Opinion : 二つの空間での人気・評価のズレ (2018/2/5)
 

どこかのホテルで、「宣伝してやるからタダで泊めろ」と要求してきたユーチューバーがいたそうだ。そして断られた挙げ句に炎上騒ぎとなり、ホテル側から「知名度アップになったのだから宣伝料を」と逆請求されるという傑作なオチがついた由。

これは要するに、自分の「ネット上での影響力」が、どこでも通用する水戸黄門の印籠みたいなもんである、と勘違いした痛々しい事例である、と認識している。

そこでよくよく考えてみると、「サイバースペースでの影響力」と「ミート スペースでの影響力」が必ずしも一致していない事例は、いろいろありそう。


サイバースペースの向こう側には生身の人間がいるのだから、サイバー スペースとミート スペースは、完全にセパレートされた別個の存在というわけではない。両者が完全に別個の存在なら、「片方における影響力が、他方で通用しない場面」があっても不思議ではないのだけど。

両者は一応はリンクしているけれども、影響力という点で完全にはリンクしていない。そういう、少し不思議な関係にあるといえそう。では、なんでそんなことになるんだろうか。

実のところ、「受け手が喜びそうなことをこしらえて人気を得る」ところでは、商業出版物だろうが、ブロゴスフィアだろうが、ついったらんどだろうが、大した違いはない。主たる読者層が喜びそうなことを書いて人気を博している事例は、たくさんある。

身も蓋もないことを書くと、「正しいこと」かどうかは後回しにして「読み手が見たいと思っているもの」を見せるのは、手っ取り早く人気を博するための近道である。その人気が長期的に持続可能なものになるかどうかは知らんけど。

そこでひとつ考えた仮説は。場がなんであれ、その「人気を博する」と、「作り手として評価される」の間に、何かしらの断絶というか、乗り越えないといけないギャップがあるんじゃないかということ。

それは多分、ブツが文章だろうがスチール写真だろうがどうかだろうが関係なく、共通しているのではないかと。たとえば、「いいね」がいっぱい付く写真と、フォトグラファーとして評価される写真は、必ずしも一致しないんじゃないかと。

そして、そこのところを勘違いして「ネット上での人気 = 他者からおカネをいただくに足る人気」だと思うと、冒頭みたいなトンチンカンな騒ぎが起きるのではないかなあ… という仮説を立ててみた。(しつこいけれども、これは仮説である)


その「人気」という話で、別の仮説をもうひとつ。サイバースペースとミート スペースで、そもそも質的な違いがあるんじゃないかという話。どっちが優れているとか劣っているとかいうのではなくて、違うという話。

身も蓋もないことをいえば、前者の方が「瞬間芸」で、パッと咲いてパッと散る。嘘だと思ったら、数週間あるいは数ヶ月前にものすごい勢いでバズったネタって何があったっけ… と思い起こしてみて欲しい。サッと思い出せるもんだろうか。

実は、趣味誌や専門誌で書いていると、書き手が「これでもか、これでもか」という勢いでやるぐらいでないと読み手に納得していただけない。というか、そういう意識でやっている (つもり)。もちろん、媒体の種類・性質に応じた違いはあるにしても。

それって、どう見ても瞬間芸の世界ではない。瞬間芸で人気を博していても、「これでもか、これでもか」と粘り強く突き詰める役には立たないと思える。すると、瞬間芸で人気者になっても、その領域にとどまってしまう。

と、いくつか仮説を出してはみたけれど、真相はどの辺にあるんだろう。

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