Opinion : ハメるための閾値 (2018/3/12)
 

初っぱなからお断りしておくけれども、エロビデオの話ではない。

エアラインにマイレージ サービスというのがある。以前はまるで興味がなくて、UAL のマイレージ プラスはカードを作ってみたものの放置プレイ状態。JMB のカードを作った後も、国内線でチマチマ貯まる程度ではたかが知れているので、それほど熱心にはなっていなかった。

風向きが変わったのは、一年半前に F-35A のロールアウト式典取材のために渡米したとき。フォートワースまで往復すると、さすがに正規割引料金でも 6,000 マイルぐらいは発生する。

いったん、そうやってドカッと数字が増えると「そんなら、もっと増やしてやろうか」という気になってくる。ネリス AFB に行けば、これも 6,000 マイル近くにはなるし、さらにレンタカーだの提携ホテル予約だので、チマチマ稼ぐ場面も増えた。

といっても、年間に何十回も乗っているわけではないから、ステータスは上がらない。それでもこんな調子だから、いったんステータスがつくと、また乗ってしまうんだろうなあと思った。

要するに、マイレージ サービスを展開する側の思惑に、まんまとハメられているわけである。


たまたま我が身の話だからマイレージ サービスの話をつかみの話題に持ってきたけれど、他の分野でも同じかも知れない。

つまり、最初はそれほど深い関心がなかったり、熱心でなかったりしても、何かのきっかけで「閾値を超える」と、いきなり状況が変わってしまうという話。家電量販店なんかのポイント サービスも同じで、何か大きな買物をしたときにドカッとポイントが貯まり、それを使って「もらってくる」場面があると、癖になるんじゃないだろうか。

もちろん、「もらってくる」というのは見かけ上の話で、見えない形でコストを負担しているのは間違いないのだけれど。そうでないとお店が潰れてしまう。

となると、おカネを払って何かを買ったり利用したりする場面だけでなく、趣味の分野でも同じなのかも知れない。最初は大して興味がなくても、何かのきっかけで「閾値を超える」と大はまりするとかなんとか。

となると、横合いから「面白いよー、こっちの水は甘いよー」とやるだけでは効果は薄くて、何か仕掛けを作って「閾値を超える」体験をさせる方が効果的、なのかも。

自分の仕事領域のひとつだから、鉄道趣味がらみの話をすると。国鉄型ばかり追いかけている人に「いやいや、違う楽しみもあるんだよ」と気付いてもらおうとしたら、やはり同じデンで「閾値を超えてもらう」必要があるのかなと。

携帯分類なんていうのは、案外とそういう部分があるように思われる。「みんな同じじゃないか」と思っていた同系列の車両の中で、製造所や製造年次や改造の有無によって、細かな形態の差異が発生しているのに気付いたとき。

たまたま自分は、そういう差異を見つけると「ニヤッ」として、さらにハマる傾向がある。そして、鉄道相手に鍛えた (?) 形態分類眼を、軍艦相手に発動してみたこともある。これが普遍的に通用する話なのかどうかわかんないけど。

あと、一度決まると癖になって何度も再チャレンジしてしまうものの極めつけが「流し撮り」。それで、昨年のネリスみたいに「どこまでシャッター速度を落とせるか競争」なんてのを始める仕儀となる (苦笑)


なんてことを書き連ねていたら、「閾値を超える経験をするとはまる」の最たるものは、プログラミングかも知れない、と思った。

。初めて何かのプログラムを書いたときには、往々にしてエラーが続発して動いてくれなくて、クサる。でも、書いたコードが意図した通りに動いてくれると、「やったあ」となる。

それがきっかけでプログラミングが好きになった人、結構いるんじゃないだろうか。

裏を返せば、いくらやってもエラーが出てばかりだと、それがきっかけでプログラミング嫌いになってしまうかも知れない。実のところ、学校でプログラミングを教えると聞いて、真っ先に心配になったのが、このこと。

だから、プログラミングを教えるときには、最初は簡単なコードでいいから、とにかく「自分が書いたコードがちゃんと走る」という経験をさせてもらいたい。初っぱなから、コードを走らせるのが苦行になってしまうと、プログラミング嫌いを養成するだけになってしまう。

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