Opinion : 他人任せの包囲網 (2017/5/1)
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ここ数年ほどみられる傾向だと思ったけれど、実はもっと前からなのかも知れない。何の話かというと、何でもすぐ「○○包囲網」「○○を牽制」という見出しにしてしまうニュースの話。
直近のネタだと、佐世保にフランス海軍の強襲揚陸艦 FS Mistral が来ている。そこにはイギリス海兵隊とイギリス海軍の輸送ヘリも載っている。で、日米英仏の四ヶ国で合同訓練をやるという。
そして例によって「対北牽制」だという人が出る。今回の仏海軍の世界巡航は、北朝鮮情勢が緊迫化する前から計画されていたものじゃないのかと思うけれど。よしんばそうではなかったとしても、いきなり「対北牽制」は話が飛びすぎ。
それに、やってきたのは両用戦部隊。北朝鮮に上陸作戦を仕掛けるとか、核施設やミサイル施設にコマンドー部隊を送り込んで施設を破壊するとかいうならともかく、そうでなければ、両用戦部隊を交えた合同訓練と「対北牽制」の因果関係が分からない。
強いていうなら「国際社会の結束を見せる」ぐらいか。
実のところ、「対北」に限った話じゃない。いちいち事例を挙げ始めるとキリがないけれども、何かというと「対中包囲網」「対中牽制」という枕詞がつく事例はチョイチョイある。
実のところ、(日本も含めて) どこの国も「共通する利益要因」と「相反する利益要因」を持っているわけで、それは中国相手に限った話じゃない。そこで「相反する利益要因」の話だけピックアップして「親中」「反中」と色分けした挙句に「○○によって対中包囲網」といいだすのでは、苦笑せざるを得ない。
そういえば、何かというと「親日国」「反日国」と色分けしたがる人っているなぁ。そんな簡単に分けられるものか ?
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かと思えば、RAF Lakenheath から F-35A が 2 機、エストニアに行って派遣訓練を実施したら「対露抑止」と見出しをつけた記事があった。ぷっ。
いくら F-35 がスーパーな戦闘機でも、2 機ですよ 2 機。核爆弾を満載した B-2A が 2 機というならともかく、F-35A が 2 機展開したぐらいでプーチンさんが脅威を感じて抑止されると思う ?
アメリカだって、本気で牽制しようと思っているのであれば、せめてフル飛行隊規模でやらかすんじゃないの ? といっても、そもそもヨーロッパに送り込んだ F-35A が 8 機しかいないけれども。
とどのつまり、これって「恐怖感の裏返し」なんだろうと思う。自力で対処できる相手なら事情は違うのだろうけれど、自力で対処できないと思われる脅威に対する、抑制しづらい恐怖感。
もちろん、あらゆる脅威にすべて自力で対処できるわけもないし、それだからこそ、防衛の分野では集団的安全保障という話が出てくる。ただ、そこでは「自力だけでは対処できないけれども、自力でできることはする」という考え方が必要。
以前から「丸」などで、日米安保について「従来以上に双務性を強める姿勢が求められるだろうし、そうなるのではないか」と書いてきているけれども、その根底にある考え方も同じ。
なんだけれども、そこで「(自力では対処できないから) 他の強い誰かがなんとかしてくれる」という、他人任せで当事者意識を欠いた見方をする人もいる。すると、なんでもかんでも「包囲網」や「牽制」に見えてくるんじゃないの ?
実際、「尖閣は日米安保の対象」だとアメリカがいったかどうかで一喜一憂している、人とかニュース記事ってあるわけでしょ。そりゃ、日本だけで対処できるかどうかといわれれば怪しいけれども、日本が何もしないで助けてもらおうというなら、それもまた調子がよすぎる。
その「自力でできることはする」にしても、実のところ、右も左も振り切れすぎていて、「日本が置かれている状況に対して、手持ちのリソースで、何をどこまでできるのか」という真剣な議論ができていなかったんじゃないだろうか。
一方では、帝国陸海軍を復活させたいんかいっ、というぐらいに非現実的に威勢のいい人がいる。かと思えば反対側では、軍備なんてトンでもない、憲法 9 条があれば平和は守れる、という人がいる。
どっちにしても振り切れすぎてるし、現実と向き合うことから逃げて夢想に走ってるところは同じ。といったところで「国士夢想」というダジャレを思いついてしまった (おい)。
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