Opinion : 継続は力なり (2018/6/18)
 

ベタなタイトルだけど、まさにその通りだと思った。

トヨタがついにル・マン 24 時間レースで初優勝した。しかも 1-2 フィニッシュだという。昨日、福井から帰ってくるのに小松空港から飛行機に乗って、その機上でヤキモキしていたのだけど、本当に良かった。

過去の歴史をひもといてみると、トヨタと耐久レースの関わりは結構長い。学生の頃、確か 1986 年あたりだったと思うけれど、富士スピードウェイに WEC の公開練習か何かを観に行ったことがあり、その頃からトヨタはレースに出ていた。

といっても、その頃はまだ市販車のエンジンをベースにした (少なくとも型番の上ではそう) エンジンを童夢のシャシーに乗せて走っている状況で、ポルシェ 956 やポルシェ 962 の壁は厚かった。

その後、専用のエンジンやシャシーを用意して参戦するようになり、「おお、いけるかな ?」と期待するようになって… でも、日本勢のル・マン優勝はマツダが先行した。それはそれでめでたいニュースだし、マツダだってル・マンとの関わりは長かったわけだけれど。


小説や映画だと、初参戦でいきなり優勝、というストーリーはありがち。でも、それはそうでないとエンターテインメントとして成り立ちがたいからで、実際にはなかなか難しい。

速いマシンを作るだけでなく、信頼性の確保、トラブル発生時の対処、チーム体制作り、レース運びのマネージメントなど、勝つために関わってくるファクターは多いから、必然的にそうなる。

実際に参戦してみて、経験値を積み重ねて、それで初めて分かることは必ずある。それを積み重ねることが結果として、勝利につながる土台になる。なにも自動車レースに限ったことじゃない。

物書き業だって同じで、いきなり大当たりしてベストセラーを出すことがあったとしても、それを継続するのは並大抵のことじゃない。「最初に大当たりしたけれども、後で失速」という事例はあるだろうし、世間ではそれを普通、「一発屋」という。

自分の場合には「いきなり大当たり」はなくて、それこそコツコツと成功や失敗を積み重ねてきたと思っている。いきなり大当たりして慢心するよりは、これで良かったと思う。

それで何をいいたいかといえば。

たとえば、ローカルな舞台で活躍したからといって、それでいきなり「自分は大リーグでもプレーして勝てる」と思ってしまうのは危険。すぐに結果が出なくても、コツコツと参戦して経験やデータを蓄積するのが、結局は確実なルートだし、長続きする。

トヨタのル・マン挑戦だって、「おお、ついに初優勝か !?」と期待していたらゴール直前でまさかの… ということがあった、いち見物人としても、あれは相当に凹まされたけれど、そういう経験も含めて、今回の初優勝につながっているのだろうし、初優勝の重みを増すことになっている。

第一、成功しか知らない人や組織は、なにか危機に直面したときに危なっかしい。さまざまな経験を積み重ねて、その過程で成功も失敗も挫折も経験している人や組織の方が、危機に直面したときに (特にメンタル的な意味で) 強靱になる。


裏を返せば、初挑戦でいきなり結果を出すことを期待したり、初挑戦で結果が出ないときに「ダメじゃないか」といって叩いたりするのも軽率だということ。スポーツでもビジネスでも、そういう報道姿勢が現れる場面は、いろいろ見受けられそう。

無論、当事者にとってもそれは同じ。良い結果が出るに越したことはないけれども、良い結果が出たときに舞い上がってしまったり、安住したり、慢心したりすると、後で足下をすくわれる。

「たとえ、今は結果が出なくても、コミットメントを続けて、小さいところから経験や結果を蓄積する」って大事なこと。継続は力なりって、そういう意味もあるんじゃなかろうか。あちこちで書いている武器輸出の話だって同じである。

そういえば。三菱 MRJ が初飛行したときに、「飛んだ飛んだ」と浮かれた (?) 報道が多かった中で、自分は「これから越えなければならないハードルは、いろいろあるで」という記事を書いた。

逆に、今こそ踏ん張りどころ。だから、ここで「ダメじゃないか」とか「もう止めろ」とかいう記事は書きたくないし、書くべきでもないと思っている。ここで止めたら、経験や知見の蓄積がパーになってしまう。継続は力なのである。

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