Opinion : カネを出すなら、将来の基盤になるようなところに (2018/8/6)
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HMS Albion の入港や一般公開を見に行くために、2 日続けて晴海に行った。以前に来たときとは道のレイアウトが違っていて、自分のクルマでカーナビ任せにしたら、入ってはいけない場所に突入しそうだった。
1 日目は豊洲からタクシーで乗り付けたのだけど、そのタクシーの運転手さんも「道がしょっちゅう変わっててね〜」という。なんでそんなことになるかといえば、2020 年の五輪に備えて選手村か何かを建設する工事をやっているせい。
だから、対岸の豊洲側から HMS Albion の写真を撮ったら、背景はクレーンだらけになった。
これに限らず、五輪開催を名目にして行われている土木工事の類は、他にもあるはず。というか、そういう名目でおカネをドンと使って、ついでに将来に備えたインフラの整備や再構築をやるのが、筋の通る行き方だと思っている。
そういう意味では、日本橋の首都高速を地下に入れるなんていうのは、巨費を要する割には将来につながらない投資ではないか、というのが個人的な見解。無論、付け替えの対象になる区間については施設の更新になるけれども、その範囲は極めて限定的。
第一、日本橋以外にも、頭上に高速道路や高架鉄道がデンと陣取っている場所はたくさんある。なんだって日本橋だけ特別扱いするのさ、という感情を抱く人が、案外と多くいても驚きはしない。
比較的受け入れられやすい名目 (あくまで比較、相対的な意味でだけど) を掲げることでおカネを出しやすくして、それを活用して将来に向けた基盤整備をやるのは、そう悪い話じゃない。
「コンクリートから人へ」なんていうスットコな言説がまかり通るからこそ、そういうアプローチも必要になる。それをいっていた某党の党本部の建物は、いったい何でできていましたっけね ? (←
イージス アショアについても、そんな考えがある。「比較的受け入れられやすいと思われる北朝鮮の一件を名目にして BMD 資産を整備しておけば、その他の国の弾道ミサイルに対する備えにもなる」というのが個人的見解。そのことは、以前に「世界の艦船」誌で書いた記事の行間を読むと分かる。
どうも、バブル崩壊からこちら、姿勢が縮こまって、せこくなって、「とにかくカネを使わないのが正義」という考え方がまかり通っているように思える。その延長線上に、何でもかんでもボランティアで済ませようとしている「せこい五輪運営」があるのかも ? と思ってしまった。
ことに、ドーピング検査なんていう重要かつ専門性を要する仕事であれば、仕事の内容や重みに見合った報酬を出さないでどうするよ、と。
こうなると、まるで「節電のために電気を消していたら視力が落ちました」みたいな話になりそうである。
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それだから「せこい五輪運営」と書くのである。しかもそれだけで終わらず、打ち水で涼めとか、通販を遠慮しろとか、出る話、出る話、せこさがてんこ盛り。
プライオリティを考えないで、総花式に不十分な資金投下を展開するよりも、重要なところとそうでないところを峻別して、「必要なところにはドンと出す」という姿勢が必要だろうに。とは、以前から何回も書いていること。
そして、その「必要なところ」とは、一過性のものではなく、将来につながるようなもの、この先何十年かの日本を支えるものである方が望ましい。
ちょうど、これを書いていたら「五輪開催時の酷暑対策として、サマータイム導入か」なんてニュースが流れてきて唖然としている。そんなことになれば、世の中のさまざまなシステムを改修するためにべらぼうな費用がかかる。
問題は、その費用が一過性のものなのか、将来につながる土台作りの投資なのかということ。これが交通インフラの増強や防災のためのインフラ構築だったら将来につながるけれど、サマータイムの導入が将来につながる投資なのかといわれると、ちょっとねえ。
まさか、サーカスの「Mr. サマータイム」を、もう一度ヒットさせようという企みがあるわけでもあるまいに。
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