Opinion : たまに撃つ、弾が違ったらたまらない (2016/6/20)
 

陸自の然別演習場で 5 月に、演習で実弾を撃ってしまい、隊員が怪我をする事故があったのは御存知の通り。後で報じられたところによると、書類の転記ミスが原因で、空砲の交付を受けるはずが実弾の交付を受けてしまったのだという。

参考 : 弾薬調達担当者、書類転記ミス…陸自の実弾誤射 (讀賣)

上の記事の中に、「計画に反して小銃に弾を込めず、射撃自体をしていなかった隊員がいたことも判明」という記述もある。これも問題じゃないかと思うけれど、一度にいろいろな話を展開すると収拾がつかなくなるので、今回はこの話は措いておく。

何事も頭で分かっているだけではダメで、本番をやらないと身につかない。本番といっても AV の話ではないけど。

費用の問題もあるし、生身の人間同士が撃ち合う場面もあるから、いつも実弾を使って演習をやるわけにも行かない。だから空砲とかペイントボールとか MILES (Multiple Integrated Laser Engagement System) とかいうものがある。

いかにしてリアルなシミュレーション訓練環境を実現して、実弾を撃たずに実弾を撃つのと同じ経験をさせるか、というのは業界の大きなテーマ。だからシミュレーション訓練機材を手掛けるメーカーはみんな、「迫真度の高い訓練環境」を謳う。

といってもシミュレーションはシミュレーションだから、最後は本番をやらないといけない。だから、可能な限り、実包を撃つ機会をつくらないと。毎日のように実弾を撃ちまくっている対テロ特殊作戦部隊みたいなわけにはいかないにしても。


武器という物騒なものを扱うのだから、軍事組織が安全管理に神経を使うのは当然のこと。小銃ひとつとっても、「撃たないときは引金に指をかけるな」とか「宿営地の外に出てから中に戻るときには、入口に設置してあるパイプに銃身を突っ込んで引金を引いて、装填されていないことを確認する」とかなんとか。

件の陸自の事案、書類の転記ミスもさることながら、それを見つけられなかったチェック体制に穴はなかったのだろうか。念入りにチェックしすぎて、手続きにべらぼうな手間と時間がかかるようでも困るけど。

実弾に限らず警備とか保安の類にはつきものだろうけれど、あり得る事態を想定して警備体制やチェック体制を敷いていても、ときとしてすり抜けられてしまうことがある。飛行機を乗り継ぐ際の手順に隙があって、それがハイジャック事件の原因になったこともあった。

そのチェック体制の件もさることながら、今回の事案で「えーっ」と思った話は別にある。弾薬庫は、書類が正しければいわれたとおりのものを出す。では、その先の現場で、弾の交付を受けたときに「これは違う」と気付かなかったのか。

爆弾だと「実弾」と「模擬弾」があるし、誘導武器だとさらに「キャプティブ弾」もある。みんな形や重量は同じだから、色帯を巻いて区別している (形も重さも揃えないと、模擬弾を使った搭載訓練が現実的なものにならない)。

ミサイルは形が同じだからそういう話になるけれど、銃弾はどうか。数が多いから、いちいち色帯を塗って区別するわけにもいかいな。ただ、実包と空包の形が違えば区別はつく。ミサイルの搭載訓練とは違うから、形や重量を実包と完全に揃える必要はないのだし。


もうひとつ、気になったことがある。「空包ではなく実包だ、と気付かなかったのか」という話は上で書いたが、「実包だと気付いたのに、それを言い出せなかった、あるいは言いそびれた」なんてことはなかったのかと。

もちろん、予定は未定にしてしばしば変更されるものだけど、生身の人間同士が撃ち合う演習に実包を持ち込んだらまずいのは、誰でも分かる。いくらなんでも、「弾が間違っているのではないか、との申し出ができない」ほど陸自が風通しの悪い組織ではないと思うけれど。

ともあれ、武器の安全な取り扱いは国民からの信頼に関わる大問題だから、原因の究明と対策をしっかりやって欲しい。と、ありきたりの〆になったところで、今回はこの辺で。

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