Opinion : 遠くの他人の話だと思うと好き放題いえるという仮説 (2017/10/23)
 

去年、ネリス AFB のオープンハウスに行ったときに、いちばん印象的だったのが "West Coast Ravens"。ホームビルト機を飛ばしている個人オーナーが集まって、デモフライトをやって見せているもの。

フライトの巧さもさることながら、面白かったのが個々の機体の塗装。それぞれのパイロットの好みによるのか、内容は千差万別。大戦中の戦闘機を模した塗装になっている機体が目についた。

それで何をいいたいのかというと、「ああ、この国では飛行機で空を飛ぶことがフツーのことなんだなあ」という話。田舎になると、「隣の家に行くのに飛行機で行く」とかいうことも、あるとかないとか。

ということは、飛行機を飛ばしている人、飛ばしている経験がある人、自分で操縦するのでなくても飛行機に関わっている人が、周りにいる可能性は高い。


翻って我が国はどうかというと、そもそも個人が飛行機の操縦ライセンスを取ってホイホイ飛ぶ場面は、あまりなさそう。皆無ではなくて、熊本に取材に行った帰りに、熊本空港を拠点にしてエアロスバルを飛ばしている方にお会いしたことはあるけれど。

とはいえ、一般的な意識としては、飛行機を飛ばすことは「どこか遠い世界で、限られた人達だけがやっている話」という受け止められ方が強いんじゃないかと思える。

民航機でも自衛隊でもジェネアビでも警察でも消防でも海保でもなんでもいいけど、自分の身内や友人・知人で「飛行機を飛ばしている」人がいるケース、どれだけあるだろう。と考えると、「遠い世界の話」になるわけ。

で。遠い世界ということは必然的に、「よく知らない世界」になる。すると、いい意味でも悪い意味でも理解が進まない。その結果として、過剰に夢を見たり持ち上げたり、過剰に叩いたり批判的になったり、ということになるんじゃないかなあと。

少し前に、「ホンダジェットを持ち上げて MRJ をこき下ろす報道ってなんなのよ」という話が出ていた。初飛行のときはさんざ煽っておいて、型式証明取得のためにあれこれ苦労しているとなると一転して叩きに回るのだから、勝手なものである。

「型式証明を取得するまで、いろいろ大変だと思うよ」という話は、自分は初飛行のすぐ後に書いた。だから、開発や試験で苦労している様子を見ても驚きはしないし、叩こうとも思わない。

逆に、そこで過剰に煽ったり夢見る夢子さんになったり、一転して苦労しているとなると叩きに回ったり、というのは要するに、「どこか遠い世界で、限られた人達だけがやっている話」と思っているから当事者意識がないんじゃないかと。

海外のサプライヤーがいろいろ入っているのが気に入らずに、「オールジャパンじゃないと気に入らない」とダダをこねるのも、同じじゃなかろうか。他人事だと思うから好き勝手なことがいえる。で、「オールジャパン旅客機が世界制覇」という見栄だけは欲しいと。


これがクルマの運転だったら、実際にやっている人はたくさんいるから、「クルマを運転するとはどういうことか」が分かっている人は多い。クルマの運転は、それだけ身近なことなんだといえる。

空の上はそうじゃない。だから、いわゆるドローン ブームが起きたときにも、「新たな産業の創出 !」という煽り文句に乗せられて、イケイケドンドンの記事を書かないと文句をいう人が現れた。

そこで、適切な操縦訓練の必要性とか、空域分離などの規制の必要性を指摘すると「産業創出の足を引っ張るのか ! だから日本はダメなんだ !」っていきり立つわけ。ぶっちゃけ、当事者意識がない。

多少なりとも空の上の安全について読んだり聞いたりしたことがある人なら、「ちゃんとした訓練を受けていない素人が、飛行物体をそこらでホイホイ飛ばすことの危険性」は理解してもらえると思うのだけど。

少なくとも、「航空」に携わっている人が身の周りにいて、いろいろ話を聞く機会があれば、むやみに過剰な上げたり下げたりは起きにくくなるんじゃないかと思えるのだけれど、どうだろう。

たぶん、航空の世界に限った話ではなくて、「どこか遠い世界で、限られた人達だけがやっている話」と思うと、好き勝手なことをいいやすくなる。実のところ、安全保障の話だって似たようなところがあるんじゃなかろうか。

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