Opinion : ゲーム チェンジャー (2016/10/17)
 

F-35 に関する取材をしていると、頻繁に耳にする言葉が "Game Changer"。

実際に、能書き通りにゲームのルールを変えられるのか。そもそも、どういう方向にゲームのルールを変えようとしているのか。などと、まだ追っていかなければならないところはあるけれど、「他人が書いた曲に合わせて踊るつもりはないよ」という意志は伝わってくる。

個人でも企業でもその他の組織でも、あるいは国家でも、「既存の曲の中で踊りを突き詰めるのが上手い」と「既存の曲で上手くいかなければ、曲を変えてしまえ」の 2 パターンは確かにある。


そういえばスポーツの世界ではときどき、ルールの改定が起きる。誰かがやたらと強くなってしまうと、そこにブレーキをかけようとしてルールを変える。アメリカの自動車レースは特に、「競争促進のためにルールをいじる」傾向が強いような気がするけれど、統計をとってみたわけではないので、これは「個人の印象です」というやつ。

アスリートの業界では、「ルールを変えて日本勢を不利にするとは横暴だ」みたいな主張を目にすることがある。一理ある。

ただしそれって、「一度決めたものは未来永劫に変えてはならぬ」「決められたルールの中で極限を突き詰めるのが正しい」という発想に立脚している、といえるんじゃないだろうか。

誰かが「旗色が悪ければルールを変えてしまえ」となるのは、いってみれば政治の問題。だから「ルールを変えるという横暴」を阻止したければ、こちらからルール策定の枠組みの中に入り込んでいって、政治力・交渉力を発揮する必要がある。

これはかなり疲れる作業だと思う。でも、それをやらないで「横暴だ」ばかりいっていても、それは負け犬のなんとやらということにならないか。ルールを変えさせたくなければ、いかにして変えさせないかを考えないと。

それでもスポーツの世界の場合には、「競争が成り立たないと」という大義名分がひとつの枠になっている。ビジネスの世界でも限度はあって、「やっていいこと」「やっていけないこと」はある。ときどき無視する人はいるけど。

じゃあ戦争はどうか。この業界にも一応は「越えてはならない一線」みたいなものはあるけれど、基本的には勝てば官軍である。それにスポーツの試合と違うのだから、必ず決まった種目で勝負しなければならないなんて定めはない。

たとえば戦闘機同士の交戦であれば、必ず一対一で渡り合わなければならないなんて規定もなければ、接近して巴戦に持ち込まなければならないなんて規定もない。それぞれが、使っている機体の強みと弱みを把握した上で、強みを発揮できるような形に持ち込んで勝ちに行く。

なにも現代に限らず、第二次世界大戦の頃から同じだった。零戦や一式戦のルールに合わせて、F6F や P-38 や P-47 が踊ってくれたわけじゃない。単機で仕掛けていったらサッチ ウィーブで横合いからおかまを掘られる、なんてことも起きた。そうなると、個人技を突き詰めるだけでは勝負にならない。

これだって、ある種の "Game Changer" だったんじゃなかろうか。もちろん、それを支えた製品やテクノロジーがあってのことだけど (信頼できる無線機とか信頼できる機関銃とか)。

と、ここまで書いて思ったけれど、艦対艦ミサイルの出現も、結構なインパクトのある "Game Changer" だったと思う。少なくとも、フネのサイズと打撃力の比例関係をぶち壊したという点においては。


それで結局なにをいいたいのかというと、「相手が○○を持ってるから、こちらも○○がないと」とか「相手が△△の分野で強いから、こちらは△△の分野でさらに上を行かないと」という発想でいいのか、ということ。

ゲームのルールが、あるいはステージがこちらにとって不利だったら、わざわざそこに上がり込んでいく代わりに、ルールやステージを変えられないか。そういう発想に持っていかないと。

自分の仕事だって、「他に競合がいない分野から切り込む」というアプローチをとることで、ゲームのルール… というより、この場合にはステージか… とにかく、違う攻め方をしているという意識はある。要はそういうこと。

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