Opinion : 安上がりに正義の味方 ? (2016/9/19)
 

先日、JR 東日本の外房線で「運転士があぐらをかいているのを乗客が目撃」というニュースがあったという。その後の報道によると「土踏まずを蚊に刺され、かゆかった」との説明だった由。

ハッキリ書いてしまうと、「楽な姿勢を取ろうとするよりも、痒いのを我慢して運転している方が、よほど危険ではないか」。


「最近、何かおかしな傾向が目立つぞ」と思うようになったきっかけは、化粧品の宣伝ポスターでタレントさんの瞳の中にスタッフが映り込んでいた一件。単に笑って済ませれば済む話だろうに、なぜか公式 Twitter アカウントが謝罪する事態になった。

なぜそうなる。

顔見知りの乗務員が交代する際に二言三言の雑談をかわしたって、別に運転に支障があるわけでもない (雑談が延びて発車が遅れたというならともかく)。オフィス ワーカーだって、仕事のやりとりついでにちょっと雑談することぐらいはある。

上で書いた化粧品の話について聞いたときには「ある種の不寛容」なのかと思った。でも、最近は見方が変わってきた。とにかく何か槍玉に挙げて火をつけて騒ぎを煽り立てて、正義の味方気分を味わいたい人が多くなってるんじゃないの、という見方になってきている。

それを後押ししているのがインターネットの普及であるのは、論を待たない。昔なら、何かあったら新聞社やテレビ局にたれ込むぐらいが関の山だったし、それが記事や番組になるという保障はなかった。でも、当節は事情が違う。

これって、いつぞやに書いたと記憶している、「明けても暮れても叩きばかりしている人」の話に通じるところがありそう。

でも、そうやって些細なネタで火を点けてばかりいると、本当に火を点けないといけない場面で「ああ、またか」となってしまい、一種の狼少年状態になりはしないかと。そんな心配もしている。

それに「ネットの噂は 75 時間」というぐらいに状況が早く変わるから、あるタイミングで新鮮だったネタでも、すぐに鮮度が落ちてしまって刺激にならない。(「ネットの噂も 75 時間」は「人の噂も七十五日」のパロディだから、75 時間という数字に具体的な論拠はない。為念)

すると、さらに刺激の強い新ネタを求めて鵜の目鷹の目ニャンコの眼。そういうサイクルを無限に繰り返すことになる。すると収拾のつかない総監視社会になりかねない。

あと、これは昔から新聞・テレビ・週刊誌の常だったけれど、ある分野の話で火が点くと、同種のネタをせっせとほじくり出して回る現象が起きるのはお約束。尼崎事故の後の「○○線でオーバーラン」しかり、不祥事の後の「三菱車炎上」しかり。

いずれも、実際の発生数とニュースになる数は一致していない典型例。そして、もっと新鮮でキャッチーな新ネタができれば、ブン屋さんの目はそちらに移ってしまい、それまでさんざん騒いでいた話は忘れ去られる。

にしても、たまたま「運転士」の話が続いたからといって、生理現象に「速報」とは何事か。速報と銘打つような話か ? 新聞やテレビの記者は取材で張り込みしてるときにトイレに行きたくならないのか ?


どうせ「証拠写真を撮って晒し上げて目立ちたい、ヒーローになりたい」ということなら、ときどき主張する人がいる「不正選挙」の証拠写真なんか撮って、晒し上げてみたらいいと思うよ。それが本物で、本当に不正の証拠を暴いたのなら、それこそヒーローになれる。たぶん。

って、それではハードルが高すぎて「お手軽に晒し上げて正義の味方気分」を味わえないから、誰もやらないと思うけれど。

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