Opinion : 忘れられがちな O&M コスト (2017/12/25)
 

ここのところ突発的に、自分の職業領域で「お買い物」案件が持ち上がっている。「外相専用機としてガルフストリーム 6 を」とか「海自の DDH に F-35B の搭載を検討」とか。

この手の話が出ると、まず「調達費用」を持ち出して反対する声が出るのは様式美。そりゃまあ、調達費は確かにかかりますよ。でも、そうやって反対する人も、そしておそらくは賛成する人も、往々にして見過ごしているのが O&M (Operation and Maintence) にかかる費用。


といっても、飛行機や艦艇の O&M コストとなると巨額すぎてピンと来ない。そこで、もっと身近なもので、かつ O&M コストがいろいろ発生するものは… というと、「自家用車」がある。

パッと思いつくところで、取得後にかかる経費にはこんなものがある。

  • ガス代
  • 高速代
  • 強制保険、任意保険
  • 点検整備、小物の消耗品
  • 大物の消耗品 (タイヤなど)
  • 駐車場代

もちろん個人差はあるだろうけれど、うちのインプレッサの運用実績に基づいて数字を出してみたら、年間平均 70-80 万ぐらいのオーダーには達しているのではないか、という結論になった。

つまり、初回車検までの 3 年間にかかる費用は、諸費用を除く新車価格と同じぐらいになってしまう。もちろん、保険や点検整備を除くと個人差が激しい項目ばかりなので、人それぞれというところはあるだろうけれど。

要は、「O&M コストが意外とかかっているんだよ」というところを分かっていただければよい。

これが、会社が事業の用に供するヴィークルや機材であるとか、軍の装備品とかいう話になると、教育・訓練・人材確保にかかる費用も馬鹿にならない。特に艦艇や航空機は、基本給に加えて手当を上積みするから、人件費は押し上げられる。

潜水艦はさらに、通常以上に食費が上積みされる… と、その話は措いておくこととして。

ともあれ、こういう O&M コストの観点から装備調達についてあれこれいっている人、どれぐらいいるだろう。

鉄道事業者が車種統一を図ろうとすると「面白みがない」という人がいるけれども、車種統一だって O&M コスト低減の手段である。それは結果として、運賃値上げ抑制という形で利用者にも効いてくる。そういう観点から考えてみたって、バチは当たるまい。(LCC が 737 や A320 に機種統一するのも同じ)

会社で仕事に使う PC の機種やソフトウェアを統一するのだって同じ。統一すれば保守部品も運用のノウハウも整理統合できるし、ソフトウェアのアップデートもシンプルにできる。「手間」という見えないコストは忘れられやすい。


もちろん、O&M コストの多寡はモノによってだいぶ違う。家電製品なんかは多くの場合、ランニングコストとしての電気代と、ちょっとした消耗品ぐらいしか発生しない。もちろん、故障すれば修理代がかかるものの、今の家電製品はそうやたらに壊れない。

イニシャルコストと比べて O&M コストが高い一例というと、携帯電話かも知れない (だから「通話料で元をとる」発想が成立し得た)。もっとも最近のスマートフォンは、イニシャルコストも高そうだけど。

租税公課なんかも含めて、意外と O&M コストが発生するのが「家」だったりする。だから、購入時の費用とそれの支払のことだけ考えていると、後で泡を食うかも知れない。

つまり、個人レベルでも意外と「O&M コストを忘れてると痛い目に遭う」事例はあるし、それが企業や国家のレベルになればなおのこと。そこのところを忘れないでね。というところで、今年は今回でおしまい。

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