Opinion : いわゆる○○警察に関する徒然 (2018/1/18)
 

以前に「窮屈な撮り鉄業界」の話を書いた。要約すると、特定の様式に適っていない写真をみんな「駄目」と切り捨てる「撮り鉄警察」みたいな人がいるわけだ。やれ「串パンは駄目」「裏被りは駄目」etc, etc。

しかも、止せばいいのにあちこちに殴りかかりに行っているもんだから、窮屈で仕方ない。自分が自分の美意識に則った写真を目指すのは、個人の自由だから好きにすればいい (といっても、他人に迷惑をかけない範囲で、だけど)。

でも、己の美意識を振りかざして他人にまで殴りかかりに行くのは、単なる「はた迷惑な噛みつき亀」である。それで自己満足を得ているのだとすれば救いようがない。

と思ったら、「着物警察」なんて言葉もあるらしい。内容はいわずもがなだけれども、実のところ、こちらの方がうるさそう。モノがモノだけに、「日本の伝統文化を守るのは私たちだ」なんていう要らぬ気負いが強そうだから。


興味がないので調べたことがなく、よって知らなかったのだけど、和服業界の市場規模がえらくシュリンクしているらしい。そういうもんなのか。

全作品を読んで統計を取ってみたわけではないけれど、自分が読んだことがある立原正秋氏の作品だと大抵、主人公の女性は平素から和装で過ごしている。以前からしつこく書いている「日常利用が大事」の法則からすれば、平素から和装で過ごす人が増える方が、市場規模は拡大しそうではある。

ただ、日常的に利用するものはたいてい、かけられる費用や手間に限界があるから、なにがしかの簡略化 (または手抜き) が生じがち。そこで「着物警察」みたいな人が出てきてガミガミ噛みつくと、まことに窮屈なことになるであろうなあ… という想像はつく。

そういう事情があるせいで日常的に和装で過ごす人が減って、市場規模がシュリンクした… のかどうかは知らない。

ただ、日常的な利用を増進して市場を拡大する方向よりも、成人式を始めとする「晴れの場」にフォーカスしたことが、結果として首を絞めることになったのだとしても、驚きはない。それで「成人式をやってくれないと、うちの業界が困る」といいだすに至っては、なにをかいわんや。

そりゃもちろん、改まった場、しかるべき場だったら、守るべきルールや伝統はありますよ。それは大事にしないといけない。ただしその一方で、多少の手抜きや簡略化やアレンジが許される場面があってもいいんじゃないの ? ともいいたい。

アレンジといえば。たとえば列車の走り写真ひとつとっても、対象によって「見せ場」は違う。振子車ならストレートよりカーブの方が特徴が出る。「現美新幹線」はサイドビューに特徴があるのだから、サイドを大きく写す方が特徴が出る。

そういうことも考えて実行に移すのだって面白いわけで、そこで「公式通りの前後・縦横比率」にばかりこだわっていても面白みがない。車庫で中判カメラを持ち込んで三脚を立てて「お見合い写真」を撮るのとは違うんだから。

これもまた、「守るべき場面」と「多少のアレンジやフリーダムを許容してもいい (んじゃないの ? と思える) 場面」の使い分けの問題。本当に問うべきは、その使い分けができるかどうかじゃないんだろうか。

なんて書くと、「ほげほげ警察」な人は「普段から守るべき伝統をきちんと守っていないと、守らなければならない場面で対処できなくなる」と噛みついてくると思われる。ありがちである。

でもねえ。それならそれで、「いちいち噛みついて物事を窮屈にする方向に労力を使うか」vs「守るべき場面で守れるように、生産的な方向に労力を使うか」という選択があるんだと考えてみてはどうか。

ただまあ、写真の話についていえば、「そこに存在していたモノを消す」とか「そこに存在していなかったモノを足す」レベルの加工になると、もはや「やり過ぎ」だと思っている。これもまた、自分の「個人的美意識」というやつだけれど。

そこで噛みつくだけが正義だというのならば、それはもはや噛みつくこと自体が目的なんだといわれても仕方ない。その結果として、業界が窮屈になって人が離れてシュリンクしても自業自得でしょ。


実のところ、「正しさ」を理由に噛みつくのは、「噛みつくこと自体が目的」ということもあれば、それ以外の背景もある。ことに趣味が絡む世界でありがちなのは「自分が贔屓している○○に対する否定的な言動は許さない」が「真実を広める」に脳内変換される事例。

そういえば、趣味に限らず、仕事の世界でもあるなあ。たとえば、「ソフトウェアのソースコードがきれい/汚い」ってやつ。

開発者・個人の美意識に適わない「汚いソースコード」を全部書き直した結果として、ソースコードはきれいになったけれども、熟成やバグ出しも一から仕切り直しになってしまった。なんて話はありそう。

そこで「ソースコード警察」みたいな人がいて、他人が書いたコードにケチをつけて回る場面を想像すると身震いがする。

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