権力のやることなら何でも悪」「権力のやることなら何でも裏がある」とハナから決めてかかるようになると、プライオリティの低い話をつつき出したり、火のないところに煙を立てたり、本来なら評価されるべき話まで意味をひん曲げたりする事態になりはしないか。

逆に、そういうマインド セットを悪用しようとする人が出てくる可能性もある。たとえば、どこかの役所で路線対立が発生していた場合に、一方の派閥から、対立勢力に関するネガティブな話をリークして「外から叩かせる」という事態が起きないか。

もちろん、そのリークを受けた側が「ちょっと待てよ」と考えて裏取りに走れば、そう簡単に、利用されるような事態にはならない。でも、「ネガティブな話をつつきだして暴露するのが権力の監視」という考えにだけ囚われていると、リークに対してダボハゼのように食いついてしまう危険性が増す。

すると結果的に、どちらか一方の勢力を利するようなことになってしまう。「そんなことは絶対に起こりません」と断言できるのかどうか。


ときには、「ネガティブな話を見つけて書き立てる」の結果が股裂き状態になってしまうこともありそう。と思った典型例が、ちょうど今日、ニュースになっていた「熊本地震の時に、トラブルが出て飛行停止になっていた自衛隊の CH-47」の話。

そこで「ネガティブな話を見つけて書き立てる」をやろうと思ったときに、どうするか。当初の、外から見える動向に基づけば「大災害なのに出動できない自衛隊の CH-47 はなんなんだ」となる。

ところが、後になって「実は飛行停止中でした」となると、「飛行停止になった CH-47 は欠陥機」と書き立てることになるんだろうか。実際には、そこに米海兵隊の MV-22B が加勢に駆けつけてきたから「オスプレイの政治利用がフンダララ」まで登場した。

じゃあ、飛行停止でも何でもお構いなしに飛ばせばいいのか。そんなことをやったらリスク要因が増える。そこで救援活動中に事故でも起こしたらシャレにならない。何も起こらなかったとしても、飛行停止中なのに無理して飛ばしたとの話を聞き込めば、「人命軽視の自衛隊」と書き立てる人は間違いなく出てくる。

「ネガティブな話を見つけて書き立てるのが正義」という考え方に立脚すると、どこに転んでもなにかしらの「叩き」につながる。しかも、その一方で被災者は置いてけぼり、これでは誰も救われない。

叩いた本人の自己満足にはなるだろうけれど、それでいいのか。なにもマスコミ報道に限らず、「叩き」にばかり血道を上げている人、すべてにいえることかも知れないけれど。

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