Opinion : ふるさと納税と返礼品に関する徒然 (2017/3/6)
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今頃になってこれを書くと「後出しジャンケン」との誹りを免れ得ないけれども、いわゆる「ふるさと納税」の返礼品。あれ、エスカレートの度が過ぎるんじゃないか、と以前から思っていた。
やっと最近になって見直そうかという動きが出てきたようで、良いことだと思う。
もちろん、「ふるさと納税」は (返礼品がエスカレートして、そっちに費用を食われることがなければ) 財政的なメリットにつながるだろうけれど、本筋からいえば、おカネだけでなく人が移り住んできてくれる方向に持って行きたいところ。
以前に書いた JR 北海道の経営問題にしても、根本的には「沿線に住む人が減って、人の往来が減っている」ことに原因がある。クルマがどうとか高速道路がどうとかいう問題もあるけれど、それは問題を加速している要因ではあっても、根本原因じゃないと思う。
その話はそれとして。
「せっかく、我が自治体をふるさと納税の対象に選んでくれたのだから」といって返礼をするという志はいい。そこで地元の特徴が現れているようなものを選ぶのもいい。
ただ、そこにはひとつ、決定的な落とし穴があった。あちこちで同じようなことを始めれば、必然的に「返礼品競争」になる。特徴を競うのならまだしも、高価な品物を出す方向に行くケースが出てきても不思議はない。
日常生活でも、ありがちだと思う。「お隣さんがああなら、うちはこうだ」みたいな形で競争がエスカレートする形。スケールはだいぶ違うけれども、軍拡競争と似た部分があるやも知れぬ。
そしてエスカレートが進めば、寄付額と返礼品の金額が大して変わらないとか、ひょっとすると返礼品の金額が上回ってしまうとかいう、本末転倒のあべこべ現象にもなりかねない。それでは本来の趣旨がどこかに行ってしまう。
実のところ、それだったら「ふるさと納税」という形でなくて、単に通販するのでも変わらない。実際、「税金が安くなる名産品の通販」みたいな煽り方をしている記事も見かけた。いいのかそれで。
ここまでエスカレートする前に、総務省あたりで歯止めをかけた方が良かったのだろうけれど、ではどうやって ? 分かりやすいのは金額制限だけど、誰かが抜け駆けすると台無しになってしまう。強制力のある規制を全体にかけないと実効性がない。
では「モノにするのは駄目」としたらどうなるか。そこで代案として「豪華宿泊施設に御招待」とかいうのが出てきてエスカレートすれば、これもまた、同じことになってしまう。
ただ、ここまで書いてみて、ひとつ思ったことがあった。つまり、納税先の自治体を訪れて、買物でもアクティビティでもいいけれど、地元におカネを落とすような方向に持って行けたらいいんじゃないの ? と。ただ、これもやはり、競争がエスカレートする可能性はついて回る。実行するのは難しそう。
実のところ、競争がエスカレートした一因には、「○○の返礼品がすごい」と煽る報道が続発した事情があるんじゃないかと。
実際、ちょいと検索してみると分かるけれども、「返礼品がもらえる」とか「節税になる」とかいう話ばかりフィーチャーしている記事は実在する。逆に「○○は返礼品が地味」という記事もあり、そんなことを書かれたらエスカレートの競争になるのは宜なるかな。もはや本来の趣旨はどこかにすっ飛んでいる。
この件に限らず、ニュース屋さんというのは往々にしてそうだけれど、話題になって盛り上がれば、後は野となれ山となれ、というところがある。「○○の返礼品がすごい」と煽れば、「それなら、うちはもっと凄いものを出そう」となるのは自然な流れだけど、そんなの知ったことか、と。問題の根底はその辺にあるのかも知れない。
それを考えると、「競争から降りる」と表明した所沢市は「よくやった」と思う。きっと「それでは他所の自治体に負けてしまう」という反対もあっただろうに。
この件に限らず、報道が競争を煽るケースって、他にもいろいろあるんじゃなかろうか。記事や番組を作っている当事者に悪気があるかどうかはともかく。
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