Opinion : 力業より仕掛けを作る (2018/3/26)
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年金機構が豊島区の「SAY 企画」という会社にデータ入力を外注したら、契約で禁止されている外部委託をやっていた、というので騒ぎになった。
後で出てきた「SAY 企画」の社長に対する取材で「違反と認識していなかった」との話が出てきたけれども、どこまで本当なのかは知らない。子会社だから「外部」委託ではなかったという屁理屈だろうか。
どうも不信感を抱いてしまうのは、その後に「手入力しなければならないのに、OCR に頼って、しかも結果の確認がちゃんとできていなかった」との話が出てきたせい。
請けたはいいけどリソースが足りないと判明したのか、最初からリソース不足を承知の上で請けたのか。さあどっちだ。
ただ、発注した側の年金機構が、請ける側の体制・能力をきちんと判断していたんだろうか、という疑いもついて回る。もっと忌々しいのは、問題が発覚した後も契約を切らなかったこと。
なんだけれども、もうちょっと根本的なところで、重大な問題があるように思える。つまり、「人手を使って大量のデータを手入力しなければならないような仕組みって、どうなのよ ?」という話。
年金が関わる話なら国民の大多数が対象になるのは分かりきっているのだから、大量のデータをいかにして効率良く捌くか、その際に間違いを出さないようにするにはどうするか、ということを考えないといけない。
現に、確定申告の用紙や、それとワンセットになる決算書の用紙は、明らかに OCR 対応の仕様になっている。定型フォーマットで、皆が同じような項目に同じようなデータを入力する場面であれば、こういう手が使える。
収支内訳書は人によって違いがあり過ぎるから、定型化は難しい。うちみたいに収入が発生する相手先がやたらに多いと、それを全部手書きで正確に (しかも提出用と控えの 2 枚) 書くのは骨が折れる。
仕方ないから、「別紙参照」として Excel から印刷した生データをつけている。これでも先方が求める情報はちゃんと出しているし、それで文句を言われたこともない。
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「OCR で処理したら読み取りエラーが多発して、しかもそれを検証していなかった」というのは、「検証しなかった」側にも「OCR でうまく読めないフォーマットをこしらえた」側にも、それぞれ責任があるように思うのだけど。
大量のデータを扱ったり入力したりする場面では、「頭数を使って力業で解決しろ」ではなく「いかにして効率的に、かつ間違いなく片付けるか」を考えなければならないし、そのために費用をかけても十分な便益はあるはず。
米軍が補給物資にみんな RFID をつけているのも、JR 西日本の Ris-e で対象機器にみんなバーコードをつけているのも、そういうことでしょ。実際、Ris-e についていえば、検修現場ではリーダーでピッとバーコードを読み取るだけで対象機器の指定ができるから、その点での仕事は早いし、間違いも起こらない。
前に「働き方改革」について書いたときの繰り返しになるけれど、「人手や時間を使って力業で解決しろ」ではなくて「効率や正確さを高める仕掛けを作ることで解決しろ」というアプローチが足りないように思える場面が多いんじゃないかと。
日本にホワイトカラーの生産性が低い、といわれることが間々あるけれども、その根本的な原因は、そういう辺りにあるのではないか ?
個人営業だと使えるリソースには限りがあるから、必然的に効率改善のためのドライブ」がかかるのだけど、組織、それも大きな組織になるほど、そういうドライブがかかりにくくなるのかなぁ ?
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