Opinion : 飛行機の保安対策に関する徒然 (2017/5/29)
 

先日、イギリスでテロ事件があった。ちょうど日本では、テロ対策関連の法案が国会審議にかかっていて、例によって野党が反対している。だから、「ほらみろ、テロ対策の取り締まりをやってもテロは防げないじゃないか」とドヤ顔した人がいた、かもしれない。

ただし実際のところは、イギリスの一件が日本の国会における審議に大きく影響するほどの盛り上がり (?) につながったかというと、それはなかったように思える。

冒頭の話についていえば、「取り締まり反対論者」の内輪では相応に説得力があっただろうけれど、一般向けの説得力ということになると疑問がある。それはなぜかといえば、「取り締まってもテロを防げない」と主張することはできても「どうすればテロを防げるか」という答えを出していないから。

安全保障がらみの話も同じ。「○○という事象に対して△△という対策を」という話が出てきたときに、「△△では戦争は防げない」「△△では攻撃は防げない」と主張する人が出るのはお約束。

ところが、これだけだと「では、どうすれば戦争や攻撃を防げるのか」に対する答えを出していない。そして多分、大多数の国民は、漠然と抱いている「安全に対する不安感」に対する答えを求めている。だから、単に反対するだけでは支持が広がらない。


とはいえ、こんな論を展開している自分ですら、首をかしげたくなるような話が出てくることもある。

先日から DHS 界隈で燻っている「ノート PC の機内持ち込み全面禁止」なんかは、その一例。すでに中東方面からのフライトで禁止になっていて、それを他の方面にも拡大しようかどうか、という話。

なんでも、ノート PC のバッテリに爆薬を仕込む可能性が懸念されるんだという。でも、機内持ち込みがダメなら預入荷物に入れることになるけど、それにしたって検査しないといけないのは同じこと。

ついでに書くならば、(すでに指摘する声が出ているけれども) 預入荷物に Li-Ion バッテリを入れるのは危ないからダメ、という話になっているのに、今度は Li-Ion バッテリ付きのノート PC を預入荷物に回せということになると、もう矛盾の塊。

さらにエスカレートして、「北米にはノート PC 持ち込み禁止」なんてことになったら、仕事にならんがな。それに、「携帯電話より大きいものはダメ」という基準の妥当性はどうなんだろう。携帯電話サイズだったら絶対に爆発物を仕掛けられない、なんて訳でもあるまいに。

そういえば先日、シンガポールのチャンギ空港で保安検査を通過したときに、いつものようにタブレット PC と携帯電話をトレイに出したら「あ、そっちは出さなくていい」といわれたので拍子抜けした (ノート PC はトレイに出した)。出さなくても検査できる仕掛けを、何か隠し持ってるんだろうか。

シンガポールって基本的には、監視や取り締まりが厳しい部類に入る国だと思ったんだけどね… だから「何も検査しないでスルー」ではないと思う。


アメリカの空港で保安検査を通るときには、靴を脱いだり、ベルトを外すよう要求されたりして面倒くさい。異様に厚底の靴だったら怪しまれても仕方ないかも知れないけれど、普通の靴まで疑って、どれぐらい実効性があるんだろか。現実問題、アメリカ以外の国ではそこまでやっていないわけだし。

結局のところ、この手の話って、いたちごっこみたいなところがある。ノート PC のバッテリがダメとなったら、別の手を考えるアホなテロリストはきっと出てくる。でもって、たとえば DHS が「メガネのフレームに爆薬を仕込んだテロリストが出たので、北米線ではメガネ禁止」なんていいだす事態になったら、どないすんねん。

これはもちろん、意図的に極端な例として出してみた話だけれど、今の調子だとどうなるだろう。アメリカという国、外部に何か危険の因子があると見ると、ピシャリと閉めきって内に閉じこもる傾向が出ることがあるし。

とどのつまり、「テロ対策も、そのための取り締まりも必要。でも、どうすれば本当に実効性のある対策になるのか、善良な一般市民の日常生活とはどう折り合いを付けるのかを常に検討して、落としどころを模索する必要がある」という話になる。

何かある度にあれも禁止、これも禁止とやっていたら、ホント、そのうち「人間の機内持ち込み禁止」になっちゃうよ ?

さてそこで問題です。「世界でいちばん安全」といわれるエルアル航空はどうやってるんだろう ? と思っていくつか調べてみたら…「うひゃあ」となってしまった。なるほど半端ではない。アメリカ本土で同じことをやったらパンク必至だなぁ。

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