Opinion : リスクを冒す者が勝利する (?) (2017/8/14)
 

タイトルはもちろん、英陸軍の特殊空挺部隊 (SAS : Special Air Service) が掲げるモットー「危険を冒す者が勝利する」のパロディ。ただ、「必ず勝つ」と断言することはできないので、後ろに疑問符を付けざるを得なかった。

もちろん「必ず勝つ」とバッサリやる方が、読む側にとっては (たぶん) 痛快。でも、痛快さを追求して無理矢理バッサリやるのは、リスクというよりもリカバリー不可能なバクチだと思うので、それはやらない。

と、それはそれとして。


ヨーロッパ諸国で以前から話が出ている MALE (Medium-Altitude, Long-Endurance) UAV 開発計画の基本仕様がまとまった由。それはいいのだけど、その前に各国でいろいろとデモンストレーターを作っていたステルス UCAV (Unmanned Combat Air Vehicle) の話はどこに行った ?

アメリカやイスラエルの独占を許すわけにはいかない、という見地から、欧州諸国が UAV 技術の獲得と製品の実現を目論んでいるのは、しばらく前からある話。ただ、発破をかけているように見える割には、なかなか具体的な方向に進まない。

寄り合い所帯だから、なかなか意思統一が図れない ? それは否定しがたい。でも、それだけだろうか。

ジェット推進のステルス UCAV と、ISR (Intelligence, Surveillance and Reconnaissance) 用途がメインの MALE UAV では、だいぶ様態が違う。その、様態が違う 2 種類のコンセプトの間で行ったり来たりしているのを見ると、「こりゃ INS じゃないか」と思ってしまう。

INS といっても慣性航法装置 (INS : Inertial Navigation System) ではなくて、「いったい何をするモノか」の方。つまり、UAV を使って何を実現したいのか、どんなケイパビリティ () を備えた UAV が欲しいのか、UAV の CONOPS (Concept of Operations) は何なのか。そういう話が不明瞭なんじゃないのということ。

他所で何か新しい形のモノ、新しい概念のモノが出てくると、それに引っ張られて「うちでも欲しい」となる。それで、たとえば「UAV 技術だけ欲しい」という話ばかりが先行するから、なかなか話がまとまらないのではないのかしら ? と外野は思ってしまうのだった。

もちろん、何もないところから CONOPS や所望のケイパビリティ () を洗い出して、それを具体的な製品に仕上げていこうとすれば、試行錯誤は避けられないし、ときには失敗もする。誰か先行者 (股間ビームのロボットではない) がいて、その後を追いかける方が、間違いもリスクも回り道も少ないかも知れない。

でも、後を追いかけていたのでは、よほどトンでもないブレークスルーを達成しない限り、先行者を追い抜くのは困難。逆に、リスクを冒していろいろ試してきたからこそ、アメリカやイスラエルのメーカーが UAV 分野でフロント ランナーの座を得られたわけで。

もっとも、そのアメリカでも CBARS (Carrier Based Aerial Refueling System) / MQ-25 みたいに迷走しまくった事例があるのだから笑えない。空母に UAV を積むことだけ考えてたのとちゃうか、と突っ込んでみたくなる。


防衛分野に限らず、他所で何か新しいモノが出てくると「こりゃいかん」といって、慌てて後を追い始める話は、ままある。すると往々にして、先行者と似たようなモノが出てくる。それでは、先行者にはなかなか勝てない。

既存の技術や製品の延長線上にあるモノなら、話は違うかも知れない。でも、従来にない新しい種類の製品になると、先に CONOPS や要素技術をモノにした先行者の方が有利。軍用 UAV の業界は、まさにそういう状況になってる。

タイトルの「リスクを冒す者が勝利する」とは、そういう話。先行する同種の事例、先行する成功事例がないところでチャレンジして新しい種類のモノを送り出したからこそ、その後もフロントランナーでい続けることができる。そんな事例は、いろいろあるんではないだろうか。

もっとも、逆パターンもある。他所で従来にない種類のモノが何か出てきたときに、引きずられて「未来はみんなこれになる」と思いこんで後を追ったら大空振り、というやつ。ただしこれも、CONOPS や必要性を明確にしないままに「同じモノが欲しい」と突っ走るところは、似ている。

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