Opinion : 国産戦闘機待望論に関して思ったこと (2018/3/5)
 

最初は別のネタで書こうと思っていたけれど、今朝になって「F-2 後継機の国内開発を断念する方向で調整に入った」とかいうニュースが降ってきたので、そちらについて書いてみようと思った。

少し見てみると、この件に関する反応は「現実的に見て仕方ないね」「その気になれば作れるのに、アメリカの圧力のせいだ」「国際共同開発なんて失敗するに決まってる」「朝日だから誤報なんじゃないの」といったあたりが多そう。


そういえば、F-35 について「多用途化して複数の軍種で共通化してもうまく行くはずがない」という叩きがあった。そういうときに引き合いに出されるのは F-111 に決まっているのだけど、同じ「複数軍種間での共通化」でも経緯がぜんぜん違うじゃないか、という話をだいぶ前に書いた。

実のところ、「国際共同開発なんて失敗するに決まってる」にも、似たところがある。「ゴタゴタした」「失敗した」という結論だけ拾ってきて、「どうしてゴタゴタしたのか」「どうして失敗したのか」は無視するところも、似ている。

国際共同開発がうまく行かなくなるのは、当初の要求仕様や運用コンセプトに関するすり合わせがうまく行かないとか、一部の参加国が政治的事情や財政的事情から撤退をいいだすようなケースが多い。

逆にいえば、そういう問題がなければ、開発に難航することがあっても、ちゃんと完成品は出てくる。うまく行かなかったケースを無視しろ、とはいわない。どうしてうまく行かなかったのか、反面教師としてみる必要はある。でも、それだけでは共同開発を拒絶する理由にはならない。

戦闘機の話ではないけれども、SM-3 ブロック IIA だって日米共同開発だ。あれについて「共同開発したらうまく行かない、日本で独自のものを作れ」って主張する声って、そんなに聞こえてこないのだけど ?

とどのつまり、「国際共同開発拒絶派」の人って、表向きは違う理屈を並べているけれど、内心では「世界に冠たるスゴイ国産品 (ただし華のある正面装備)」という夢を見ているだけなのと違うか、と思ってしまう。

実際、他国で何かやっているときにケチを付けていたものが、日本で同じようなものを作り始めた途端に何もいわなくなる、なんて事例もあるわけだし。


話は変わって。世間一般、RDT&E のうち「T&E」つまり試験・評価を軽く見ている人が多いんじゃないか、という印象がある。

何年か前に「i3 ファイター」と題した、なかなか景気のいい (?) 話が出てきた。そこで出てきた「クラウド シューティング」なんていうのは、試験・評価が大変そうな話の最たるもの。

基本的にはソフトウェアの動作の問題だから、ある程度まではコンピュータ シミュレーションで検証できると思われる。つまり、制御ロジックにさまざまなパターンのデータを食わせて、それに対するアウトプットや挙動を検証する。

しかし、それだけで「はい完成しました」では、(たぶん) 使う側が納得しない。できるだけ実運用環境に近い状況を再現して、実際に撃ってみないと最終完成品とはいえない。それをやるには、実運用環境を想定したテストケースをいろいろ設定して、実地に試す必要がある。

そして、喧伝している内容からすると、テストケースの構成に関わる可変要素がやたらと多い。第一、個々の可変要素について数値範囲をどれぐらいにすればいいか、を決めるところからして紛糾しそう。

そこで「予算がない」とかなんとかいって空域を狭めたり、機数を減らしたり、脅威再現をへつったりすると、最終的に迷惑するのは第一線のパイロットですぞ ?

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