Opinion : グリーンコープ九州の福島外し疑惑 (2016/6/13)
 

なんでも、グリーンコープ九州がやらかしたそうである。これまで存在を知らない組織だったけれど、やらかしたおかげで名前を覚えてしまった。

「2016年夏号 夏のおくりもの」というカタログの中の「東日本を応援しよう ! 東日本大震災復興応援」と題するページで、「東北 5 県」つまり青森・岩手・秋田・宮城・山形だけを取り上げて、レッキとした東北地方の一員であるところの福島県を外してしまったそうだ。

これについて、いろいろいわれているのは当然の成り行き。「地理の法則が乱れている」というのは… まあ、それはそうなんだけれども、本筋の問題は別のところにあると思う。


まず、怒る声が上がった「福島外し」。

ハッキリ書いてしまうけれど、福島県産と聞いただけで忌避する組合員がいても不思議はなさそう。ちゃんと検査して、問題ないと確認できたものだけ出荷しているのだから問題はないはずだが、それでも気に入らない人はいる。

だから、「福島外し」だけなら、「あっそ。好きにすれば ?」という話だと思っている。個人的には気に入らない話だけれど、「うちの組合員が嫌がるので」と明言するなら、それは却って潔い。

そういえば、うちの近所のスーパーでは最近になってようやく「福島県産」のお米を見かけるようになった。個人的には「福島県産」と書いてあることはマイナス要因でもなんでもないけれど、それを見れば、噛みつく人はいるだろう。

お店としては板挟みの立場にならざるを得ないから、(たとえ扱いたいと思っても) 慎重になり、店頭に並べるようになるまで時間がかかったのは、仕方ない部分もある。並べるのはいいとして、足元を見て買い叩くような真似はするなよと思うけど。

件のグリーンコープ九州の一件で怪しからんと思ったのは、むしろ別のところ。それは何かというと、「被災地支援」というお題目を掲げた上でやらかしたこと。いつぞやの「ホワイトバンド」みたいな「いいことをした気分を売る商品」の臭いがした。

そりゃまあ、売る側としては「被災地支援」というお題目を掲げる方が受け入れられやすいだろうし、買う側にとっても「いいことをしている」という気分になれる。それで実際に被災地にお金が回れば三方一両得である。

ただ、その「被災地支援」というお題目との合わせ技で「福島外し」をやったところが凶悪。福島県だってレッキとした被災地である。その福島を対象から外すということは、(理由はどうあれ) 福島は復興支援しなくてよろしい、といっているようなもの… と受け止められても言い訳できないんじゃないか。

それに、被災したということなら東北に限定する理由はなくて、茨城や栃木まで含めてもいいのだ。(追記 : 無論、千葉県など、その他のエリアでも被害が出たところはあるのだが、そこは代表的なところということで)

ありそうなのは「いや、別の手段で福島を支援している」という言い訳だけど、それならなおのこと「どうして福島だけ別枠・別手段にしなければならないのか」という話になるから墓穴を掘るだけである。まさか、「会津は朝敵だったから」という理由で、福島県をひとまとめに敵視しているわけでもあるまいし。

といっていたら、「在庫がなかっただけで悪意はない」という言い訳が出てきた。

は ? さんざ風評被害に苦しめられて、県が先頭に立って買い手を求めているのだから、その気になってアプローチすれば、なにかしら入手できてもおかしくない。福島県産だけ手に入らなくて在庫がなかっただなんて、信じがたい。

よしんば本当に「たまたま在庫がなかった」のだとしても、それは在庫を確保していなかったということだから、やはり「福島県産を忌避してたんじゃないの」という疑念は拭えない。それに「被災地応援」を銘打つのであれば、東北 6 県の産品を確保する算段をしてからやればいいのだ。


そういえば昨年 7 月、クルマを飛ばして青森まで行った帰りに、「まだ走ったことがない」という理由で、仙台の手前で左に針路転換。仙台東部道路から常磐道を通って帰ってきた。

御存知の通り、常磐道の途中には道端に線量計が建っているところがある。自分が通ったときには、最大で 5.2μSv/h だったか。

個人的には、「いちいち被災地支援だなんだと力こぶを入れず、肩の力を抜いて、東北のものも、その他の地域のものも、買って食べて使えばよろしい」という主義 (これは以前にもどこかで書いた)。同じ理屈で、力こぶを入れずに常磐道を走ってきた。

そんなクルマでその後もあちこち走り回った上に、下取りに出して乗り換えた自分は、「人殺し」呼ばわりされちゃうんだろうか。

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