Opinion : 実弾が飛び交わない消耗戦 (2017/12/11)
 

3 年前に病気をして 3 ヶ月ばかり入院させられた。その後はしばらく、仕事のペースを落としていた (つもり)。それができたのは、フリーランスで「仕事を断る自由」があったから。

最近は「もう大丈夫か」と見て仕事のペースを上げてきているけれども、ノリノリで無茶して、また身体を壊したらシャレにならないから、休めるときは休まないと、と思っている (つもり)。

でも、「仕事を断る自由」がないポジションだったらどうする ?


なんてことを書こうと思ったのは、那覇の航空祭に行った知人の話を聞いたから。昨年もそうだったけど、今年も、公開イベントの最中に何回も本番のスクランブルがかかっていたという。

以前から、那覇の第 9 航空団のオプテンポが高いという話は指摘されている。近代化改修機を集中配備しているけれども、それの飛行時間がどんどん増える。つまり残された寿命がどんどん短くなる。

実のところ、今の南西諸島方面の状況って、弾が飛ばない実戦といってもいいのではないか。その、弾が飛ばない実戦という名の消耗戦を延々と続けるのは、実は実戦より辛い。実戦だったら、どっちに転ぶにしても、もっと短期間のうちにケリがつく。

政治的にリスキーな実戦をやる必要なんてない。今みたいな状況を延々と続けることで、装備を磨り減らし、人員の負担を増やし、訓練もままならない状況にすることで、結果として日本の防衛力を磨り減らすことができる… それが中国の戦略だったらどうするよ ?

冷戦期だと、「平時」と「戦時」の区別は明瞭だったから、平時は錬成に専念しているといえた。もちろん、冷戦期にもスクランブルはかかっていたし、今と比べて緊張度が低かったわけではなかろうけど、今の方が現場に負担がかかっているのは確かでは ?

となると、人も装備も消耗させないためにどうすればいいか、ということを真剣に考えていかないといけない。目下の状況からすれば、今のオプテンポが高さは、当面は続くと考えないといけない。

すると、装備体系も組織編成も教育訓練も、ゼロベースで見直す必要がないか、なんてことを考えてしまった。たとえば、方面別に担当の部隊を決めて張り付け配備するやり方だと、特定の方面だけオプテンポが上がったときに、そこにいる部隊が過重負担になる。それを避けるためにはどうすればいいの ? という類の話。

そもそも、消耗戦になればリソースが多い方が勝つのだから、同じやり方で真正面から張り合っても勝てない。となると、イスラエル軍が過去に消耗戦争の時期をどう切り抜けたか、なんてことを研究してみる必要がある… のかもしれない。

そして、これは以前に書いたこととダブるけれども、訓練と実戦のために使えるリソースを集中的にぶっ込まないと。いいかえれば、副次的な話、必ずしも必須ではない話、優先度を下げられる話は切り捨てるか後回しにする。

はっきりいってしまうけれども、歌舞伎ショーや広報イベントは止めるか減らすかしてもいい。自衛隊に対する国民からの信頼が根底から崩壊する場面があるとしたら、それは広報イベントを止めたときではなくて、国防という本来任務を果たせなかったときなのだから。

それと、予算を増やすのはいいけれども、それが新装備の調達でみんな消えてしまっては意味がない。まずは O&M の予算を増やすこと。手持ちの装備をフルに稼動させられる戦務支援の体制を作ること。

あと、書類仕事や管理業務の負担を減らす策を考えること。


実のところ、「スクランブルに上がる頻度が高くて飛行時間がどんどん増えるのであれば、いっそ古い Pre-MSIP 機を南西方面に回したら」という思いつきもある。ただし現実問題としては、そうもいかないのは分かっているけど (理由は省略)。

ただ、オペレーションのやり方にしろ何にしろ、「従来はこうだったから、今後も同じ」ではなくて、「今の状況に対応するために取り得る最善の手段は何か」ということを持続的に考え続けてもらいたい。

もちろん、その「最善の手段」はずっと同じではない。実のところ、こういう持続的な変革って、日本の組織がいちばん苦手としているところなんじゃないか、という危惧がある。

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